大質量星が突如消滅!2009年に起きた大事件の謎が解明されそう
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「突如消滅した大質量星に関する新事実」というテーマで動画をお送りしていきます。
地球から2000万光年彼方にある銀河で発見された、太陽の25倍の質量を持つ赤色超巨星「N6946-BH1」は、2009年には元の光度の10倍、太陽の100万倍以上にまで明るくなりました。
しかしその後数年かけて暗くなり、2015年時点ではなんと姿が見えなくなってしまっています。
これは一般的な大質量星の最期にあたる超新星爆発では説明できない奇妙な現象です。
そんな謎が、ジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)がもたらした新発見によって解明されるかもしれません。
●一般的な大質量星の最期
自らの内部で起こる核融合反応でエネルギーを生み出し、輝き続ける「恒星」という天体は、その質量でどのような最期を迎えるのかが決まります。
太陽の8倍未満の質量しかない中低質量の恒星は、核融合反応が途中で進まなくなり、最終的に核融合を起こせない高密度の物質の塊が残ります。
これが燃えカス天体「白色矮星」です。
太陽の8倍以上の大質量な恒星の場合、核融合が途中で止まることなく進み、最終的に鉄が生成されます。
鉄は最も安定な元素であり、それ以上核融合が進むことはありません。
恒星は核融合で膨張しようとする力と、重力とが釣り合うことでその形を維持しています。
しかし鉄が形成されると核融合が起こらなくなり、重力に対抗する力が失われ、星の核が自身の重力で急激に圧縮されます。
すると中性子星という超高密度天体が形成され、超新星爆発が発生して星の外層が吹き飛びます。
特に太陽質量の20~30倍を超えるような超大質量星だと、中性子星すら自身の重力に耐え切れず、ブラックホールが残ると考えられています。
●突如消滅した「N6946-BH1」
「N6946-BH1」は、地球から2000万光年彼方にある銀河で発見された、太陽の25倍の質量を持つ赤色超巨星です。
2009年には元の光度の10倍、太陽の100万倍以上にまで明るくなりましたが、その後数年かけて暗くなり、2015年時点では姿が見えなくなってしまいました。
増光前の2007年時点と比べても5分の1の明るさにまで減光しています。
一般的な超新星爆発のように初期段階で突然明るくなるものの、その後超新星のようにとてつもない輝きを放つことなく星が消滅する現象は「失敗した超新星(failed supernova)」と呼ばれます。
N6946-BH1は、理論的に予測されている「失敗した超新星」が発生した有力天体です。
失敗した超新星が起こると、星はブラックホールへと崩壊すると予想されます。
N6946-BH1はそんな予想の元、「BH1」という部分が名前に含まれています。
●N6946-BH1をJWSTが観測した結果…
最新最強の「ジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)」がN6946-BH1を赤外線で観測した結果、新たな事実が判明しました。
まず恒星がいた場所全体を取り囲むように広範囲にわたる赤外線の輝きです。
これは2009年に恒星が輝いた瞬間に放たれたガスや塵が拡散したものであると考えられています。
もしくはブラックホールに流れ込んだ物質が赤外線で光っているかもしれませんが、その可能性は低いとのことです。
また、N6946-BH1があった周辺には、3つもの残留物が新たに発見されています。
さらにスペクトル分析の結果、中間赤外線波長が予想より明るいことも判明しました。
これらの新事実は、2009年にN6946-BH1が増光した原因は実は失敗した超新星ではなく、恒星同士の合体現象である可能性を高めています。
ただし失敗した超新星である可能性を完全に否定するものではありません。
非常に重い恒星はブラックホールを形成しますが、星の死の直前に何が起こるのかについては謎も多いです。
今後似たような天体を多く観測していくことで、その辺りの謎が解明されることが期待されています。