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【熊本地震】外国人観光客で賑わう熊本城で見た「復興ツーリズム」の可能性

田中森士ライター・元新聞記者
復旧作業が進む熊本城天守閣

 先日、およそ1年ぶりに熊本城(熊本市)に足を運んだ。全国ニュースでは報道されることが少なくなった熊本城。現在どうなっているのか気になっていたところ、東京から遊びに来た知人が「城を見たい」と口にしたため、一緒に見に行くことにしたのだ。

(関連記事)【熊本地震】地震から10カ月の熊本城 観光は今どうなっているのか

 城の観光に最も便利な、二の丸駐車場に駐車。城に向かって歩く。平日、しかも城は復旧作業中だというのに、多くの観光客とすれ違った。日本人だけでなく、中国人、韓国人観光客の姿も目立つ。

カメラを手にする外国人観光客の姿も目立つ
カメラを手にする外国人観光客の姿も目立つ

 西大手門に到着。見学用の柵の位置が、以前より数十メートルほど奥へと移動しており、崩れた石垣を間近に見ることができた。大きな石が転がっている様子は、発災当時のことが思い起こされ、胸がきゅっと締め付けられるような感覚に陥る。初めて訪れた隣の知人は「うわあ……、こんなに被害がひどかったのか」と絶句していた。

崩れた石垣や塀が痛々しい
崩れた石垣や塀が痛々しい
通し番号がふられた石垣の石。崩れる前と同じ位置に戻す必要がある
通し番号がふられた石垣の石。崩れる前と同じ位置に戻す必要がある

 城の周囲には、見学用の歩道が整備されていた。歩いていくと、歴史的建造物の数々が目に飛び込んでくる。前回訪れた時は、大天守の傷つきながらも美しいその形状を確認することができた。しかし、現在は足場が組まれており、その姿をはっきりと拝むことはできない。ただ、大天守全体を覆うメッシュシートは、透過性の高いものが採用されており、復旧過程を目にすることは可能だ。

(参考)熊本城公式サイト「天守閣の足場と復旧工事について」

周囲には歩道が整備されており、観光の利便性が向上していた
周囲には歩道が整備されており、観光の利便性が向上していた
復旧作業が進む大天守。市は2019年までの復旧を目指す
復旧作業が進む大天守。市は2019年までの復旧を目指す

 市が「復興のシンボル」と位置づける天守復旧は、最優先で進められており、大天守は2019年、小天守は21年中の完成を目指すという。現在は大天守の最上階部分の再建中だ。しかし、城全体の復旧は20年計画。途方もない年数に、気分が少々暗くなる。

解説用のパネルが至る場所に設置されているほか、観光ガイドも申し込むことができる
解説用のパネルが至る場所に設置されているほか、観光ガイドも申し込むことができる

 休憩がてら、スマートフォンで検索すると、市観光ガイドのウェブサイトに「熊本城復元見学コース」の記載を見つけた。「今しか見られない熊本城の姿を!」のキャッチコピーとともに、見学ルートが分かりやすく紹介してある。確かに、復旧の過程は今しか見られない。加えて、過去と現在の技術を同時に知ることができる意味では、大変貴重なものだ。

(参考)熊本市観光ガイド「熊本城復元見学コース」

 サイトをじっくり読み込んでいると、意識の外から歓声が聞こえてきた。顔を上げると、外国人観光客らが大天守をバックに、「自撮り棒」を使って笑顔で記念撮影している。観光名所として、しっかり機能していることに、安堵(あんど)した。

 熊本の象徴でもある熊本城。復旧の過程を見る、いわゆる「復興ツーリズム」を、個人的にも応援していきたい。

大天守を臨む場所には、熊本弁で「がんばれ」を意味する「がまだせ」と書かれた「だるま」が置かれていた
大天守を臨む場所には、熊本弁で「がんばれ」を意味する「がまだせ」と書かれた「だるま」が置かれていた

※毎日新聞の連載「モリシの熊本通信」(2018年1月27日付)に一部加筆修正した。写真はいずれも2月に筆者撮影。

ライター・元新聞記者

株式会社クマベイス代表取締役CEO/ライター。熊本市出身、熊本市在住。熊本県立水俣高校で常勤講師として勤務した後、産経新聞社に入社。神戸総局、松山支局、大阪本社社会部を経て退職し、コンテンツマーケティングの会社「クマベイス」を創業した。熊本地震発生後は、執筆やイベント出演などを通し、被災地の課題を県内外に発信する。本業のマーケティング分野でもForbes JAPAN Web版、日経クロストレンドで執筆するなど積極的に情報発信しており、単著に『カルトブランディング 顧客を熱狂させる技法』(祥伝社新書)、共著に『マーケティングZEN』(日本経済新聞出版)がある。

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