成人誌の販売には見切りをつけるコンビニが弁当は見切り販売しない理由
オリンピックなど、国際的なイベントを控え、大手コンビニエンスストア3社は、成人向け雑誌の販売を原則中止すると発表した。成人誌の販売に見切りをつけるコンビニが、なぜ、弁当は見切り販売しないのだろう。
弁当は見切りしないで捨てた方が本部が儲かるから
成人誌販売をやめる表向きの理由として、女性や子どもが安心して買い物できるように、オリンピック・パラリンピックで訪日外国人が増えること、などが挙げられている。だが2019年1月23日付の朝日新聞記事『成人向け雑誌は「面倒な商品」コンビニが見切る理由』では、成人誌の販売をやめた理由として、元大手コンビニ社員だった方が「(成人誌は)売れないのが最大の理由」と答えている。
それに対し、コンビニで売られている弁当やおにぎり、サンドウィッチ、フライ物などのファストフードは、毎日の売り上げを作る屋台骨だろう。ローソンのアニュアルレポート(2018年)によれば、ファストフード(24.5%)と日配品(日持ちしづらい食品:13.5%)の2つで4割近くを占めている。これらは、販売期限が切れ、消費期限が近づいたからと言って、スーパーのように見切り(値引き)販売をしない。商品棚から撤去され、一部はリサイクルされるものの、多くは廃棄される。そもそも「コンビニでは見切り販売が禁じられているから」と思っている人も多い。
2019年1月19日、久米宏さんの「久米宏ラジオなんですけど」に2度目の生出演をした。コンビニの話題になり、筆者が「コンビニで(シールを)貼って(値引き販売して)OKなんですよ」という話になったとき、久米宏さんは、「あ?そうなの??」と、意外そうな表情をなさった。
久米さんの反応が、日本のほとんどの人の反応だろう。スーパーでは当たり前のように値引きがされるのに、なぜかコンビニでは値引きがされていない。映画『コンビニの秘密』では、全国55,000店舗以上ある中の、わずか1%程度しか、見切り販売をしていないという。
記事『「見切り販売はしたほうが儲かる」 コンビニ11店の損益計算書を分析』で調査した通り、見切りする前と見切りした後とでは、1店舗当たり、年間400万円以上の差がある。では、なぜコンビニは見切り販売をしないのだろう。
本部の取り分は見切りするより廃棄した方が大きいから
『「こんなに捨てています・・」コンビニオーナーたちの苦悩』に書いた通り、捨てた方が、見切りするより、コンビニ本部の取り分が大きいからだ。参議院議員のたつみコータロー議員の公式サイトにも、コンビニ会計の仕組みが解説されている。
本部に取材してみると、「別に禁止していない」と回答するものの、「むやみな値下げをされると困る」とも言う。
コンビニで売れ残った、日持ちしない食べ物のコストは、8割以上、コンビニオーナーが持っている。2009年6月に公正取引委員会の排除命令が出て以降は、コンビニ本部も15〜20%程度を持つようになったようだ。見切り販売も、本部がおもてだって禁止することはできなくなった。
だが、オーナー側に取材すると、契約解除を恐れてシールを貼らない(見切り販売をしない)店が多い。本部から、「禁止」とは違う言い回しで「シールは貼らないで」と言われたというオーナーもいた。
農林水産省は2019年3月31日目標の食品廃棄発生抑制値を掲げている
農林水産省は、平成26年(2014年)、食品業界に対し、食品廃棄の発生抑制の数値目標を掲げている。コンビニエンスストアの場合、44.1kg/百万円 という目標値になっている。
企業の経営陣の方に聞くと、驚くほど、この目標値をご存知でないことが多い。5年間の設定期間は2019年3月31日で終了する。
食品企業の社会的責任の一つに廃棄物の発生抑制がある。その責任を果たすためにも、自社の店舗で働く人の心身の健康と幸せのためにも、大手コンビニ各社は、食べ物を捨てない努力をして欲しい。売れない成人誌の販売を見切りするなら、弁当やおにぎり、サンドウィッチなど、日持ちしない食品こそ見切り(値引き)して欲しい。そうすることで、せっかく作った食べ物のロスは少なくなる。全国のコンビニ加盟店のオーナーの収入も増えることが、11店舗の損益計算書の分析から推察される。
消費者である我々も、自分たちが日頃の買い物で捨てるコストを払わされていることを認識した上で、購買行動に臨みたい。
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