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シリア北西部のイドリブ県内を移動中のトルコ軍装甲車2輌がシリア軍の砲撃を受ける

青山弘之東京外国語大学 教授
Zaiton Newspaper、2020年9月18日

シリア北西部のイドリブ県では、反体制系サイトのEldorarなどによると、9月18日、反体制派が支配するいわゆる「解放区」内を移動中のトルコ軍装甲車2輌がシリア軍の砲撃を受けた。

トルコ軍が砲撃を受けたのは、シリアのアル=カーイダとして知られるシャーム解放機構とトルコの庇護を受ける国民解放戦線(国民軍、Turkish-backed Free Syrian Army、TFSA)を主体とする「決戦」作戦司令室が活動を続けるザーウィヤ山地方のマアズラーフ町に近い街道で、カフルバッティーフ村に駐留するシリア軍部隊が迫撃砲で走行中の装甲車を狙った。

装甲車は炎上したが、トルコ軍側に死傷者はなく、被害も限定的だった。シリア軍は、トルコ軍に対する被害を抑えるため、比較的破壊力が低い82ミリ迫撃砲を使用したと見られる。

英国を拠点とする反体制系NGOのシリア人権監視団によると、シリア軍はまた、ザーウィヤ山地方のファッティーラ村、カンスフラ村、バイルーン村、フライフィル村、スフーフン村、バイニーン村を砲撃、ファッティーラ村で住民4人が負傷した。

トルコは、2017年5月のアスタナ4会議の合意に従って、シリアのアル=カーイダとして知られるシャーム解放機構が主導する反体制派支配下の「解放区」内に72カ所の監視所や拠点を設置し、停戦監視の名目のもと、反体制派の「盾」となって、これを支援している。

なお、9月15日と16日、トルコの首都アンカラで、ロシア・トルコ両軍の高級レベル会合が開かれ、イドリブ県情勢やリビア情勢への対応が協議された。

RIAノーヴォスチ通信などによると、ロシアはこの会合で、イドリブ県内のトルコ軍の拠点の削減を提案したが、トルコはこれを拒否、代わりに兵力削減と重火器撤去を決定した。

(「シリア・アラブの春顛末記:最新シリア情勢」をもとに作成)

東京外国語大学 教授

1968年東京生まれ。東京外国語大学教授。東京外国語大学卒。一橋大学大学院にて博士号取得。シリアの友ネットワーク@Japan(シリとも、旧サダーカ・イニシアチブ https://sites.google.com/view/sadaqainitiative70)代表。シリアのダマスカス・フランス・アラブ研究所共同研究員、JETROアジア経済研究所研究員を経て現職。専門は現代東アラブ地域の政治、思想、歴史。著書に『混迷するシリア』、『シリア情勢』、『膠着するシリア』、『ロシアとシリア』など。ウェブサイト「シリア・アラブの春顛末記」(http://syriaarabspring.info/)を運営。

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