電通のビジネスモデルに限界か? 驚くべき長時間労働で強制捜査!
11月7日(月)、労働法違反容疑で広告大手の電通に強制捜査が入りました。いわゆる「ガサ入れ」。現場でコンサルティングする身としては、驚くべき展開です。
「不適切会計処理問題」の東芝や、「燃費データ不正問題」の三菱自動車であれば、腕組みして捜査の行方を静観したい気持ちになります。なぜなら多くの企業関係者が「信頼していたのに裏切られた」「日本を代表する企業なのに何をやってるんだ!」と他人事のような感情に浸ることができるからです。ある意味、安心してニュースの行方を眺められます。
ところが、この電通の長時間労働問題は多くの企業が他人事ではないはず。過重労働や過労自殺といった問題は行き過ぎているとはいえ、多くの企業は、「これが現代ニッポンの世相だ」「今の日本社会からの強烈なメッセージ。無視できない」と思えたはずでしょう。
「粉飾決算」や「偽装データ」の問題を抱えていたら、
「うちも粉飾決算やってますけど、なかなかやめられませんねえ」
「データを改ざんすることなんて、しょっちゅうです。担当者には言ってるんですけどね。ほどほどにしろとは」
……などと、呑気に言えません。
しかし「長時間労働」であれば、
「うちも夜10時までは当たり前。深夜残業なんて普通ですよ。なかなかやめられませんねえ」
「休日出勤なんて、しょっちゅうです。担当者には言ってるんですけどね。ほどほどにしろとは」
……と、呑気に言ってる人、部署は膨大にあります。
それどころか「昔は長時間労働なんて普通だった」「早く帰宅すればいいってもんじゃないですしね」
などと、長時間労働を肯定的に見る人も大勢います。しかし、この電通の立件によって、「働き方改革」に消極的な企業は今後、強烈なダメだしをされることでしょう。特に若い人からは相手にされなくなる。電通や博報堂といった超人気企業でさえ、優秀な人財は敬遠するに違いない。もう「広告代理店=長時間労働」というレッテルが張られてしまったからです。
ブランディングの専門家集団のブランドが失墜したのですから、どうしようもありません。
そもそもテレビ、ラジオ、新聞、雑誌……といったマス広告は、もう限界にきています。
企業がテレビにCMを出し、10万人に視聴してもらったとしても、この10万人のうち、どれだけの人がその商材を認知し、興味を持ち、購入のためにアクションするのでしょうか。雑誌や新聞に広告を載せ、千人、1万人と閲覧してもらっても、どれぐらいのリターンを広告主は得られるのか。
収益率を考えた場合、マスコミュニケーションにおける宣伝広告費は極めて効率の悪い投資です。これまでは、企業人たちの「自己満足」「自己顕示欲」を満たすためにやられていた感がありますが、ドライに投資対効果を考えた場合、マスコミュニケーションよりもパーソナルコミュニケーションのほうがターゲットに対するアプローチ到達率が高くなり、きわめて効率が高いのです。
フェイスブックをはじめとしたSNS広告は、そういう意味で効率性が高い。テクノロジーの進化とともに、ワントゥワンマーケティングの時代が到来し、企業の自己満足のためにテレビCMや新聞広告を出す時代は、去りつつあるのです。電通の鉄板ビジネスモデルが瓦解しはじめ、このような事件となって表に出てきたのではないかと見ています。