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全天で2番目に明るい恒星「南極老人星」カノープスを見つけよう!

縣秀彦自然科学研究機構 国立天文台 准教授
クレジット:国立天文台天文情報センター

今年は北日本を中心に雪も多く、春が待ち遠しい今日この頃です。暦の上では2月4日(水)に立春を迎えたとはいえ、まだまだ寒い日が続いています。

この時期、晴れると空気が澄んでいますので、夜空はとてもきれいです。特に今年は、夕方の西の空には金星がみずがめ座でマイナス4等(一等星の100倍の明るさ!)で輝き、振り返ると東の空からはかに座にマイナス3等で木星が昇ってきます。

地上から眺める夜空で月を除いて、つまり点像の星として見える天体は、明るい順に1位=金星、2位=木星と大接近した時の火星(マイナス3等前後)、4位=冬の夜空でマイナス1.5等に輝くおおいぬ座のシリウス(8.6光年)、5位=マイナス0.7等のりゅうこつ座のカノープスという順番です。

(水星は-1等弱、土星は0等、恒星だと0等以上にケンタウルス座アルファ星、うしかい座のアークツゥルス、こと座のベガの順・・・ 以上、上位10位まで)

今晩、火星は見られませんが、そのほかの明るさベスト5のうち4つまで、この冬の夜空に集中しています。ぜひ、それぞれの星からの光をご自身の目でお楽しみください。しかし、この中で難敵は、南極老人星・カノープスです。

全天一明るい恒星シリウスは、「冬の大三角」をオリオン座のベテルギウス(赤い1等星、0.4等)、こいぬ座のプロキオン(0.4等)と共に形作っていて、とても見つけやすい星です。一方、全天で(太陽を除くと)恒星としては2番目に明るいカノープスを見たことがある人は少ないはず。カノープスは、とても南の低いところ、地平線からわずかにしか顔をのぞかせない星なのです。日本ではこの星を「横着星」と呼ぶ地方もあります。

古くからこの星を眺めると縁起が良いという伝承が各地にあります。お隣の国・中国では、この星を南極老人星または寿星と呼び、「この星は戦乱の際には隠れ、天下泰平のときにしか姿を見せない」という信仰があったそうです。長生き・健康だけでなく、世界の平和を祈念して、今晩はこの星を探してみましょう。

場所は、ほぼシリウスの真南(若干、東より)。シリウスからこぶし3つ半分(角度で35度)も南に下がったところなので、シリウスが真南に来る時刻の少し前の時間が見つけるチャンスです。南の地平線・水平線が見えているような開けた場所でないと無理です。残念ながら緯度で福島県以北だとほぼ無理かと思います(カノープスの赤緯は-52.7度、北限は北緯37゚18'、福島県いわき市あたり。ただし、地平線近くの星の光は大気によって屈折されるので、実際の位置より0.5度程度浮き上がって見えます。これを「大気差」と呼びますが、大気差も考慮に入れると、新潟県新潟市から福島県相馬市を結んだ線あたりが北限です)。

知り合いからの情報によると、山形県の月山で見た人がいるそうです。空が済んで乾燥している日が多いので、東京からは見ることが比較的容易ですが、九州・四国・沖縄にお住みの方々やそちらに2月出かけられる方は見つけられる機会が増えると思います。地平線低いところなので、大気に光が吸収されて、1等星のように明るくは輝きませんし、色も本来は白っぽい星ですが、夕日と同じ原理で赤い星に見えます。

カノープスの真南にやってくる時刻は、2月10日(火)で午後8時50分頃 、2月15日(日)では午後8時30分頃になります。

是非、地平線まで澄み切った晩には、ご家族でチャレンジしてみてください。

見つけるための星図が、国立天文台のホームページ、

ほしぞら情報2015年2月」にあります。

自然科学研究機構 国立天文台 准教授

1961年長野県大町市八坂生まれ(現在、信濃大町観光大使)。NHK高校講座、ラジオ深夜便にレギュラー出演中。国際天文学連合(IAU)国際普及室所属。国立天文台で天文教育と天文学の普及活動を担当。専門は天文教育(教育学博士)。「科学を文化に」、「世界を元気に」を合言葉に世界中を飛び回っている。

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