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【理由】なぜ右京さんは訪問先でもコートを脱がないのか。訪問時、玄関前でコートは脱ぐ?脱がない?

畠山仁美所作講師

寒い季節、誰かのお宅を訪問する際、コートはどのタイミングで脱ぎますか?

インターホンを押す前に脱いでおく方、中に入ってから脱ぐ方、どちらもいらっしゃると思います。あなたはどうしていますか?

私の場合、自分が訪問するよりは、訪問を受けることのほうが圧倒的に多いのですが、コートに関しては、外であらかじめ脱ぐ方と、中に入ってから脱ぐ方、ちょうど半々くらいの割合です。

中で脱ぐ方の場合は、コートをお預かりしてハンガーに掛けるなどしている間に軽い会話を交わす時間が持てたりしますし、あらかじめコートやマフラーを手に持って入られる方の場合は、部屋の中へご案内する際の流れがとてもスムーズになる、という実感があります。

そのため私自身は、段取りとしてスムーズな方がいい訪問の場合は、あらかじめ脱いでおきますし、逆に、気心がしれていて、段取りなどさほど気にしないでも良い間柄の場合は、中に入ってからコートを脱がせてもらうこともあります。

たとえばですが、お付き合いしている人の実家を訪れ、初めてご両親と会う日のような改まった訪問は、ただでさえちょっと緊張しているので、なるべくモタモタせずスムーズにご挨拶へと進みたいもの。

そんな時は、あらかじめコートを脱ぎ、手袋やマフラーなども外して身支度をととのえておくことで、部屋に通されてからも落ち着いて動けるのではないでしょうか。

右京さんはコートを脱がない

ドラマ「相棒」の杉下右京さんは、聞き込み捜査などで個人宅を訪問する際、コートを着たまま部屋にあがります。

イギリス留学経験のある右京さんなので、欧米式のマナー(勧められる前にコートを脱ぐのは失礼) を取り入れている、とも考えられますが、おそらくあの振る舞いは、「長居はしません。用件が済んだらすぐに帰りますからね。」という意思表示ではないかと考えています。(ご本人に確認することはできませんが…)

背景にある文化が違えば、当然国や地域によって振る舞い方も変わります。

日本は、靴を脱ぎ、床に座る生活様式です。
(今は和室のない家も多いですが) 床に座って暮らすからこそ、家の中を清潔にすることへの意識もより高まったのでしょう。

人を家に招くのであればなおさら、きれいに掃除をしてお迎えするはず。そんな背景が、”一番外側に羽織るコートは脱いでから家にあがる(ほこりを部屋の中に持ち込まないようにしよう)”、という考え方につながったものと思われます。

85年前の作法書にはなんて書いてある?

タイトルの「右横書き」に時代を感じます
タイトルの「右横書き」に時代を感じます

ちなみにですが、私の手元にある最も古い礼儀作法に関する本、「日常禮法の心得」徳川義親 著 (昭和14年(1939年)発行)には、

「人の家を訪ねる時、門を入ると玄関の外で、外套・襟巻を脱ぎ、或いはコート・肩掛をとつてから案内を乞ふ人が多いやうだが、これでは荷物をもつてゐるときなど困つてしまふ。コート類は玄関の外で脱がずに、着たまゝ案内を乞ひ、『お上がりなさい』と言はれて、上がってから脱ぐのが正しいのである。」

とあります。

今から85年前に書かれた作法書は欧米式で、玄関の外で脱ぐ必要はないよ、と明記されているのが大変興味深いところです。

まとめ

あらかじめコートを脱いでおくのか、中に入ってから脱ぐのかは考え方次第。

北風吹きすさぶものすごく寒い日なら玄関に入ってから脱がせてもらうとか、花粉症のシーズンだから外で花粉を払ってから入ろうとか、それほど広くないカフェで隣の席の人がくつろいでいる時に、真横でばさばさコートを脱ぎ着するのはなんとなく気が引けるから先に脱いでおこうかな、などなど…。

「マナーだから」と思考停止するのではなく、自分の中に判断基準を持ち、相手との関係性や訪問の目的、周りの状況に合わせて、柔軟に使い分けられるのが生きたマナーと言えるのかもしれませんね。

所作講師

日常の振る舞いを見直すことで、心・体・生活を整えるお手伝いをする所作講師。立つ・座る・歩く・物を扱う・挨拶する、といった日常あたりまえに行っている所作を通して、振る舞いだけでなく自分の内面も見つめ直すレッスンが好評。2011年の開講以来マンツーマンレッスンにこだわり、一人一人と向き合ってきた。ブログ【所作美人のヒント】では、バタバタと忙しい日々の中で、所作を通して自分を磨く考え方を発信。著書「一日一分からはじめる『おだやかな人になる所作の習慣』」

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