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そもそも「自己実現」とは何なのか? 【3分】で考えられる自己実現のアイデア

横山信弘経営コラムニスト
自己実現で、そんなに悩むことなのか?(写真:アフロ)

「自己実現」は絶対的な自我?

「自己実現(Self-actualization)」という言葉があります。人生の究極の目標を自ら定め、それを実現させること。絶対的な自我の実現を導く行為などと言われていますが、とても大仰な表現です。自己実現とは、人生とは何かを理解することなのか? それとも神の領域に達することなのか? ……などと勘違いさせるような物言いとなってしまっています。しかし、それでは「抽象度」が高すぎて誰でも同じになります。言葉に「自己」が入っている以上、あくまでも自分個人の人生の目標を達成させること、なのでしょう。それにしても仰々しい表現です。

ご大層で仰々しい表現だからこそ、気高い何かを掴むような事柄だと勘違いする人が増えます。ですから、

「この仕事を通じて、あなたが自己実現したいこととは何ですか?」

などと、言われると多くの人が、そのような「人生の究極目標」「絶対的な自我」などを考えたことがないですから、ワケがわからなくなります。特に、そのような高尚な問いに慣れていない若者は混乱し、

「この会社では自己実現できない気がしています」

などと言って辞めてしまうのです。

人生の目的は決まっているのです。【1秒】も考える必要がありません。それは、誰かを幸福にすることです。幸せにすることです。幸福感というのは「感覚」を指しているので、その人の価値観にとらわれません。脳内物質のドーパミンなどが分泌されれば「快楽」を得られるわけですから、悩む必要などありません。

たとえ身を削って激しい修行に打ち込んでいる人であっても、戦場に出かけて自己犠牲を払いながら支援する人であっても、自ら主体的にその道を選んだのなら、どこか厳しい環境の中でも恍惚感を得られるタイミングがあるはずです。他者に理解されるかどうかは別にして、脳内でドーパミンなどが出るタイミングがあるのです。

目的は誰もが同じです。向かう先は同じなのですが、目的地へ行く手段が違うのです。歩いて行くのか、車で行くのか、新幹線を使うのか、飛行機で飛ぶのか……などの違いなのです。これは個人個人によって違うのです。

物事を「手段」と「目的」に分解すれば、自己実現で悩む人はスッキリすることでしょう。この分解ができない人は、堂々巡りをするだけです。答えのないものを探すかのように、「考える」ことができず「悩む」を繰り返すことになります。

手段の目的化

たとえば、昔からの夢だったミュージシャンとなり、多くの人に自分を歌声を聴いてもらえるようになった。そして、勇気づけられた、ありがとう! と声を掛けられるようになった……。こういう場合に、ついに自己実現ができた、と表現してもいいのでしょう。

また、60歳となり、会社員を辞めてヘルパーとして働きはじめたら、地域のお年寄りの方たちから感謝されるようになり、ようやく働く喜びを感じられるようになった。まさにこれが私にとっての自己実現だ、という人のケースもあります。

「手段」は人によってさまざまです。しかし「目的」は変わりません。社会全般や家族、友人、ファン、職場の仲間、地域の人たちに何らかの貢献をしてはじめて自分も幸せを覚える。これが目的であるのです。

「自己実現」の言葉の定義である、人生の究極の目標とか、絶対的な自我とはかけ離れている気がしますが、現代において多くの人が使う「自己実現」とは、このような解釈でよいと思います。(そもそも「人生の究極の目標」や「絶対的な自我」を追求することは、個人中心の過去と異なり、社会性を重んじる現代において大いに自己中心的であるというのが私見です)

結局、何をやって社会を幸福にするのか、家族を幸せにするのか、お客様やファンを幸せにするのか、そしてそのことで自分が喜びを感じるか、幸福感を覚えるのか……。この「何をやって」の部分が「手段」になります。前述した「徒歩」「自動車」「新幹線」「飛行機」のような部分である、ということです。

ただ、この「手段」にこだわると「手段の目的化」という現象に陥ります。「手段」なのに「目的」だと勘違いすることです。

たとえば私は現場に入るコンサルタントですので、多くの企業でこの「手段の目的化」を目にします。たとえば会議もそうです。会議は手段であるはずなのに、会議をやることが目的となってしまっている企業はとても多くあります。情報システムもそうです。システム導入が目的となってしまい、それを活用してどう収益を上げるのか? どう効率化をはかるのかを脇に置いてしまっている会社も多いのです

個人でも同じですね。新しいスマホを購入したが、スマホは「手段」であり、スマホを使って何をやるのか、という「目的」がはっきりしない場合は、手段を目的化している証拠です。

「手段の目的化」は現代病です。物質的に豊かになり、余裕があるからこそ、必要がどうかわからないSUV(多目的車)を買う人が増え、高性能のスマホや大画面のタブレット端末に強い興味を持つ人がいるのです。

「手段の目的化」している人は悩みが絶えません。目的がハッキリしていないので、「どんなSUVがいいんだろう? ホンダのCRVもいいが、マツダのCX-5もいい。日産のエクストレイルにしようかな」などと悩むのです。目的がハッキリしている人は、「仕事柄、舗装されていない荒地も走破しないといけないので、トヨタのランドクルーザーしかあり得ない」となるのです。迷いません。

平和な悩み

ロックバンドを組んで人気者になろうとした人が、その夢を果たせず、アイドルのバックバンドで演奏している、演劇の音響スタッフとして働いている、普通に会社員となって週末にだけ介護施設に通い、懐メロを演奏している……となったとしても、周囲の人、その音楽に触れる人に喜びと感動を与えているのなら「手段」が違っても「目的」は同じです。

「ロックバンドで大成しなかったからといって、週末に施設をまわって演奏しているだけのアイツは人生の負け犬だ」

などと陰口をたたく人は、青臭い勘違いをしています。何を持って、目的を果たすのか? その手段は何でもいいのです。目の前に仕事があり、その仕事によって誰かに貢献できていると思えば考える必要などありません。その仕事を一所懸命やるのです。他に、自分に合った「手段」があるというのであれば、その「手段」を選択してもいいでしょう。

ただ、どこか他に自己実現できる仕事があるに違いない。その「天職」がどこにあるのかを知りたいと思い悩むのはやめましょう。

「どんなSUVがいいんだろう? ホンダのCRVもいいが、マツダのCX-5もいい。日産のエクストレイルにしようかな。トヨタのランクルは大きすぎるし……。そういえば、本当に自分はSUVが乗りたいんだろうか? 軽自動車でも悪くはないし」

などと悩んでいる人と一緒です。”平和な悩み”です。こんな悩みができて、幸せだと思ったほうがいいでしょう。”平和な悩み”なのに、眉間に皺を寄せて悩むのは大いなる勘違いなのです。

考えられる選択肢はそれほど多くないはず、その「手段」を並べたうえで考えれば【3分】もかからずにチョイスできるはずです。目的は決まっているわけですから、手段を選んだら目的を果たすために邁進するだけなのです。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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