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コロナ禍のラマダーン月が終わりを迎えたシリアで感染者数が増加傾向に

青山弘之東京外国語大学 教授
(写真:ロイター/アフロ)

シリアでラマダーン月終わる

1ヶ月にわたるラマダーン月(4月24~5月24日)を終え、シリアは5月24日、イード・アル=フィトルの休暇を迎えた。

新型コロナウイルスの感染拡大防止策として発出された外出・移動制限措置は、ラマダーン月中若干緩和された。午後6時から翌午前6時までとされていた外出禁止令(3月24日発出)は、4月23日以降、午後7時30分から翌午前6時に変更された。また、県内の都市・農村間の移動制限(3月29日発出)は、4月30日、5月1、2日に一時解除された。さらに、県外への移動制限(3月31日発出)も、5月19日から5月30日まで解除された。

5月20日から22日には、混雑を緩和するとして商店の営業が午後7時まで延長された。

アサド大統領は5月2日、イマード・ハミース内閣の新型コロナウイルス感染症対策チームと会合で、「統制された規制緩和」に踏み切ると表明し、市民生活への圧力が緩和され、日常生活に徐々に戻ることが期待されている。

ラマダーン月の感染状況の推移

だが、ラマダーン月中盤頃から、シリア国内で感染者数が上昇傾向を見せるようになった。

保健省の発表によると、新型コロナウイルス感染状況の推移は以下の通りである。

  • 4月24日:感染者数42人、死者数3人、回復者数6人
  • 4月25日:感染者数42人、死者数3人、回復者数11人
  • 4月26日:感染者数43人、死者数3人、回復者数14人
  • 4月27日:感染者数43人、死者数3人、回復者数19人
  • 4月28日:感染者数43人、死者数3人、回復者数21人
  • 5月1日:感染者数44人、死者数3人、回復者数27人
  • 5月6日:感染者数45人、死者数3人、回復者数27人
  • 5月8日:感染者数47人、死者数3人、回復者数29人
  • 5月13日:感染者数48人、死者数3人、回復者数29人
  • 5月15日:感染者数50人、死者数3人、回復者数36人
  • 5月16日:感染者数51人、死者数3人、回復者数36人
  • 5月17日:感染者数58人、死者数3人、回復者数36人
  • 5月22日:感染者数59人、死者数4人、回復者数37人
  • 5月23日:感染者数70人、死者数4人、回復者数37人
  • 5月24日:感染者数86人、死者数4人、回復者数41人
SANA、2020年5月24日
SANA、2020年5月24日

この推移を見ると、ラマダーン月中に感染者数は倍増、とりわけ同月最後の2日で一気に27人の感染が確認されていることが分かる。

タルトゥース港での検査でロシア人職員が陽性

また、5月23日には、タルトゥース港でのロシア人職員に対するPCR検査で1人から陽性反応が検出され、港湾施設が一時閉鎖されたとの情報が流れた。

これに関して、ニザール・ヤーズジー保健大臣は声明を出し、PCR検査の精度が70%であるため、ロシア人職員の感染は断定できないとしたうえで、施設を封鎖することでこの職員と濃厚接触したシリア人職員を隔離し、感染を確認するための検査を実施していたことを明らかにした。

そして、シリア人職員に対する検査の結果はいずれも陰性だったため、帰宅が許されたと付言した。

また、保健省は5月24日、陽性反応が出たロシア人職員に対して再検査を行った結果、陰性だったと発表した。

シリアでは5月24日、宗教関係省の法学評議会とシャームのくにのウラマー連合が、モスクでの集団礼拝を中止するファトワーを発出、信者たちはテレビを通じた集団礼拝の呼びかけに合わせて、自宅で礼拝を行った。

イードが明けても、現地では余談を許さない状況が続きそうである。

(「シリア・アラブの春顛末記:最新シリア情勢」をもとに作成)

東京外国語大学 教授

1968年東京生まれ。東京外国語大学教授。東京外国語大学卒。一橋大学大学院にて博士号取得。シリアの友ネットワーク@Japan(シリとも、旧サダーカ・イニシアチブ https://sites.google.com/view/sadaqainitiative70)代表。シリアのダマスカス・フランス・アラブ研究所共同研究員、JETROアジア経済研究所研究員を経て現職。専門は現代東アラブ地域の政治、思想、歴史。著書に『混迷するシリア』、『シリア情勢』、『膠着するシリア』、『ロシアとシリア』など。ウェブサイト「シリア・アラブの春顛末記」(http://syriaarabspring.info/)を運営。

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