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日本ツアー初参戦で初Vのキム・ヘリムが語る日本を目指すワケと”アン・シネフィーバー”

金明昱スポーツライター
日本ツアー初出場ながら初優勝したキム・ヘリム(写真提供:KLPGA)

愛称は”たまごゴルファー”と”寄付天使”

またもや韓国人選手の層の厚さを痛感させられた。日本女子ツアー初参戦ながら、初優勝を飾ったのは韓国のキム・ヘリムだった。

サマンサタバサガールズコレクション・レディースに主催者推薦で出場し、通算11アンダーで2位に4打差をつける圧勝劇。

日本ツアー初出場の選手が優勝したのはチョン・インジが制した2015年のワールドレディスチャンピオンシップサロンパスカップ以来だ。

キムは2007年にプロ転向し、08年に韓国下部ツアーからプロ生活をスタートさせた27歳。昨季、ようやくツアー初優勝を成し遂げて年間2勝をマークした。

今季も韓国ツアー2勝と絶好調で、現在賞金ランキング2位につけている。

一時、体重を増やすため、オフにたまごを1日に30個食べて、筋力トレーニングをしていたこともあり、韓国メディアからは“たまごゴルファー”との愛称がつけられた。また、試合で獲得した賞金の10%を寄付していることから”寄付天使”の異名もあるほど。

韓国でもっとも勢いのある選手として注目の彼女が、満を持して日本ツアーに初参戦し、初優勝を手にしたのは決して偶然ではない。

同じ週に開催された全米女子オープンの出場を見送り、サマンサタバサレディースに賭けていたのだ。

大会初日が終わったあと、キムに話を聞きに行くとこう語っていた。

「いつか日本ツアーに進出したいという気持ちがあり、今年の日本のクオリファイングトーナメント(QT=予選会)に出場しようと考えていたんです。でも、まだ気持ちを整理できずにいたとき、この大会の推薦の話が来たのです。優勝できれば、そのまま日本ツアーでやってみようという気持ちで来ました」

そして、有言実行。ちなみに去年12月、世界4ツアー対抗戦「ザ・クイーンズ」に韓国代表選手として、初めて日本での試合に出場した。

「日本のコースは自分に合う」

日本でプレーするのは今大会で2度目だが、ツアー環境の良さに感銘を受けていた。

「試合のすべての雰囲気が韓国よりも良くて、気分よくプレーできました。フェアウェイ、グリーンのコンディションがすごく良くて、そういうコースがすごく好きなんです。自分にすごく合っているコースと感じましたので、自信がつきました。ショットメーカーが良い成績を出せると感じました」

彼女が日本ツアー挑戦に強い意欲を見せる理由には、近年の韓国人選手の活躍が大きく影響している。

イ・ボミ、キム・ハヌル、申ジエらが賞金ランキング上位に位置し、今季から日本ツアーに参戦している“セクシー・クイーン”アン・シネのフィーバーぶりも、韓国では大きな話題だ。

初日にアン・シネと同組だったキムはこんな会話を交わしたという。

「私も気になることが多かったので、韓国との違いについて色々と質問していました。アン・シネプロは日本のギャラリーのマナーは世界一と言っていましたし、選手にとってはすごくプレーしやすいと話していました。ファンの選手だけでなく、他の選手にもナイスプレーに対してはしっかり拍手を送る姿が印象的でした。日本でプレーするのがすごく楽しみです」

”アン・シネフィーバー”について聞くと…

個人的に気になっていたのは日本でのアン・シネのフィーバーぶりが、韓国ではどのようにとらえられているのか。

そのことについて聞くと、キムは「フフッ」と笑いながら、答えてくれた。

「アン・シネプロは元々、韓国でも人気の高い選手。ファッション的な部分だけでなく、ゴルフもうまい。日本でも大きくクローズアップされていることを、韓国の選手たちもよく知っています。選手の立場としては、見た目とゴルフの実力が備わっているのはとてもうらやましいです(笑)。日本で人気が出て当然の選手だと思います」

韓国から日本に渡る選手が必ず成功するという保証はなく、ゴルフの実力と結果がついてこないと注目されない。アン・シネの場合はファッション的な部分が大きくクローズアップされたが、少しずつ日本ツアーに順応し始めているのも事実。

キムもまた、日本で成功を収めるには、結果を残すしかないと考えている。今回、狙った試合で一発勝負で日本ツアー出場権を獲得したキムだが、「今季は韓国ツアーの賞金女王を狙う」という。

日本ツアーへのフル参戦は来年を予定しており、今季の出場は数試合になる。それでも、後半戦のダークホースになるのは間違いなさそうだ。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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