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なぜエムバペの移籍の噂が“再燃”しているのか?レアルの思惑と必要になるベンゼマの後釜。

森田泰史スポーツライター
ボールを追うエムバペ(写真:ロイター/アフロ)

再び、動きがあるかもしれない。

今季のチャンピオンズリーグ決勝トーナメント一回戦で、パリ・サンジェルマンとバイエルン・ミュンヘンが激突した。欧州屈指の強豪同士のぶつかり合いは、2試合合計スコア3−0でバイエルンの完勝に終わっている。

昨季のCLでマドリーと対戦
昨季のCLでマドリーと対戦写真:ムツ・カワモリ/アフロ

この試合後、欧州で世間を賑わせている話題がある。キリアン・エムバペの移籍報道だ。

昨季終了時に契約満了を迎える予定だったエムバペは、長くレアル・マドリーへの移籍が噂されていた。決定的と思われていた移籍は一転、エムバペの2025年夏までの契約延長という形で結末を迎えた。

■レアル・マドリーの思惑

マドリーが、エムバペの獲得に本腰を入れていたのは確かだろう。2021年夏には、移籍金1億6000万ユーロ(約224億円)の第一オファー、移籍金1億8000万ユーロ(約252億円)の第二オファー、移籍金2億ユーロ(約280億円)の第三オファーを提示した。だがパリ側が首を縦に振らず、移籍成立には至らなかった。

「エムバペは変わってしまった。フランス代表で、チームメートが参加しているスポンサーのイベントに行きたくないようだった。その件について、私は気になった。それだけではなく、いくつか気になる点があった。フットボールはチームスポーツだ。誰もに平等な条件が与えられなければいけない」

「パリ・サンジェルマンからはチームのリーダーになるというだけではなく、クラブのリーダーになるようなオファーが出されていたようだ。それは私が望んでいたエムバペではない。彼の夢が変わってしまったのだと思う」

これはマドリーのフロレンティーノ・ペレス会長の言葉だ。

マドリーが、ペレス会長が、翻意したエムバペに怒りを覚えていたのは間違いない。現在、マドリーとエムバペまたパリSGとの関係は良好とは言えないだろう。

得点を喜ぶエムバペとメッシ
得点を喜ぶエムバペとメッシ写真:ロイター/アフロ

それでも、フットボールの世界というのは、何が起こるか分からない。

マドリーは今季、リーガエスパニョーラで首位バルセロナに大きく勝ち点差をつけられ、2位に位置している。コパ・デル・レイ準決勝ではバルセロナを相手にファーストレグを落としており、国内のタイトル獲得が困難な状況だ。

チャンピオンズリーグにおいては、決勝トーナメント一回戦で、リヴァプールに先勝している。ベスト8進出に近づいているが、ビッグイヤー獲得は保証されているわけではない。

今季のマドリーは無冠に終わる可能性がある。リーガ、コパ、CLの主要タイトルを逃せば、チームには何らかの変化が必要になる。

マドリーはカリム・ベンゼマが35歳を迎えている。昨季、獅子奮迅の活躍で、マドリーのドブレテ(2冠)に大きく貢献してバロンドール受賞を果たしたベンゼマであるが、今季は負傷に苦しめられている。7度、負傷離脱を強いられ、安定したパフォーマンスを見せられていない。

シュートを打つベンゼマ
シュートを打つベンゼマ写真:ムツ・カワモリ/アフロ

マドリーは、当初のプランでは、2024年夏に向けてベンゼマの後釜を確保する筈だった。2024年夏には、マンチェスター・シティのアーリング・ハーランドの契約解除金が2億ユーロ(約280億円)になるといわれており、ハーランド獲得案を含めワールドクラスのストライカーを見つけるつもりだった。

ここにきて、状況が変わろうとしている。テンポラーダ・エン・ブランコ(無冠のシーズン)をペレス会長が許すはずもなく、即座にベンゼマの代役を引き入れる可能性がある。

■マドリディスタの反応

また肝要なのは、マドリディスタが、エムバペの獲得に際して、どのような反応をするかだ。

スペイン『マルカ』で行われたアンケートでは、16万以上のユーザーが投票(日本時間3月12日午前時点)している。

「レアル・マドリーはエムバペの獲得に動くべきか?」の問いに、「イエス、エムバペは世界最高の選手だから」(15%)、「イエス、だが値段次第である」(38%)、「ノー、昨年の出来事は許されない」(47%)と意見が分かれている。

移籍金の額によって、という前置きを含めれば、半数以上の53%が「イエス」に票を投じている。これは興味深い事実だ。

去就に注目が集まるエムバペ
去就に注目が集まるエムバペ写真:なかしまだいすけ/アフロ

「エムバペはパリ・サンジェルマンから移籍する必要があるだろう。本当に、移籍するべきだよ。彼らはチャンピオンズリーグの優勝に近づいてもいない。現在のメンバーが残ったとして、次のシーズン、良くなるという風にも思えない。レアル・マドリーに移籍するなら、できるだけ早い方がいい」とは現役時代にリヴァプールで活躍したジェイミー・キャラガー氏のコメントだ。

「(近年の)パリ・サンジェルマンは5度にわたりベスト16で敗退している。まるでジョークだ。マーケットで、大金と経験を欲している…。それが理想なのだろう。しかし、実際には、そうなっていない」

タイトル獲得を目指すマドリー
タイトル獲得を目指すマドリー写真:ロイター/アフロ

第一に、重要なのは、今シーズンの成績だ。マドリーのタイトル獲得、ベンゼマのパフォーマンス、エムバペの考え、いくつかの要因が複雑に絡み合う。

だが、その結果次第ではーー。扉は、開かれている。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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