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なぜダルビッシュ有は200勝できたのか?その稀有な能力を上原浩治が分析「自分の体で実験している」

上原浩治元メジャーリーガー
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 メジャーリーグ、パドレスのダルビッシュ有投手が19日(日本時間20日)のブレーブス戦で今季4勝目を挙げ、日米通算200勝を達成した。30代後半になってもパフォーマンスは落ちるところが、近年は多彩な変化球を駆使してさらに進化を遂げているようにみえる。「節目」ではなく、文字通りの「通過点」。この日の降板時点でもメジャー自己最多の25イニング連続無失点を更新中。いまだ限界が見えない右腕には、250勝はおろか、300勝近くまで勝ち星を挙げる可能性を見せつけている。

 全ての試合で先発して築いた200という勝ち星に、ダルビッシュ投手の真価があるといえる。立ち上がりが多少、不安定であっても、イニングを重ねる中で尻上がりに調子を上げる典型的な先発タイプだ。徐々に調子を上げていくというのは、簡単ではない。試合の中で自分の中で投球の修正が効くということだ。体の仕組み、投球動作をわかっていて、どこをどうすればいいかを熟知しているからこそ、なせる業だ。

 日々のトレーニングやコンディション調整にも、自分で考え、自分の体を“実験台”にしながら色々なことを試している。例えば、体重にしてもそうだ。メジャーに行ってから一気に増やしてパワー型を目指したり、適正体重を求めて調整をしたり・・・。私自身もアメリカに渡ったときに体重を増やしたことがあるが、最終的にはキレで勝負するタイプだと考えて戻したことがある。自分の体を変化させるのは、成功する保証がないから不安もある。ダルビッシュ投手は自分の体を熟知しているからこそ、進化のための変化をどん欲に追い求めることができるのだろう。

 ダルビッシュ投手にはもちろん、野球をする上で人より優れた体格や能力もあるだろう。しかし、それだけでは長くは続かない。プロに入って20代から30代の最初の10年と、その後の10年は体が全く違ってくる。体力的にもきつくなり、ケアを怠ってしまえば一気にパフォーマンスが落ちる。そうならないためには、探究心を持ち続け、トレーニングに関する知識も培って実践していく必要がある。ダルビッシュ投手の場合は、変化球の握りや軌道の研究も熱心で、食生活やサプリメントにも高い意識を持っている。プロという肩書きを持っている選手であっても、継続することは難しい。それができるのは、何より野球が「大好き」という気持ちがあるからだろう。

 ダルビッシュ投手にとって、大好きな野球における先発投手というポジションは、まさに天職と言える。200勝をしたときにお祝いの連絡を入れたら、たくさんメッセージが届いているにもかかわらず、返信をくれたナイスガイでもある。あっぱれ!な投球を続けていく姿をこれからも応援したい。

元メジャーリーガー

1975年4月3日生まれ。大阪府出身。98年、ドラフト1位で読売ジャイアンツに入団。1年目に20勝4敗で最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率の投手4冠、新人王と沢村賞も受賞。06年にはWBC日本代表に選ばれ初代王者に貢献。08年にボルチモア・オリオールズでメジャー挑戦。ボストン・レッドソックス時代の13年にはクローザーとしてワールドシリーズ制覇、リーグチャンピオンシップMVP。18年、10年ぶりに日本球界に復帰するも翌19年5月に現役引退。YouTube「上原浩治の雑談魂」https://www.youtube.com/channel/UCGynN2H7DcNjpN7Qng4dZmg

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