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【オートバイのあれこれ】カワサキの「復讐車」?

Rotti.モトエンスー(moto enthusiast)

全国1,000万人のバイクファンへ送るこのコーナー。

今日は「カワサキの“復讐車”?」をテーマにお話ししようと思います。

カワサキはマッハシリーズやZシリーズを通じて世界に名を馳せたわけですが、その前段階、つまり、カワサキが世界的二輪メーカーへと成長するための基礎固めをしたのが、1967年(昭和42年)に登場した『350A7 アベンジャー』だったと言えるでしょう。

▲250A1サムライをベースに、350cc版のような形で作られた
▲250A1サムライをベースに、350cc版のような形で作られた

350A7は『250A1(サムライ)』のワンクラス上のモデルとしてデビュー。

車名の「アベンジャー」は、この350A7のアメリカ(北米)におけるペットネームでした。

▲’66年デビューのサムライ。カワサキが「スポーツバイク」として作った最初の市販モデルだ
▲’66年デビューのサムライ。カワサキが「スポーツバイク」として作った最初の市販モデルだ

アベンジャーに搭載されたエンジンは、空冷2ストロークの並列2気筒。

サムライのエンジンを247ccから338ccまで大きくし、ピークパワーは31psから40.5psまで増強されていました。

2ストマシンならではの軽量な車体も相まって、アベンジャーは650ccクラスのビッグバイクにも遜色ないダッシュ力(ゼロヨン加速約14秒)と最高速(175km/h)を見せつけ、デビューするやいなや日本でもアメリカにおいても名声を得ることができたのでした。

▲最高出力約40ps/最大トルク4kg-mを発揮する2ストツインエンジン
▲最高出力約40ps/最大トルク4kg-mを発揮する2ストツインエンジン

また、アベンジャーは走りの性能だけでなく、サムライの格上モデルとしての質感も重視されていて、燃料タンクには鏡面が美しいメッキがあしらわれ、またシートにもタックロールタイプが採用されるなどしていました。

▲性能のみならず、質感の面でも欧米マシン超えを狙っていた
▲性能のみならず、質感の面でも欧米マシン超えを狙っていた

アベンジャーを無事成功させ、世界市場への本格進出に弾みのついたカワサキは、この後勢いそのままにマッハシリーズの開発へ乗り出すこととなります。

(ちなみに、かの有名な『500SSマッハⅢ』の2スト3気筒エンジンは、このアベンジャーのツインエンジンに1気筒追加する手法で開発されています)

▲当時の北米向け広告
▲当時の北米向け広告

さて、ここからは余談ですが、350A7の「アベンジャー」(avenger)という呼称について。

「avenger」は直訳すると〈復讐者〉や〈報復者〉といった意味で、より日本語的に意訳すれば〈仕置き人〉というようなニュアンスも含むかと思われます。

何に対する報復、お仕置きなのかは定かではありませんが、おそらくは、当時日本の二輪メーカーはまだまだ後進(発展途上)の立場で、それを見下す欧米老舗メーカーに対する「見返したる!」というハングリー精神も込めて、カワサキはこの350A7へ「アベンジャー」という呼称を与えたのかもしれません。

画像引用元:カワサキモータースジャパン

モトエンスー(moto enthusiast)

バイクを楽しむライター。バイク歴15年で乗り継いだ愛車は10台以上。ツーリング/モータースポーツ、オンロード/オフロード、最新バイク/絶版バイク問わず、バイクにまつわることは全部好き。

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