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J3福島・田坂監督インタビュー(2) ヒントはグアルディオラが率いたバイエルン

杉山孝フリーランス・ライター/編集者/翻訳家
2年目となる福島を率いる田坂監督(筆者撮影)

9日に開幕するJリーグ3部(J3)で、福島ユナイテッドは11日にホームでザスパクサツ群馬との初戦を迎える。首が固まって動かなくなるほど見入って国内外のサッカーを研究するという田坂和昭監督は、今季も独自のアイディアでチームのレベルアップを図っていく。

組織に個々の良さを乗せていく

――昨年初めて経験したJ3で、ここにはちょっと勝てないなと感じるチームはありましたか。

「それはありませんでした。実際には負けたものの、優勝した秋田とのアウェイでの試合は、去年のベストゲームだと思っています。特に後半など、パワー系の3トップもほぼ完璧に封じ込めて、何もさせませんでした。1-2で負けたもののボールを保持して、こちらのやり方でほぼずっと攻め込んでいました。シーズン前半戦にアウェイでパワーの差をありありと感じさせられた鹿児島にも、ホームでの戦いでは引けを取りませんでした。

 でも、やはりパワー系のチームには押し込まれたり、差をつくられる可能性があります。それに対しては自分たちの密集型サッカーやアジリティを活用して主導権を握り、相手の良さを消していきます。我々は横綱ではありません。手を変え品を変え、いかに横綱を倒すかを突き詰めていきます。

――良いプレーを勝利につなげるには、何が必要ですか。

「それが今シーズンのテーマです。崩し方については、選手に話をしています。映像を使って、押し込んだ際に相手を崩し切るためのチームのコンセプトを話しています。去年以上に細かく突き詰めていきますが、選手に判断をさせないわけではなく、ベースを築けば周囲の動き方も分かってくるだろうから、その上で個人の良さを出してもらえればいいんです」

――シーズン半ばの独特なフォーメーションへの変更は、もともと計画していたことですか。

「いつかやってやろうというプランはありました。(以前に率いていた)大分や清水でも、終盤にほんの少しだけ試したこともありました。サイドバックが中に入るという陣形は、ジョゼップ・グアルディオラ監督がバイエルン・ミュンヘンでやったわずか5試合をたまたま録画していて、面白いなと思っていました。さらにうちには、ワイドに張る適正のある選手もいることも後押しになりました。夏場にはなかなか思うように勝てなかった時期があり、3バックも試したものの難しさを感じていたので、思い切って導入しました」

――精神面の変化が、適応の後押しになりましたか。

「指導者がプレーやシステムを変える狙いを話しても、気持ちが乗らないと『どうしてですか』という声が出るかもしれませんが、気持ちが乗っていればトライしようとしてくれるものです」

「次の策」も用意済み

――中央に絞ったサイドバックなど、独特のポジションに入っても、かえって選手の個性がさらに輝く印象がありました。

「そうですね。良さがさらに活きるようになりましたね。弱点があっても、うまく活用すれば消せるものだし、選手同士の距離が近ければ、パワーやスピードの差は関係なくなります。選手がすごく躍動して、楽しくサッカーをしていると感じるようになりました。

 ただし、密集をつくるという考えは、まったく変わっていません。ボールサイドに寄って、コンパクトなフィールドの中でプレーしていく。開幕から数試合は守備もボールサイドに寄るものだったので、一発のサイドチェンジからスピードでゴールを脅かされることもありました。その後、3バックにすることでワイドなポジションを使えるようにして、さらにリスクを抑えるためにサイドバックが中に入る新しいやり方を採用しました。そういう風に、今年も少しずつ変化を続けていきます」

――さらなるアイディアが、すでに用意されているのでしょうか。

「一応考えています。もしかしたらどこかのチームが研究しているかもしれないけれども、それに備えて次のバージョンがある、と選手たちには話してあります。昨年の夏過ぎから追っている、あるヨーロッパのチームがモデルです。新しいことをやっていきたいんです」

――かなり欧州の試合を見ているそうですね。

「今、面白いのはナポリですね。私がやりたいようなサッカーをやっています。もちろんグアルディオラも、いろいろなことにチャレンジしていて面白いですね。イタリアは守備の面白さがありますが、結局フィジカルの強いチームが上に行く傾向があります。一時期はスペインをずっと見ていましたが、個の技術が高くて随分攻撃的過ぎる感じがしました。ユナイテッドや日本人選手に合うか検証していますが、乾(貴士)や柴崎(学)が活躍しているのを見ると、日本人でもできるかなと感じさせてくれます。ドイツやオランダでは、日本人選手は十分に通用していますよね」

FUFC PRESSから転載、一部加筆。

(3)へ続く。

フリーランス・ライター/編集者/翻訳家

1975年生まれ。新聞社で少年サッカーから高校ラグビー、決勝含む日韓W杯、中村俊輔の国外挑戦までと、サッカーをメインにみっちりスポーツを取材。サッカー専門誌編集部を経て09年に独立。同時にGoal.com日本版編集長を約3年務め、同サイトの日本での人気確立・発展に尽力。現在はライター・編集者・翻訳家としてサッカーとスポーツ、その周辺を追い続ける。

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