Yahoo!ニュース

主な新興国経済ニュース(5月7日)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

チェコ中銀、政策金利を据え置き―依然過去最低の0.05%

チェコ国立銀行(中央銀行)は先週(2日)の金融政策決定会合で、政策金利の2週間物レポ金利を過去最低の0.05%のまま据え置くことを全員一致で決めた。同中銀は昨年11月の会合で政策金利を0.25%から0.2%ポイント引き下げて0.05%と、事実上のゼロ金利にしており、据え置きは前回3月会合に続いて4回連続となる。

中銀は金融政策決定会合後に発表した声明文で、「市場金利(3カ月物PRIBOR(プラハ銀行間取引金利))はインフレ圧力が著しく上昇しない限り、より長期にわたって現在の水準が維持される」とした上で、「もう一段の金融緩和策が必要な場合には(自国通貨コルナの下落阻止のために)為替介入を行う用意がある」とも述べている。

金利を据え置いた理由について、中銀は、「市場金利は、年内はやや低下し来年から上昇するとの最新の予測に基づくものだ」とし、さらに、「インフレ圧力の上昇はなく、また、インフレ圧力の上昇を示すような目に見えるリスクもない」と述べている。

他方、景気の見通しについて、中銀は今回発表した標準シナリオの最新版で、今年のGDP(国内総生産)伸び率は前年比0.5%減と、前回2月予測時点の0.3%減から下方修正した。2014年についても1.8%増と、前回予想の2.1%増から下方修正している。

今年は増税や公共料金の値上げなどでインフレ上昇圧力が高まっても、チェコ経済はリセッション(景気失速)に入ることから全体としてインフレを抑制すると指摘。今年と来年のインフレ率は物価目標の2%をやや下回ると予想している。ちなみに、今回の最新予測では来年4‐6月期の消費者物価指数は前年比1.8%上昇(前回予測1.7%上昇)、同年7‐9月期は同1.9%上昇(同1.8%上昇)となっている。

このほか、中銀が市中銀行に資金供給するためのオーバーナイト物金利で短期市場金利の上限金利となるロンバート型貸出金利も現行の0.25%に、また、市中銀行が中銀に預金として預ける過剰流動性に適用される金利で短期市場金利の下限金利となる公定歩合も現行の0.05%に据え置かれた。

-

中国投資会社フォサン、インドネシア鉄鋼会社と合弁でビレット生産へ

インドネシア工業省のパンガ・スサント産業製造総局長は先週末、記者団に対し、中国の投資会社フォサン・インターナショナル(復星国際)が北スマトラ州に、インドネシア鉄鋼会社グヌン・ガハピ・サクティ(Gunung Gahapi Sakti)と合弁で鉄スクラッブとビレット(半製品の小鋼片)を生産するプロジェクトを開始することを明らかにした。ジャカルタ・グローブ(電子版)が外国通信社の報道に基づいて伝えた。

投資額は2億ドル(約200億円)。同プロジェクとではインドネシアのアチェ州と西スマトラ州で採掘された鉄鉱石を使い、鉄鋼の圧延工程の半製品であるスクラッブとビレットを生産する。今年から第1期工事を開始し、年間生産能力は50万トンとなる。その後の第2期工事で計100万トン体制にする計画。

-

S&P、インドネシアの格付け見通しを引き下げ-資金流入減速か

米信用格付け大手スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は先週、インドネシアのソブリン債の格付けに対する見通し(アウトルック)を「ポジティブ」から「安定的」に引き下げた。ただ、長期債務格付けと短期債務格付けは、それぞれ「BB+」と「B」のまま据え置いた。

アウトルックを引き下げた理由について、S&Pは政府の構造改革が行き詰まりを見せていることや、民間セクターの外貨建て借り入れの急増、経常赤字が外国からの資金流入で相殺できないほど拡大しているなど外部債務の増大を挙げている。その上で、S&Pは今後12カ月以内に格付けを引き上げることになる「ポジティブ」を維持することは困難と判断したとしている。

インドネシア金融最大手マンディリ銀行のチーフエコノミスト、デストリ・ダマヤンティ氏は3日付のジャカルタ・グローブ(電子版)で、外国人投資家は投資適格級のソブリン債に執着しているため、S&Pのアウトルック引き下げによって、今後、外国からのインドネシアへの資本流入のペースは減速すると予想している。また、その結果、すでに年初来で0.5%下落しているインドネシア通貨ルピアは、今年は下押し圧力を受け続けると見ている。

また、英金融大手スタンダード・チャータード銀行のエコノミスト、エリック・アレクサンドラ-・スガンディ氏も、外国人投資家のインドネシア国債に対する投資意欲が抑制される可能性があると指摘している。一方、ハッタ・ラジャサ経済担当調整相は、引き下げについて、「これは純粋に政府の燃料補助金の問題だ。政府は燃料補助金に対するスタンスを明確にしているものの、補助金の削減が遅れている。しかし、遅れているのは政治とは無関係だ」とも述べている。

S&Pは、燃料補助金の改革が完了して財政のぜい弱性が改善され、また、外部債務が縮小し、構造改革によって経済成長が加速すれば、格上げの可能性があるとしている。

-

4月29日-5月3日のロシアRTS指数、1429.86―2週続伸=BRICs市況

前週(4月29日-5月3日)のロシア株式市場で、RTS指数(ドル建て)は3日終値が前週比3.5%高の1429.86となり、2週続伸となった。前週は5月1日がメーデーの祝日で休場となったため、通常より1営業日少なかった。

RTS指数は、前週末時点で4月10日の直近高値1453.81から18日の直近安値1327.55までの下落分(126ポイント)の8割まで値を戻した。しかし、2月1日の年初来高値1628.31からまだ12%も値を下げている。

週明け4月29日は休暇に入る前の手仕舞い売りの流れを引き継いで地合が悪化する中、RTS指数はロシア2位の金融大手VTB銀行が2.5兆株の新株発行に関するニュースで4%高と急騰したことや欧州株が堅調となったこと、さらに原油先物も落ち着いた動きとなったことから反発。翌30日もこの流れを受けて上昇し2営業日続伸となった。

月が変わって最初の商いとなった2日は、原油価格の下落やアジア株と欧州株が軟調となったことを映して反落したものの、引けにかけて、ECB(欧州中央銀行)の利下げとその後のマリオ・ドラギECB総裁の追加利下げを示唆する発言で地合が回復し下げ幅を縮める場面が見られた。週末3日のRTS指数は、EC(欧州委員会)が今年のユーロ圏GDP(国内総生産)伸び率を0.4%減に下方修正したため、欧州株が景気懸念で下落したものの、米国の4月雇用統計が予想以上に強い結果となったことや、原油高、国営天然ガス大手ガスプロムの急騰(4.7%高)にけん引されて反発した。

今週(5月6-10日)のロシア市場は、ブレント原油先物が1バレル=100ドル超に戻る可能性があることから、ロシア株は再び上昇軌道に入ると見られている。今週の主な統計は、欧州は6日のユーロ圏非製造業PMI(購買部景気指数)、9日のイングランド銀行の金融政策決定会合、米国は9日の週間新規失業保険申請件数と卸売在庫などが予定されている。

-

ベトナム1‐4月期の企業倒産件数、前年比17%増-景気回復遅れる可能性

ベトナム国家金融監督委員会(NFSC)が先週、発表した1‐4月の企業倒産件数は前年比16.9%増となった。この結果について、NFSCでは、「企業の業績低迷は今年の財政収入に悪影響を及ぼすだけでなく、来年のベトナム経済の回復を遅らせる可能性がある」と指摘している。地元オンラインメディアのダントリニュース(dtinews)が伝えた。

企業倒産の原因については、資金調達難や生産コストの上昇、販売不振、高水準の売れ残り在庫を挙げている。その上で、NFSCは、ベトナム経済は依然、内需が弱く、外需も4月の貿易収支が輸出不振で10億ドル(約990億円)の赤字となっていると指摘している。

企業の銀行からの借り入れも、銀行が抱える不良債権が高水準にあるため、貸し出しは慎重になっている一方で、貸付金利も高いため、企業の資金調達は困難になっているとしている。4月第1‐3週の信用供与額は前年末比1.14%増と、経済全体で見た需要の伸びを下回いるほか、4月中旬までの年初来の信用供与額も前年末比わずか1.44%増にとどまっている。

-

メキシコ家電大手マベのブラジル法人、資金繰り悪化で事実上倒産

メキシコ家電大手マベ(Mabe)のブラジル法人、マベ・ブラジルは先週末、資金繰り難のため、サンパウロ州オルトランジアの裁判所に会社更生法の適用を申請し、事実上倒産した。ブラジル経済紙バロール・エコノミコ(電子版)が伝えた。

同社はカンピーナスやイトゥ‐、オルトランジアのブラジル国内3カ所で、米複合企業大手ゼネラル・エレクトリック(GE)やブラジルのダコ(Dako)やコンチネンタルのブランドの白物家電を生産しているが、市場環境の悪化や資金繰り難で工場の操業を継続することが困難になったとしている。

同社ではすでにカンピーナスとイトゥ‐の2工場で1292人をレイオフしており、カンピーナスとオルトランジアの2工場は先月20日に原材料の調達ができなくなったとして休業に入っている。今後は、同社は経営改革を実施して会社再建を目指したい考え。

-

ロシア代金決済大手キウィ、ナスダック市場でのIPOで210億円調達

米ナスダック店頭市場への新規株式公開(IPO)を目指しているロシア代金支払い決済サービス最大手キウィは先週末のIPOで、発行済み株式の24%に相当する1250万株を1株当たり17ドル(約1680円)で売り出、2億1500万ドル(約210億円)の資金を調達した。モスクワ・タイムズ(電子版)が5日に伝えた。

この売り出し価格は同社が先月下旬に明らかにした1株当たり16‐18ドルのレンジの中間にあたる。また、同社の時価総額も8億4400万ドル(約840億円)となった。今回の売り出しで調達した金額にはオーバーアロットメント(追加的な販売株数)の187万5000株は含まれていないが、それを含めると調達総額は2億4440万ドル(約240億円)となる。

3日の初取引で、同社の株価(証券コード:QIWI)は公開価格(17ドル)を0.47%上回る17.08ドルで引けた。一時、日中高値17.37ドルまで値を上げた。日中安値は16.81ドルだった。

米国の株式市場に上場するロシア企業としては、2011年5月にインターネットサービス最大手ヤンデックスがナスダック市場に上場して以来、2番目となる。キウィは欧州やアジア、アフリカ、南北アメリカの22カ国で事業を運営しており、6500万人の利用客から月平均390億ルーブル(約1240億円)の代金決済を処理している。

-

ブラジル中銀週報:5月会合時の政策金利見通し、7.75%で据え置き

ブラジル中央銀行が6日に発表した先週の経済週報「フォーカス・ブルティン」によると、同中銀の委託を受けた民間アナリストが予想した次回5月28-29日の金融政策決定会合時の政策金利(翌日物金利誘導目標)の見通しは、前週予想の7.75%のまま据え置かれた。据え置きは3週連続。1カ月前の予想は7.5%だった。

また、2013年末時点の政策金利の見通しは、前週予想の8.25%のまま据え置かれた。据え置きは2週連続。1カ月前の予想は8.5%だった。2014年末時点の政策金利も前週予想の8.25%のまま据え置かれた。1カ月前の予想は8.5%だった。

2013年実質GDP(国内総生産)伸び率見通しについては、従来(前週)予想の前年比3%増のまま据え置かれた。据え置きは4週連続。1カ月前の見通し予想は3%増だった。2014年のGDP伸び率見通しも従来予想の前年比3.5%増のまま据え置かれた。据え置きはこれで8週連続。1カ月前の見通し予想は3.5%増だった。

一方、IPCA(拡大消費者物価指数)で見たインフレ見通しは、2013年は前週予想の前年比5.71%上昇のまま据え置かれた。1カ月前の予想は5.7%上昇だった。しかし、2014年の見通しは前週予想の5.71%上昇から5.76%上昇に下方修正(悪化)された。1カ月前の予想は5.7%上昇だった。

為替レートの見通しについては、2013年末時点のレアルの対ドルレート(中央値)は、従来予想の1ドル=2.00レアルに据え置かれた。据え置きは10週連続。2014年末時点の見通しも従来予想の2.05レアルに据え置かれた。据え置きは7週連続。 (了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

増谷栄一の最近の記事