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急増する「タピオカ企業」 甘い企業体質どう変える?

横山信弘経営コラムニスト
「埋もれた逸材」が、埋もれたままであることが「タピオカ企業」の最大の問題点(写真:アフロ)

■ 甘い企業体質

10月9日(水)の日経新聞に、衝撃的な記事が掲載されていました。それが『入社直後の就活再開 急増』です。

新卒で4月に入社したばかりの若者が、はやくも夏から転職活動をはじめている、という内容。その数は、実に前年比30%アップというから驚きです。

想像してみてください。

超採用難の時代ですから、どの企業もかなりのコストをかけ、必死で採用活動をしています。それなのに、苦労して雇い入れた若者が、3ヵ月後には転職活動をはじめてしまうことを。

企業側の視点でいえば、まさに弱り目に祟り目。

しかし、それもそのはず――。

ここ数年、企業の不祥事が後を絶ちません。関電の金品受領、かんぽ生命の不適切販売、日産社長の不正報酬、レオパレスの違法建築問題。

事件性がなくとも、若者を失望させる企業が増えています。なぜ、このようなブランド力のある企業が失墜しているのか。そして、これらの企業に共通していることはいったい何なのか。

それは、甘い企業体質です。

コンプライアンス(法令順守)体制が甘いだけでなく、身内に甘かったり、指導が甘かったり、組織変革が甘かったり。しかも、かつて多くの就活生が憧れた銀行や商社、製造メーカーといった大企業ほど、体質が甘い。

部下の女性コンサルタントにその話をしたところ、

「まるで、タピオカのような企業ですね」

と言います。

「タピオカみたいな企業?」

部下は、このような体質の企業は、タピオカミルクティーのような構造になっている、と言うのです。

■ 急増する「タピオカ企業」

それ以来、企業体質が甘くて、埋もれた逸材がゴロゴロいる企業を、私は「タピオカ企業」と呼ぶようになりました。(決して、タピオカドリンクの専門店ではありません)

甘い企業体質をミルクティーに見立て、将来有望な若者を大粒のタピオカにたとえた部下の表現が、とても気に入ったからです。

企業体質の甘さは、「ルールの形骸化」「指導の不徹底」「他責の文化(身内に甘い)」のこと。

希望に胸を膨らませて入社した新入社員たちは、この体たらくに失望します。とくに優秀な若手人材ほど、がっかりすることでしょう。そのような逸材は下層に沈んでいるでしょうから、上層部の目に留まりません。

「埋もれた逸材」が、いつまでたっても誰の目にも止まらず、埋もれたままであること、これが「タピオカ企業」の最大の問題点です。

■「タピオカ企業」どう変える?

埋もれた逸材がゴロゴロいる「タピオカ企業」は、どう変わったらいいのか。タピオカミルクティーでたとえると、

1)ミルクティーを別の飲料に変更する

2)太いストローで吸引する

この2つが解決策になると私は考えています。

タピオカドリンクの大半は、タピオカミルクティーに代表されるように、不透明な飲料で作られていますが、これを透明な飲料に変えるイメージです。

つまり、組織の透明性を高めること。組織の垣根を取っ払い、コミュニケーションを活性化させることです。

タピオカミルクティーは上から眺めると、下に沈んだタピオカが見えません。飲料が不透明だからです。だから経営層から、優秀な若手が見えない。

現状に甘んじているベテラン社員たちにはない、彼ら彼女らなりが持つ革新的なアイデアや、組織を変え得る建設的な意見がトップの目に留まらないのです。

そこで、この問題を解消した、ひとつの事例を紹介しましょう。

私たちがコンサルティング支援したお客様の中に、経営陣が社内SNSで新入社員とのコミュニケーションを活発にとるようにした例があります。

全員、アイコンを笑顔の写真にし、経営陣みずから、自己開示することを勧めました。取引先の社長とラーメンを食べた話題とか、最近飼いはじめた子犬の写真など、そういうプライベートなことまでオープンにし、心を開くようアドバイスしたのです。

すると「返報性の法則」が働き、若手社員も心を開いていきました。とくに1990年代後半生まれの、いわゆる「Z世代」はオープンなコミュニケーションを好むことが特徴です。相手が大企業のトップであろうと、物怖じすることなく近付いていきます。

■ 若者に「主体性」を求めない

さて組織の透明性を高めたら、次にやることは、彼ら彼女らに会って直接言い分やアイデアを吸い取ること。

透明な飲料に変えてしまえば、容器の下に沈殿しているタピオカが上から見てもどこにあるかわかります。あとは太いストローを使って、吸い取るだけです。

経営トップが、若者たちと直接コミュニケーションをとることが重要です。定期的に、それこそ「車座」になって、本音をぶつけ合うのです。

先述した「Z世代」は、オープンなコミュニケーションを好むものの、主体性に欠けるという特徴があります。実際に、Z世代の「強み/弱み」の調査で、

「主体性や当事者意識が低く、積極的に発信ができない」

という弱みを持つことが明らかになっています。

にもかかわらず、企業側の就活生や新入社員に求める資質のダントツ1位が「主体性」(2位が実行力、3位が問題解決力)。ですから経営トップみずからが意識を変えないとダメ。

先述した企業では、経営陣が毎日のようにSNSで交流していても、リアルで会い、膝を突き合わせてコミュニケーションをとることを大事にしています。そうすることで、徐々に新入社員からの不満や意見を吸い取ることができるようになりました。遠慮なく自分のアイデアをぶつけてくる若手社員も増えたと言います。

日本には、優秀な若手社員がゴロゴロいる「タピオカ企業」がたくさんあります。

日本経済を支えてきた――かつて若者たちの憧れであった――そのような企業にこそ、抜本的な体質改善が求められています。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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