韓国で流行の「ハヌル=空ショット」騒動。愛犬家たちの意見対立をさらに詳しく
本日放送の朝の情報番組『スッキリ』(日本テレビ)でも取り上げられていた韓国の「ハヌル・ショット」。筆者も番組内でコメントさせていただいたが、もう少し詳しく紹介したい。
そもそもハヌルとは日本語で「空」という意味。ショットは文字通り写真のことだ。日本で人気の美女ゴルファーのキム・ハヌルや人気女優の中にも「ハヌル」がいるが、それら美女たちの写真を意味する言葉ではない。
韓国でも増える愛犬家たちだが…
愛犬や飼い猫などを宙に浮かせて空と一緒に撮った写真のことを「ハヌル・ショット」と呼ぶ。日本風に言えば「空ショット」というわけだが、この言葉が先月ぐらいから急に注目を集めるようになった。
インスタグラムやフェイスブックといったSNSで「#ハヌル・ショット」と入力すれば、一時は数万件のヒットを記録したほどだ。
ただ、それがちょっとした波紋を呼んでいる。「子犬を投げた写真、“ハヌル・カットは虐待?」(『マネートゥデイ』)、「SNSで人気の“ハヌル・ショット”、動物愛ではなく動物虐待」(『UPIニュース』)とされているのだ。
そもそも韓国には愛犬家も非常に多く、仁川空港で乗客の飼い犬が射殺された際には、非常に大きな批判が続出したこともあった。
(参考記事:「飼い主には一生のトラウマ」乗客の愛犬を射殺した仁川空港に批判続出!!)
韓国のシンクタンクである『KB金融経営研究所』の「2017年伴侶(ペット)動物養育実態調査」によると、韓国でペットを飼っている世帯は約590万世帯(全体の30・9%)と推測されており、そのうち82%が犬だと言われている(猫は16%)。
愛犬家の中にはインスタグラムやSNSの利用者も多い。ちなみに韓国のネット利用リサーチ会社であるDMCメディアが発表した『2017年ソーシャルメディア利用形態および広告接触分析』によると、韓国のインターネット利用者の68・7%がインスタグラムを利用していると言われている。
ショッキングな動物虐待との指摘
そんなインスタグラム利用の愛犬家たちが、愛犬のベストショットを次々とアップ。「いいね」や「かわいい」という共感を得ようとするあまり流行り出したのが“ハヌル・ショット”というわけだが、それが一方の側から見ると動物虐待行為に映るわけだ。
韓国ではこれまでも飼い犬にまつわるショッキングなニュースが度々報じられてきた。一昨年には迷子になった愛犬が近隣住人に食べられるという、とんでもない事件が起こっているが、動物愛護団体からすると明らかな虐待行為にしか映らないというわけだ。
(参考記事:「迷子になった愛犬が食べられた…」飼い主を横目に近隣住人が“犬食パーティー”の恐怖)
韓国の動物保護団体である『動物救助119』の代表者も韓国メディアの取材にこう言っている。
「ハヌル・ショットはSNSで関心を引き付けようとする行為が悪い方向に作用している。犬に加害を加えようと意図しているわけではないだろうが、動物の気持ちを理解していない行動だ。宙に投げられた子犬たちは恐怖心に襲われているはずだし、間違って落としてしまったら、それこそ子犬はケガを負う。明らかな動物虐待だ」
「可愛がっているのに心外」
もっとも、ハヌル・ショットをアップする愛犬者たちにも言い分があるらしい。
「ペットとのふれあいの方法は人それぞれなのでは?」「愛するペットとの思い出を撮っただけ」「動物虐待なんて過剰反応」などの声がSNSで出始めた。
近年、韓国では金を惜しまぬ愛犬家も増えているが、そうした人々の中からも「高く上げていないし、安全対策も行なっている」「普段どれだけ可愛がっているかも知らずに写真だけで動物虐待と決めつけられるのは心外」との声も上がっている。
(参考記事:愛犬家たちの行きすぎた愛情!? 韓国で人気の“ワンちゃん幼稚園”の一日とは)
こうしたネット上の反応を「動物虐待VS過剰反応…犬のハヌル・ショットを巡って甲論乙駁」(『世界日報』)と、韓国メディアも注視している状態だ。
ちなみに韓国大統領府のホームページに設置されている「国民請願」には、「子犬とのハヌル・ショット行為をする人々たちへの強力処罰を要求します」「ハヌル・ショット禁止の法律を作ってください」など、ハヌル・ショットにまつわる書き込みが5件ほどあるが、署名の数はまだ20万人以上には達していない。
いずれにしても何かと物議を呼ぶハヌル・ショット。インスタ映えがエスカレートすると、こういったトラブルが起きることはどこの国でも同じなのかもしれない。