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外国人客が旅館代未払いで騒動 なぜ日本には「後払い」の旅館があるの?

とらべるじゃーな!穴場ずらし旅、愛好家

宿泊経験500泊。関東圏の穴場ずらし旅の愛好家、とらべるじゃーな!です。

「外国人観光客が『未払いで勝手に帰ってしまいました』長野の温泉の悲痛投稿が拡散 警察捜査も」のニュースが話題となっています(Yahoo!ニュース)。

長野を走る長野電鉄の須坂駅から送迎バスで向かう、山里にある8室の中規模温泉旅館でのできごとです。

なぜ「後払い」の旅館が多いの?

ある旅館のフロント
ある旅館のフロント

このできごとを受け、SNSで話題となっていたのが、なぜ「後払い」なのか?ということ。確かに前払いの仕組みなら、このようなトラブルは防げます。

筆者の経験(約500泊)の範囲で言えば、日本では、旅館は後払いがメイン、ビジネスホテルは前払いが多い印象です。

最近は減ってきましたが、旅館の冷蔵庫には飲み物が入っていることがあります。利用した場合、費用が発生します。

また、旅館での夕食は、初めにお酒の注文の有無を聞かれることが多く、お酒を注文する方もいます。

このように、旅館では滞在中の費用が発生するケースがあるため、出発時の後払いの方が、都合が良いと言えます。

また、旅館は観光で利用されることが多く、到着時は大きな荷物を持って疲れている人が多くいます。記帳程度の簡単な手続きで、スムーズに部屋や温泉に案内したいという旅館側の気遣いもあるかも知れません。

ビジネスホテルは前払いが大半

一方、ビジネスホテルは前払いが大半。

これは、基本的に夕食の提供がないためお酒の注文が発生せず、滞在中の追加費用も自動販売機で済むことが多いため、チェックイン時の前払いの方が、効率が良いからと言えます。

また、ビジネスマンは、到着時より出発時に急いでいるケースが大半。支払いや、領収証の準備をチェックイン時に回すことで、特定の時間に集中しがちな、朝のチェックアウトをスムーズにする狙いもあります。

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対応が分かれる本格派ホテル

見てきたように、旅館は後払い、ビジネスホテルは前払いが基本と言えますが、対応が分かれるのが本格派のホテルです。

写真のホテルのように、プールやカフェ、レストランなどを備える「宿泊に特化していない」総合的な設備を持つホテルでは、室料のみ先払い、全てまとめて後払い、チェックインイン時に宿泊費プラスアルファの宿泊前受け金を預ける、チェックイン時にクレジットカードのコピーを預けるなど、対応が分かれています。

ホテル側としては、手ぶらで館内の施設や飲食を使いやすいように、様々な工夫をこらしているようです。

一方、館内に特別な施設やレストランがないホテルや、近年増えてきた「宿泊特化型のホテル」では、ビジネスホテル同様、前払いが目立ちます。

外国人客が旅館代未払いの旅館

外国人客が旅館代未払いというトラブルがあった旅館では、後払い制だったようです。

確かに先払いにすれば、代金のトラブルは防ぐことができますが、旅館としてはスムーズに部屋に案内したいところでしょうし、夕食時のお酒の注文もあれば有難いところだと思います。

海外のホテルでは、チェックインイン時に宿泊費プラスアルファの宿泊前受け金(デジポットと呼ぶ)を預ける、またはクレジットカードのコピーを預けるという形式が多いようです。

筆者としては、日本旅館であれば、簡単な手続きですぐに部屋に入り、お着き菓子でくつろぎ、浴衣に着替えて温泉へというイメージを持ちます。

「後払い」は日本ならではの観光資源のようにも感じられ、手続きに工夫し(厚労省の指導内容)、後払いの伝統が続くと良いと思っています。

余談ですが、旅館側としては旅券(パスポート)のコピーを取ると、何か相手を信用していないと取られることを躊躇(ちゅうちょ)するのかも知れません。しかし多人種で契約重視の海外では、お互いにルールを破るはずがないのだから、コピーは何ら問題がない(むしろ遠慮する方が、相手を疑っていることとなる)という考え方を取るとされています。
逆に日本では、出発時の取り損ねを想定した、宿泊費プラスアルファの宿泊前受け金は、互いの信頼関係重視の風土に合わないとも言えます。

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穴場ずらし旅、愛好家

宿泊歴500泊。関東周辺の穴場★ずらし旅スポットを紹介。日本テレビ(2023年)、TBSテレビ(2024年)に旅の専門家として登場。Yahoo!ニュースエキスパート公式旅行ライター(2023年7月企画賞)。JTB運営・地理旅行検定取得済み。東京都在住。

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