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4年ぶりに減少に転じた地方教育費から透けてみえるのは自治体の〝怠慢〟なのか?

前屋毅フリージャーナリスト
(写真:イメージマート)

 教育のために地方公共団体が支出した経費である地方教育費が4年ぶりに減少に転じた。そこから、教育現場の深刻な状況が浮かびあがってくる。

|なぜ人件費が減少するのか

 教育のために地方公共団体が支出した経費が地方教育費で、その状況調査を毎年、文科省が行っている。「2022年度地方教育費調査」の中間報告が、今年6月28日に公表された。

 それによると、2022年度に支出された地方教育費総額は、前年度比3.5%減の16兆2056億円と、昨年度までの増加傾向から一転して減少となっている。そのなかの学校教育費も、13兆6358億円と前年度比で3.7%の減である。額にすると、5272億円の減少だ。

 この学校教育費のうち人件費は、9兆1640億円で前年度より1043億円減少している。学校種別でも、小学校、中学校、高等学校のすべてで、前年度比1~2%ていどの減少だという。

 深刻な教員不足は、さまざまに取り上げられている。それを解消するために、本来なら教員免許がなければ教壇に立てないはずにもかかわらず、免許がなくても教員になれる制度を導入している自治体も少なくない。高齢の元教員も学校現場に呼ばれている。さらに教員の負担を軽減するために、事務仕事などを手伝うスクール・サポート・スタッフや、部活動に外部指導員を招く制度としてとりいれている自治体も多い。

 こうした施策が効果的に実行されていれば、人件費は大幅に増加していてもおかしくないはずだ。にもかかわらず前年度比で減少してしまったということは、効果的に運営されていない実態をあらわしているといえる。

 人件費減少から透けてみえるのは、深刻な人手不足でしかない。「教員免許がなくても先生になれますよ」と呼びかけてみても、部活動の外部指導員を募集してみても、簡単には人が集まってこないのが実態なのだ。人が集まってこないから、支出される人件費も増えていかない。

|声をかけるだけで人は集まらない

 ただ声をかけるだけでは、人は集まってはこない。それは、分かりきったことだ。しかし自治体は、その分かりきったことをやっているにすぎないのではないだろうか。だから、人が集まらず、学校現場での人手不足が続いている。

 本気で人を集めるには、好条件を提示することも大事な要件のひとつといえる。それには、当然ながら予算が必用だ。人件費は増えるはずで、減少するなどありえない。

 学校教育費での人件費の減少は、声はかけるけれどもカネはかけない自治体の取り組み姿勢のあらわれでもある。「声もかけるがカネもかける」姿勢への転換を期待したい。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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