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チョコレートアレルギーってありますか?#こどもをまもる

堀向健太医学博士。大学講師。アレルギー学会・小児科学会指導医。
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バレンタインデーが近づくと、『チョコレートアレルギー』に関して尋ねられることが増えてきます。チョコレートはカカオ豆から作れますので、カカオ豆のアレルギーを心配されるのですね。

実は、カカオ豆アレルギーはそれほど多いアレルギーではありませんが、チョコレートには注意する点もあります

今回は、アレルギーの視点から考えてみたいと思います。

ナッツ類アレルギーは増えている

近年、木の実類(ナッツ類)アレルギーは増えています[1]。

文献1を元に、イラストACの素材を使用して筆者作成
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そして、日本人の食物アレルギーは鶏卵、牛乳、木の実類の順になっていて、木の実類アレルギーは13.5%とされています[1]。

文献1を元に、イラストACの素材を使用して筆者作成
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チョコレートの原料であるカカオ豆も木の実類ですよね。

では、カカオ豆のアレルギーも多いのでしょうか?

カカオ豆アレルギーは、木の実類アレルギーの中では少ない

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最近報告された研究結果からは、日本人の木の実類アレルギーの中で圧倒的に多いのがクルミで56.5%を占め、カシューナッツ、マカデミアナッツ、アーモンドと続きます。

カカオ豆アレルギーの頻度は少なく、その統計結果からは、819例中1例、すなわち0.12%に過ぎませんでした[1]。

文献1を元に、イラストACの素材を使用して筆者作成
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もちろんカカオ豆アレルギーの方が全くいないという意味ではありません。

2019年に、実際にカカオ豆パウダーなどを食べてもらうとはっきり症状があるという、3人のカカオ豆アレルギーの方が報告されています[2]。

そして、別の心配ごともあります。

チョコレートに含まれる微量のアレルゲン

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それは、チョコレートに含まれる別のアレルゲンです。

もちろん、ミルクチョコレートやピーナッツチョコレートは頭に浮かぶでしょう。

しかし、それだけではありません。

実はチョコレートアレルギーかもとされるケースに、微量に混入したピーナッツやカシューナッツで症状を起こしうることがわかっているのです[3]。

たとえば、カナダにおいて、北米産と欧州産のチョコレートバーに含まれるピーナッツタンパク質を調べた報告があります[4]。

すると、特に東欧産の製品からは高率にピーナッツのタンパク質が検出されたそうです[4]。

この報告は2003年の報告ですし、東欧産を避ければ良いというわけでもありません。しかし注意は必要ということですね。

さらに、別の配慮も必要です。

チョコレートと金属アレルギー

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そしてチョコレートに関しては別の問題もあります。

それが金属アレルギーです。

チョコレートは金属であるニッケルを比較的多く含みます

金属アレルギーは、身につけている金属製品、たとえばベルトのバックルなどから汗で溶け出し、触れている部分に接触皮膚炎(かぶれ)を起こすことがあります。

そしてニッケルアレルギーのある方は、ニッケルを多く含む食品、すなわちチョコレートを食べると例えば皮膚炎を起こすことがあるのです[5]。

さて今回は、バレンタインデーが近づいていることもあり、カカオ豆アレルギーと、微量に含まれる可能性のある他の木の実類、そしてニッケルアレルギーに関して簡単に解説してみました。

バレンタインデーを楽しみにされている方も多くいらっしゃると思います。皆が心配なく過ごせるために、この記事がなにかのお役にたてば嬉しく思います。

「#こどもをまもる」は、Yahoo!ニュースがユーザーと考えたい社会課題「ホットイシュー」の1つです。

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特集ページ「子どもの安全」(Yahoo!ニュース):https://news.yahoo.co.jp/pages/20221216

この内容を、音声ラジオVoicyでも簡単に解説しました。お時間がない方はどうぞご覧くださいませ。

【参考文献】

[1]令和3年度 食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書(2023年2月5日アクセス)

[2]Journal of allergy and clinical immunology: In practice 2019; 7:2868-71.

[3]Food Addit Contam 2007; 24:1334-44.

[4]J Food Prot 2003; 66:1932-4.

[5]Pediatric dermatology 2011; 28:335-6.

医学博士。大学講師。アレルギー学会・小児科学会指導医。

小児科学会専門医・指導医。大学講師。アレルギー学会専門医・指導医・代議員。1998年 鳥取大学医学部医学科卒業。鳥取大学医学部附属病院・関連病院での勤務を経て、2007年 国立成育医療研究センターアレルギー科、2012年から現職。2014年、米国アレルギー臨床免疫学会雑誌に、世界初のアトピー性皮膚炎発症予防研究を発表。医学専門雑誌に年間10~20本寄稿しつつTwitter(フォロワー12万人)、Instagram(2.4万人)、音声メディアVoicy(5600人)などで情報発信。2020年6月Yahoo!ニュース 個人MVA受賞。※アイコンは青鹿ユウさん(@buruban)。

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