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ウクライナ軍、ロシア軍の12個レンズ搭載のレアな監視ドローン「Kartograf」5月に2機撃破

佐藤仁学術研究員・著述家
12個のレンズ搭載の監視ドローン「Kartograf」(ウクライナ軍提供)

2023年5月に入ってからロシア軍の監視ドローン「Kartograf」が2機、ウクライナ軍によって撃破されている写真をSNSで公開していた。「Kartograf」はロシア製の12個のレンズを搭載している監視ドローン。

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。また民生用ドローンも監視・偵察のために両軍によって多く使用されている。

ロシア軍は主にロシア製の監視ドローン「Orlan-10」で上空からウクライナの監視・偵察を行っている。たまに「Eleron-3」や「ZALA 421-16Е2」、「Orlan-30」でも偵察を行っている。2022年11月に入ってからは「Granat-4」、「Korsar(Корсар)」「Supercam S150」というロシア製の偵察ドローンも破壊されていた。またロシア軍は、ロシア製の攻撃ドローン「KUB-BLA」や「ZALA KYB」、イラン政府から提供された攻撃ドローン「シャハド136」で攻撃を行っている。

ロシア製の12個のレンズを搭載している監視ドローン「Kartograf」は2022年9月、2023年3月に撃破された写真が公開されていた。イラン製軍事ドローン「シャハド136」、ロシア製監視ドローン「Orlan-10」が撃破された残骸の写真はよく公開されているので頻繁に見かける。「Kartograf」が破壊された写真を見かけることはほとんどない。

ロシア軍は以前は監視ドローンはもっぱら「Orlan-10」だった。「Kartograf」が撃破された写真はほとんど公開されていなかった。そろそろロシア軍の監視ドローン「Orlan-10」の在庫が枯渇してきたのかもしれないという見方を示す欧米のシンクタンク研究員やOSINT(オシント:オープン・ソース・インテリジェンス)をしている人たちは多い。このような見解はロシア軍がめったに使用しないドローンを使用するたびによく出ているが、それでもロシア軍の主要な監視ドローンはずっと「Orlan-10」だった。

ドローンは攻撃用も監視用も探知したらすぐに迎撃して破壊してしまうか、機能停止させる必要がある。上空のドローンを迎撃するのは、電波を妨害(ジャミング)してドローンの機能を停止させるいわゆる"ソフトキル(soft kill)"と、対空機関砲のように上空のドローンを爆破する、いわゆる"ハードキル(hard kill)"がある。5月に入ってから撃破されたロシア軍の監視ドローン「Kartograf」も2機ともにハードキルで破壊されている。

特に偵察ドローンは発見したら、すぐに迎撃しなくてはならない。偵察ドローンは攻撃をしてこないから迎撃しなくても良いということは絶対にない。偵察ドローンに自軍の居場所を察知されてしまったら、その場所にめがけて大量のミサイルを撃ち込まれてしまい大きな被害を招きかねない。そのため偵察ドローンを検知したら、すぐに迎撃して爆破したり機能停止させたりする必要がある。回収されて再利用されないためにもドローンは上空で徹底的に破壊しておいた方が効果的である。

▼撃破されたロシア軍の監視ドローン「Kartograf」(2023年5月6日)

▼撃破されたロシア軍の監視ドローン「Kartograf」(2023年5月3日)

▼撃破されたロシア軍の監視ドローン「Kartograf」(2023年3月)

▼撃破されたロシア軍の監視ドローン「Kartograf」(2022年9月)

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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