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年俸調停を申請の33人中7人は、選手と球団の申請額に100万ドル以上の差。最大差は250万ドル

宇根夏樹ベースボール・ライター
ボー・ビシェット(トロント・ブルージェイズ)Sep 14, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)とホアン・ソト(サンディエゴ・パドレス)をはじめ、年俸調停の申請権を持っていた100人以上の選手は、球団と合意に達し、年俸調停を回避した。ちなみに、大谷の年俸は3000万ドル、ソトは2300万ドルだ(「調停回避の年俸がホアン・ソトより高かった選手は、その後どんな契約を得たのか。大谷翔平は来オフにFA」)。

 年俸調停そのものについては、2年前にこちらで簡単に説明した。

「大谷翔平の「年俸調停」についてゼロから知りたい人のために」

 一方、申請期限までに合意できなかった選手は、33人を数える。彼らは、年俸調停を申請した。例えば、エンジェルスの場合、9人中3人がそうだ。ハンター・レンフローの場合、レンフローとエンジェルスの申請額は1190万ドルと1125万ドル(65万ドル差)。ジオ・アーシェラは1000万ドルと840万ドル(160万ドル差)、ルイス・レンヒーフォは230万ドルと200万ドル(30万ドル差)だ。年俸調停を申請しても、調停前に合意するケースは多いが、調停まで進むと、年俸はどちらかの金額となる。

 33人のうち、アーシェラを含む7人は、選手と球団の申請額に100万ドル以上の差がある。

筆者作成
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 なかでも、カイル・タッカー(ヒューストン・アストロズ)とボー・ビシェット(トロント・ブルージェイズ)は、その差が大きい。2人とも、選手と球団の申請額は750万ドルと500万ドル。隔たりは250万ドルだ。また、選手の申請額からすると、球団の申請額はその3分の2ということになる。次に金額の開きが大きい、200万ドル差のテオスカー・ヘルナンデス(シアトル・マリナーズ)は、1600万ドルと1400万ドルなので、マリナーズの申請額は、テオスカーの申請額の8分の7だ。

 タッカーもビシェットも、今オフ、初めて申請権を手にした。2022年の年俸は、76万4200ドルと72万3550ドルだった。

 タッカーはライトを守り、2年続けて30本のホームランを打っている。2022年は25-25を記録した。遊撃手のビシェットは、2年連続20本塁打以上とリーグ最多安打だ。2021年は191安打、2022年は189安打を記録した。

 いずれも、球団が長期の延長契約を交わしてもおかしくない選手だ。実際、両球団はそうしたいと思っているらしい。MLB.comのマーク・フェインサンドらによると、アストロズとタッカー(の代理人)は、昨オフに契約延長の交渉を行っていたという。ビシェットに関しても同様だ。昨年の開幕直後、ニューヨーク・ポストのジョン・ヘイマンは、ブルージェイズがビシェットに複数年の契約を申し出たが、合意には至らなかった、と報じている。このままいくと、2人とも2025年のオフにFAとなる。

 なお、タッカーとビシェットは、チームメイトのなかに、彼らを上回る――少なくとも打撃においては――若きライジング・スターがいる点も共通する。2022年のMVP投票3位と2021年の2位、どちらも大谷に次ぐ順位のヨーダン・アルバレスブラディミール・ゲレーロJr.だ。

 昨年6月、アストロズはアルバレスと6年1億1500万ドル(2023~28年)の延長契約を交わした。ブルージェイズとゲレーロJr.は、昨オフに続き、今オフも年俸調停を回避。年俸は、790万ドルから1450万ドルにアップした。ゲレーロJr.も、FAになるのは2025年のシーズン終了後だ。

 アルバレスの延長契約については、こちらで書いた。

「6年1億1500万ドルの契約は、年俸調停前の歴代4位。それより高額だった3人は…」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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