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10年に一度のヒット「バスチー」 ローソンのスイーツ好調の秘密

笹木理恵フードライター
5ヵ月間で累計2,000万個を販売した「バスチー」

10年に一度の大ヒット!「バスチー」が絶好調のローソン

(画像提供/ローソン) 「バスチー バスク風チーズケーキ」(税込215円)。鮮やかなパッケージデザインも販売を後押しした
(画像提供/ローソン) 「バスチー バスク風チーズケーキ」(税込215円)。鮮やかなパッケージデザインも販売を後押しした

ローソンのオリジナルスイーツ「バスチー」の勢いが止まらない。今年3月の発売から3日間で100万個を販売し、2019年8月現在で累計販売数2,000万個を突破。18週連続でデザートの売上高1位を維持し、売上個数においても、不動の人気ナンバーワン商品「大きなツインシュー」を抑えて首位に躍り出る週もあるという。

ローソンのスイーツ開発担当者さえ、「10年に一度のヒット商品」と評価する「バスチー」。この10年間の間にも、さまざまなコンビニスイーツが開発され、ヒットを飛ばしたものも少なくはない。そんなコンビニスイーツは、どんなコンセプトで誕生し、開発されているのか。ローソンの商品開発の舞台裏を取材した。

コンビニスイーツの買い手は、この10年で男性から女性へ。今後は、「新感覚スイーツ」を強化

(画像提供/ローソン) ローソンのスイーツの代表格と言えばこれ。現在も安定した人気を誇る「プレミアムロールケーキ」(税込150円)。
(画像提供/ローソン) ローソンのスイーツの代表格と言えばこれ。現在も安定した人気を誇る「プレミアムロールケーキ」(税込150円)。

一般に「コンビニスイーツ」という場合、多くは冷蔵ケースに並んでいる各社オリジナルブランドのチルドスイーツのことを指す。毎週、新商品が5~6品は発売されるため、年間を通すと約250品のスイーツが開発されていることになる。2009年、オリジナルブランドの「Uchi Cafe' SWEETS」(以下、「ウチカフェスイーツ」)が立ち上がり、同年11月には代名詞の「プレミアムロールケーキ」が大ブレイク。この10年でスイーツの購買層は逆転し、現在は6割を女性が占めるようになっている。

ローソンの場合、チルドスイーツの開発チームは3人。活発にコミュニケーションを取りながら開発しているという。その一人、中食商品本部・デイリー部チーフマーチャンダイザーの平原さやかさんにお話を伺った。

(画像提供/ローソン) 「どらもっち あんこ&ホイップ」(税込180円)。もちもちの薄皮生地に、あんことホイップがぎっしり。
(画像提供/ローソン) 「どらもっち あんこ&ホイップ」(税込180円)。もちもちの薄皮生地に、あんことホイップがぎっしり。

「ウチカフェスイーツ」のコンセプトは、「いつでも、おうちがカフェになる。」。常時30品ほどをラインアップするが、そのうちとくに強化しているのが、「新感覚スイーツ」のカテゴリー。「バスチー」や、「どらもっち」、「サクバタ」などの商品がこれにあたる。「昨今、お客様に求められているのは、楽しさやワクワク感。とはいえ、いちから新しいスイーツを生み出すのではなく、シューやチーズケーキ、プリンなど、誰もが知っているスイーツをベースにしながら、それらを融合したり、いくつかの食感を混ぜて、これまでにない味を楽しんでいただくことをめざしています」(平原さん)。

平原さんは、14年前にスイーツの開発に携わった経験があり、その後「グリーンスムージー」の開発を担当。現在は、チルドスイーツ全体に関わりつつ、おもにチルド和菓子を担当している。14年前というと、まだ「ウチカフェスイーツ」のブランドも立ち上がっておらず、「コンビニスイーツ」という言葉すら浸透していなかった頃。スイーツの購買層は約6割を男性が占めており、平原さんも、メンズパフェのような男性向けの商品を多く手掛けていたという。「近年は、それぞれのターゲットをより意識した商品開発を行っています。以前は、ターゲットを幅広く設定していたために、何でもあるように見えて結局は全員が同じ商品ばかりを購入してしまう、というループに陥っていたので、今後はターゲット別に“刺さる”商品を置くことで、選ぶ楽しさがあるような売り場を目指しました」(平原さん)。

(画像提供/ローソン) 「サクバタ サクッとバターサンド ベリベリチーズ」(税込230円)。ギフトとしても人気のバターサンドを、コンビニ仕様にアレンジ。
(画像提供/ローソン) 「サクバタ サクッとバターサンド ベリベリチーズ」(税込230円)。ギフトとしても人気のバターサンドを、コンビニ仕様にアレンジ。

約30品のアイテムのうち、和菓子は5~6アイテムにとどまり、洋菓子が圧倒的に多い。これも、昨今のコンビニスイーツの傾向だ。「生クリームを使った洋菓子を食べて育ってきた世代が増えてきたため、生クリームが好きなお客様が多いようです。純和風の和菓子となると間口が狭くなってしまい、積極的に販売していくのが難しくなっています。生クリームなどを使った「和洋折衷」の菓子となると、若い世代にも人気がありますし、冷蔵状態で販売するチルド和菓子の優位性を生かすのにも有効です」(平原さん)。

また、シュークリームやクレープのような「手に持って気軽に食べられる」ワンハンドスイーツは、もともとコンビニが得意としているジャンルだが、最近は新感覚シューの投入によりさらに人気が加速しているという。

王道スイーツは、時代の嗜好に応じて年2回ブラッシュアップ

(画像提供/ローソン)「クラシックプリン」(税込200円)。現行のプリンは、卵感たっぷり、かための食感。ほろ苦いカラメルと生クリームでリッチな味わいに。
(画像提供/ローソン)「クラシックプリン」(税込200円)。現行のプリンは、卵感たっぷり、かための食感。ほろ苦いカラメルと生クリームでリッチな味わいに。

一方で、シューやプリン、チョコやチーズを使った王道のスイーツは、コンビニスイーツとしてはつねに扱っている商品だが、昨今、プリンのトレンドが「とろとろなめらか系」から「昔ながらの固めプリン」へとシフトしているように、時代に応じて好まれる味の傾向は変わってきている。現代に求められる味に合わせて定番スイーツをブラッシュアップすることも、商品開発の大きな仕事だ。そこでローソンでは、大きく年2回に、スイーツ以外のジャンルも含め定番商品のリニューアルを敢行している。「生クリームの味わいも、一昔前は乳風味が濃厚な、純生クリームの味を好まれるお客様が多かったのですが、昨今はそれだと少し重たいと感じるようになり、ミルク感がありながらも後味がすっきりとした味を好まれるようになりました。定番スイーツはずっと残っていくので、どういうかたちで表現すれば今受けるのか、ということはつねに意識しています」(平原さん)。

ローソンでは、「バスチー」に次いで5月から発売されている「どらもっち」がシリーズ累計で約700万個、6月発売の「サクバタ」がシリーズ累計で約300万個を販売。ともに人気シリーズとして成長しつつある。それに伴い、スイーツカテゴリーの売上高は、前年比を平均25%増で推移しており、スイーツを目的にした新たな顧客の獲得にも貢献しているという。2019年秋冬以降も、毎月「新感覚スイーツ」を発売していくというローソン。今後はどんな“新感覚”の味を楽しませてくれるのだろうか。

フードライター

飲食業界専門誌の編集を経て、2007年にフードライターとして独立。専門誌編集で培った経験を活かし、和・洋・中・スイーツ・パン・ラーメンなど業種業態を問わず、食のプロたちを取材し続けています。共著に「まんぷく横浜」(メディアファクトリー)。

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