たとえクールビズでも、営業は「半袖シャツ」を着ないほうがいい
2005年から始まった「クールビズ」も、そろそろ10年を迎えます。室温「摂氏28度」でも能率的に仕事ができるようにと考えられた「ノーネクタイ、ノージャケット」のクールビズの発想は、当時から多くのサラリーマンに受け入れられ、瞬く間に普及しました。
おそらく誰もがお気づきでしょうが、クールビズが普及したのは、その服装のほうが「ラク」だからです。たとえば、環境のために、冷房の温度を上げることと同時に、冷房がかかっている時間を減らしましょうと環境省が打ち出したらどうでしょうか。オフィス内の労働時間を減らすために「残業」を1時間でも2時間でも減らすのです。これも立派な環境対策です。しかし、多くのサラリーマンは従わないでしょう。クールビズは「ラク」だから受け入れるわけであり、エコ対策は所詮「建前」だからです。実際に、室温を「摂氏28度」以下にしているのにもかかわらず、軽装しているサラリーマンはたくさん存在します。
私は年間100回以上、セミナーや講演を実施しています。平日は毎日のように「背広」を着た男性管理職の方々の前でマイクを持って話しています。(余談ですが、日本企業に女性管理職がほとんどいないことを毎日のように感じています)6月を過ぎると、セミナー受講者たちは、いっせいに「ノージャケット、ノーネクタイ」となり、講師から見える風景は一変します。とはいえ、会場の室温を「摂氏28度」まで上げられるかというと、ほぼ不可能です。受講者の中から「暑い」「クーラー効いてないのか」と不満が続出し、机の上に置いてある資料やクリアファイルを団扇代わりにしてパタパタやりはじめるからです。室温を上げてしまったら、とてもセミナーに集中できる環境になりません。
エコ対策であろうが、なかろうが、クールビズの流れはもう止められそうにないでしょう。とはいえ「どうして人は「制服」に弱いのか?」に書いたとおり、見かけの「強さ」は、説得効果に大きく影響します。仕事上、人を説得・リーディングすることが多い人(管理職や営業職)は、服装はとても重要なアイテムです。「ラク」だからといって軽視するわけにはいきません。服装は「ラク」になっても、部下やお客様が動いてくれなければ、本当の「ラク」は手に入らないからです。
歴史的に見ると、もともと下流階級ほど「薄着」をし、上流階級になるほど「厚着」する傾向があり、これはスーツ発祥の地、イギリスをはじめとした西欧のみならず、世界の広範囲で見られるものです。つまり洋服を着込むのはパワーがある証拠とみなされてきたのです。人間に対する心理効果は、人間が進化・退化しない限り、不変のもの。服装に対しても、同じことが言えますね。
クールビズの基本は3つ。「ノーネクタイ」「ノージャケット」そして「半袖シャツ」です。(2012年に環境省による服装の可否参照。スーパークールビズを除く)この中で、最も気にしたいのは「半袖シャツ」でしょう。「ドレス・フォア・サクセス」の著者であるジョン・モロイの調査によると、リーダー、管理職が「半袖シャツ」を着ている会社では、そうでない会社に比べ、スタッフの遅刻が「12%」多く、昼食から遅れて帰ってくる率も「13%」多かったそうです。つまりは、半袖シャツの上司は軽く見られる傾向にある、ということです。
私は営業コンサルタントです。「エコ対策」で考えた場合、残酷なことを言うと、外回りをしている営業にクールビズは関係ありません。(社内にばかりいる営業には関係あるかもしれませんが)とはいえ、ここまで日本社会においてクールビズが普及している現在、真夏にジャケットとネクタイでビシッと決めているサラリーマンを見ると「暑苦しい」と思われることもあるかもしれません。(お客様次第ですが)
そこで私が提案したいのは、せめて「半袖シャツ」はやめる、ということです。特に営業は、です。以前と比べ、「半袖シャツ」を着るサラリーマンを見慣れたせいで、「半袖シャツのほうが涼しげに見えていい」「女性スタッフにも好評だ」という意見も多数あるのは知っています。しかし前述したとおり、人に対する心理効果という意味では今も昔も不変です。ファッション業界が扇動するのは、経済効果を狙っているからです。一度「半袖シャツ」を着てしまうと、なかなか「長袖シャツ」に戻せなくなりますよね。どうしても「半袖シャツ」をやめられないという営業は、お客様の前にいるときだけジャケットを着用するとか、工夫してみましょう。(それまた暑そうですが)
※ あくまでも「エコ対策」と「説得効果」に関する意味合いでクールビズの服装に言及しました。