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マライア・キャリー:大晦日ライブで「ダンサーは踊るのをやめて私を舞台から下ろしてくれるべきだった」

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
大晦日のNYライブに出演したマライア・キャリー(写真:ロイター/アフロ)

大晦日のタイムズスクエアのライブで大恥をかいて以来、「メディアやソーシャルメディアからしばらく距離を置く」と宣言していたマライア・キャリーが(マライア・キャリー、大晦日ライブの失態を語る。「あれは私に恥をかかせるチャンスだった」)、復帰を始めている。先週水曜日には、深夜トーク番組「Jimmy Kimmel Live!」に出演し、新曲「I Don’t」を、YGとデュエット。生のバンド演奏とバックシンガーの前で歌ったこのパフォーマンスで、キャリーは「汚名を挽回した」と報じられている。

そして昨日は、Rollingstone.comが、彼女のインタビュー記事を掲載した(http://www.rollingstone.com/music/features/mariah-carey-on-chaotic-new-years-performance-w467631)。このインタビューは、「Jimmy Kimmel Live!」に出演した翌日に、キャリーが最近ビバリーヒルズに借りた家賃月10万ドル(約1,130万円)の自宅で行われている。

キャリーは、レポーターに「あの大晦日のことは持ち出したくないんだけれど、そうはいかないわよね」と切り出し、あの時の状況について説明を始めたという。彼女の説明は、以前と同じで、リハーサルの時からイヤーピースがおかしいと指摘していたのに、製作のディック・クラーク・プロダクション(DCP)が何もしてくれなかったというものだ。歌詞が書かれたプロンプターも作動しなかった。先月、キャリーはツイッターで、「騒がしくて、とても寒くて、スモークマシンから煙が出ていて、大勢の人々が祝福しているタイムズスクエアで、歌手に、イヤーピースが作動せず、自分の声が聞こえない状態で歌えというのは、現実的ではありません」と述べている。このインタビューでも、「全世界にこれを説明するのは無理なのよ。この仕事をしていないから、わかってもらえないの。私に事務の仕事がわからないのと同じ。私には、そういうことができないから。私は本当に、現実社会で生き延びるのが不可能な人なの」とフラストレーションを述べた。

自分にはどうにもできない状況だったということも、あらためて強調している。「まるきりコントロールがきかない状況だった。もし、あそこまでめちゃくちゃじゃなかったら、私も何かすることができたわ。ダンサーたちも、踊るのをやめて、私をあのステージから連れ出してくれるべきだったのよ」と、Fワードを交えて語った彼女は、「本当にめちゃくちゃだった。あれはみんなのせいよ。リハーサルで出て行かなかった自分のせいでもある」と続けた。

キャリーは、先週にも、AP通信に対する映像インタビューで、「あのこと自体はそんなに気にしていないけれども、みんながわかってくれないことに腹が立っている」と、イヤーピースがなぜ大事なのかを説明している。「イヤーピースが作動していて、音楽が聞こえたら、アドリブなり、なんなり、やったでしょう。ダンサーたちは私をステージから下ろすべきだったのよ。彼らは何を考えていたのかしら」と、ここでもダンサーを責めた。それなのに攻撃されるのは自分だけだとし、「どうして私が犠牲者になって、中傷されなきゃいけないの」と不満をぶちまけてインタビューを終えている。

もうあの件は忘れてほしいと思いつつも、「あれは自分のせいではない」と全世界を説得せずにはいられないというのが、おそらく、今の彼女の本音だろう。だが、ニュースのサイクルが早い現代はとくに、どんな話だって、黙っていても人はやがて忘れてしまうもの。来月15日からは、ライオネル・リッチーと初めて組む「All the Hits」ツアーが始まる。このツアーを成功させてみせることが、本当の意味での挽回だ。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「シュプール」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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