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ジェフ・ブリッジス、アンソニー・ホプキンスの家も全焼。トム・ハンクスの家は無事:L.A.の山火事

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
アンソニー・ホプキンスもL.A.の家を失った(写真:Splash/アフロ)

 L.A.で起きている複数の山火事が、とどまるところを知らない。

 すでに報じられている通り、この火事では、パリス・ヒルトン、マンディ・ムーア、ジェームズ・ウッズ、ビリー・クリスタル、アンナ・ファリス、ユージーン・レヴィらが自宅を失った。さらに、マイルズ・テラー、ジェフ・ブリッジス、アンソニー・ホプキンス、ジョン・グッドマン、ジェニファー・グレイ、コビー・スマルダースらの家も焼け落ちたことがわかっている。

「トップガン マーヴェリック」のルースター役で大注目されたテラーの家は、7年前に結婚したモデルの妻ケリー・スペリーと、2023年、パシフィック・パリセーズに750万ドルで購入したもの。まだ住み始めてまもないマイホームは、すっかり形をなくしてしまった。

 ホプキンスは、パシフィック・パリセーズの家を600万ドルで購入。2018年のL.A.の山火事でも当時住んでいたマリブの家を失いそうになり、2000年にはやはり火事でロンドンの家を失うなど、彼はこれまでにも恐ろしい経験をしている。ただ、今週はイギリスに滞在していたため、避難の必要はなかったようだ。

 ブリッジスのマリブの家は、兄、妹と共に相続した、たくさんの思い出の宝庫。海を見下ろす4寝室の家だったが、完全に焼けただれてしまった。一方、スティーブン・スピルバーグとトム・ハンクスの家は、パシフィック・パリセーズにありながら、無事な模様。TMZが掲載した写真を見るかぎり、ふたりの家には損傷が見られない。

 また、火事から避難したと見られるハリソン・フォードが、ブレントウッドにある自宅の状況をチェックするべく、警察に守られて一時的に戻ってきた様子もパパラッチされている。実際のところ家の状態がどうだったのかは、わからない。ほかには、ジェイミー・リー・カーティス、マーク・ハミル、ジョン・レジェンド&クリッシー・テイゲン夫妻、デニス・クエイドらが避難をした。カーティスは、自宅は無事だったものの、教会を含め、近所の建物が破壊され、愛するコミュニティが大きな打撃を受けたとソーシャルメディアで報告している。

 一方、ヘンリー・ウィンクラーは、「ここL.A.に放火犯がいる。多くの人たちを苦しめた奴が、誰だかわからないほどめちゃくちゃにされますように」とX(旧ツイッター)に投稿。今回は、海に近いパシフィック・パリセーズ/マリブ、ハリウッド周辺、内陸のパサデナ/アルタデナ、ハリウッドからは山の向こう側にあたるスタジオシティ周辺など、離れたところで火事が起きたことから、「誰かの仕業なのではないか」という憶測もちらほら聞こえてきたのはたしかだ。しかし、あくまで憶測の域を出ず、証拠は何もない。

リーダーへの不信感や不満の声も

 市民たちが悲しみ、恐怖、不安に満ちた日々を送る中、リーダーに対する不信感や不満も高まっている。

 現地時間今週火曜日から風が強まり、乾燥した空気、雨がないせいで乾いた状態の植物と合わさって山火事の恐れが十分にあると言われていながら、ロサンゼルス市長カレン・バースは火曜日に予定通りガーナへの訪問を決行。予想された通りに火事が起き、慌てて水曜日にロサンゼルスに戻ってくると、バースは、空港で待ち受けた記者の質問をすべて無視した。カリフォルニア州では秋から冬にかけてほぼ毎年のように山火事が起きているにもかかわらず、昨年、あえて消防署の予算を削減したことでも、バースは批判されている。

 バースは、民主党下院議員を経て、2020年、ライバル候補者で不動産デベロッパー、リック・カルーソを制し、ロサンゼルス市長に就任。過去には共和党支持者だったビリオネアのカルーソは、多額のキャンペーン資金を懐から出したが、激しい争いの結果、バースが勝利をおさめた。バースを支持したハリウッドセレブには、ジェフリー・カッツェンバーグ、スピルバーグ、J・J・エイブラムス、ハミル、ナタリー・ポートマン、ジェーン・フォンダ、ケリー・ワシントン、アリッサ・ミラノなどがいる。だが、カルーソも、クリス・プラット、グウィネス・パルトロウ、キム・カーダシアン、イーロン・マスクらの支持を得ていた。

 今回起きている複数の火事の中でも、パシフィック・パリセーズ/マリブ周辺を襲ったパリセーズ・ファイアは、ロサンゼルスの歴史の中でも最大規模の山火事とされる。この非常事態を受けて、映画のプレミアや授賞式、アワードシーズンのイベントなどは軒並み中止または延期された。おそらく今回で終わりではないこの問題にバースをはじめとするリーダーたちがどのように挑んでいくのか、厳しい目が集まる。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「シュプール」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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