ブレイク・ライヴリーからセクハラで訴えられた男たちの言い分
「ふたりで終わらせる/IT ENDS WITH US」の主演女優ブレイク・ライヴリーと、監督で共演者のジャスティン・バルドーニの争いが、大変なことになっている。
大晦日、バルドーニは、ライヴリーの一方的な主張の片棒を担いだとして「ニューヨーク・タイムス」を訴訟、同じ日にライヴリーもバルドーニと彼の広報チームなどを正式に訴訟したことは、前回の記事にも書いた。ハリウッドでも前代未聞と言っていい大スキャンダルのここまでの経緯については、「今年最大のイメージダウンを受けたハリウッド女優、監督兼共演者を訴える。真の悪者はどちらなのか」と「ハリウッドのスキャンダル、さらに泥沼化。裏で糸を引いていた人物がいた」を参照していただきたい。
バルドーニの訴状は87ページにわたり、たくさんの情報が詰まっているため、前回の記事では、「ライヴリーを貶めるためのネガティブキャンペーンはしていない」、「パワーカップルであるライヴリーとライアン・レイノルズに映画を乗っ取られた」などについての彼の主張を中心にした。しかし、この騒動でライヴリーが業界内外から大きなサポートを得ているのは、ライヴリーがバルドーニと彼のビジネスパートナーで映画のプロデューサーでもあるジェイミー・ヒースから受けたセクハラに抗議し、そのせいで仕返しを受けたと言っているからだ。
訴状で、バルドーニとヒースは、ライヴリーがいうセクハラの数々は事実ではなく、都合よく捻じ曲げたものだと強く主張している。ということで、具体的に彼らがどう言い返しているのかを見てみよう。
バルドーニとヒースが、ライヴリーが赤ちゃんに母乳をあげている時や、裸でボディメイクを落としてもらっている時に、無断でライヴリーのトレイラーを訪れたという件。
バルドーニとヒースは、訴状で、ライヴリーはミーティング中でも自分たちの前で堂々と赤ちゃんに母乳をあげており、抵抗がない様子だったと述べている。その証拠のひとつとして、バルドーニとライヴリーのテキストメッセージのやりとりが挙げられている。
そのやりとりでは、ライヴリーが「せりふについて話したかったら、私は今、トレイラーで母乳をあげているわよ」と声をかけ、バルドーニは「了解。今、クルーと食事をしているけど、すぐ行く」と答えている。それに対し、ライヴリーは「急がなくてもいいからね」と伝え、その次には到着時と思われるバルドーニの「着いたよ」というメッセージがある。
そして、ライヴリーがボディメイクを落としている最中にヒースがトレイラーに入っていったということについての状況。この時はライヴリーのトレイラーでバルドーニ、ヒース、女性のプロデューサー、ソニー・ピクチャーズの担当者とミーティングが行われることになっており、ヒースが一番に到着した。ドアをノックすると「どうぞ」と言われたので入ると、ライヴリーは鎖骨から上のボディメイクを落としてもらいながら母乳をあげているところだった。裸ではなく、服を着ている状態だ。「後で戻ってきましょうか」とヒースが尋ねると、ライヴリーは「ノー」と返事をし、ミーティングは予定通り進めてくれていい、自分はメイクを落とし終わったら参加するからと言った。
バルドーニが、個人的な性体験を勝手に話し、ライヴリーのプライベートな体験についても聞いてきたという件と、バルドーニが予定になかったセックスシーンを入れてきたという件。
訴状によれば、バルドーニは撮影前にインティマシー・コーディネーターを雇い、ミーティングに誘ったのに、ライヴリーは興味を示さなかった。そのため、バルドーニはインティマシー・コーディネーターとふたりで話し合いをすることになり、彼はプロから提案された内容を日付とともにメモに書き留めた。後日、ライヴリーがセックスシーンを一緒に書きたいと言い、彼女の自宅に行った時、バルドーニはインティマシー・コーディネーターからの提案を見せた。
その中には、バルドーニ演じるライルが、ライヴリー演じるリリーを満足させるまで自分はオーガズムに達しないというものがあったのだが、そう聞いたライヴリーは、「そんなことが自分自身に起きたら恐ろしいわ」と言った。それに対して、バルドーニは、「僕自身と妻にとっては、それはとても美しい瞬間のひとつだけど」と返した。
バルドーニは、訴状で、「ライヴリーが先に個人的なことを出してきたから、自分もそうしたに過ぎない。また、自分たちはシーンについての話し合いをしていたのだ」と述べている。
ヒースが妻のヌード動画をライヴリーに見せてきた件。
訴状によれば、その動画はヒースの妻が自宅で出産する様子をとらえたもので、映画の後半に出てくる出産シーンの参考にと、妻の了承を得た上で見せたものだという。訴状に掲載されている場面写真で、ヒースの妻はバスタブの中にいるが、裸は見えない。ライヴリーはこの動画を「ポルノ」「ヌードの動画」と描写するが、訴状は「まるで違う性質のものだ」と抗議する。
俳優と脚本家のダブルストライキが終わり、中断されていた撮影が再開されるにあたり、ライヴリーはミーティングを持ち、バルドーニらに「これからは合意なしに体を触ったり、性的なコメントをしたりしない」、「これからはバルドーニやヒースの過去のポルノ依存症についての話をしない」、「これからは相手の合意なしに性的な行為をした体験について話さない」などという30の項目を書いた書類を突きつけ、承諾させたという件。
訴状によれば、30個の条件を書いた書類は存在しない。バルドーニも、彼とヒースの製作会社も、そのようなものは、ミーティング中にも、後にも、受け取っていない。したがって、承諾はしていない。それ以前に、「そこに書かれていた」というひどいことは、一度も起きていないので、承諾も何もない。そういうことが現場で起きたと匂わせることは間違いであり、真実ではない。
ライヴリーが先月20日にカリフォルニア・シビルライツ・デパートメントに提出した訴えには、ほかに、「脚本に書かれておらず、合意もなかったのに、バルドーニはキスシーンで突然ライヴリーの唇を噛み、吸い付いてきた。そのシーンのテイクを異常なほど何度もやった」、「ダンスのシーンで、バルドーニはキャラクターではなく本人としてふるまい、唇をライヴリーの耳から首まで動かしつつ、『良い匂いがするね』と言った。ライヴリーが抗議すると、『君なんかに興味ないよ』と返してきた」、「ライヴリーがほとんどヌードで演じる出産のシーンで現場にいるクルーの数を限定せず、製作会社のエグゼクティブまで撮影に関係がないのに現場見学に来た。また、バルドーニは、医師の役を自分の親友に演じさせた」などという苦情も書かれている。
それらについての言い訳は、今回のバルドーニの訴状で触れられていない。だが、これらの訴訟が先に進み、新たな訴訟も起きていく中では(バルドーニの弁護士はそう匂わせている)、細かい事柄のひとつひとつにも触れられていくだろう。
「#MeToo」からすでに丸7年も経ち、意識が高まったハリウッドで、まだこのようなことが行われていたのか。真実はそのうち明らかになる。