ブレイク・ライヴリーの敵が暴露した“不都合な真実”。ハリウッドのスキャンダルは本格的な戦いに
2024年に大ヒットした映画「ふたりで終わらせる/IT ENDS WITH US」が、2025年も大きな注目を集めそうだ。ただし、まったく別の理由で。主演女優ブレイク・ライヴリーと、監督で共演者のジャスティン・バルドーニの争いがますます泥沼化し、戦争と呼ぶにふさわしい状況になってきたのである。
アメリカ時間先月20日、ライヴリーは、現場でのセクハラ行為、またそれに抗議した自分を陥れたとして、バルドーニ、彼のビジネスパートナーでプロデューサーのジェイミー・ヒース、彼らのパブリシスト、ジェニファー・アベル、危機管理専門パブリシスト、メリッサ・ネイサンらに対して法的な措置を開始すべく、政府機関カリフォルニア・シビルライツ・デパートメント(CRD)に苦情を申し立てた。バルドーニらの弁護士ブライアン・フリードマンは、ライヴリーの主張を激しく否定。年明けに行動に出ることを匂わせていたが、大晦日、早くも最初の訴訟を起こしたのである。ただし、被告はライヴリーではなく、「ニューヨーク・タイムス」だ。
「ニューヨーク・タイムス」は、ライヴリーが訴えを提出したのとほぼ同じタイミングである21日に、詳細な独占記事を掲載した。その中には、ライヴリーの訴えの中にあるのと同じテキストメッセージの証拠も記載されている。しかし、バルドーニらと弁護士は、「ニューヨーク・タイムス」が、都合の悪い証拠をあえて削除し、ライヴリーの望むとおりの話を報道したと、ジャーナリストとしてのモラルの低さを批判。記事から受けた損害への賠償として2億5,000万ドルを要求している。
ライヴリーの訴えと「ニューヨーク・タイムス」で語られた話は、「#MeToo」後のハリウッドでは信じがたいレベルのセクハラの様子や、パブリシストが先導する悪意あるネガティブキャンペーンの様子が詳細に盛り込まれた、非常にショッキングなものだった。そんな扱いに対して立ち上がったライヴリーには業界の内外から支持が集まり、バルドーニは、タレントエージェンシー、ウィリアム・モリス・エンデヴァー(WME)から契約を切られた。WMEは、ライヴリー、彼女の夫ライアン・レイノルズとも契約している。
全体のやりとりを見ると意味が違ってくる
しかし、「ニューヨーク・タイムス」に対する訴訟で、バルドーニらは、多くの証拠も揃えつつ、それらの訴えを否定した。
ライヴリーが述べるセクハラについては、すべて事実が捻じ曲げられたもので、そういったことはなかったと主張。また、ライヴリーは「現場には常にインティマシー・コーディネーターにいてもらうように」と、撮影半ばになって要求したと主張するが、バルドーニによれば、インティマシー・コーディネーターは最初から用意されていた。撮影開始前にインティマシー・コーディネーターとミーティングをしようと声をかけても、ライヴリーは興味がないとして参加せず、バルドーニはひとりで話し合いをもつことになったという。そのやりとりのテキストメッセージは、証拠として記載されている。
テキストメッセージといえば、メディアにライヴリーを貶める記事が出たことについて、アベルとネイサンが「あなた、これ本当によくやったわね」「だからあなたは私を雇ったんでしょ。私は最高なのよ」とやりとりした記録を、「ニューヨーク・タイムス」はネガティブキャンペーンの証拠として掲載していた。だが、バルドーニらによると、これは都合の良いところの切り取り。バルドーニらの訴状には、その前後も含めた長いやりとりが全部記されており、それを読むと、ライヴリーにとって不利なこの特定の記事はネイサンが仕込んだものではなかったことがわかる。アベルとネイサンは皮肉を込めた冗談の掛け合いをしていたのだ。
また、ライヴリーは、バルドーニとパブリシストらが自分に対するネガティブなコメントをソーシャルメディアに仕掛けたと主張するが、バルドーニとパブリシストらが、そういうことはしないとお互いに言い合う内輪のテキストメッセージも、バルドーニの訴状には証拠として挙げられている。ライヴリーに対するネガティブな記事が出たことに対し、バルドーニが「これは僕らの仕業じゃないとわかってもらうのにどうしたらいいだろうか。僕らはそういうことはしないのに」と不安そうに相談するテキストもある。
監督なのに編集室から追い出された
セレブカップルであるレイノルズとライヴリーの威力は絶大で、バルドーニと彼のチームは、大きく悩まされたとも、訴状は述べる。
俳優と脚本家のダブルストライキで中断していた撮影が再開するにあたり、ライヴリーの要望でミーティングが持たれたのだが、レイノルズはバルドーニに対してとんでもなく失礼かつ威嚇的で、帰り際、同席したプロデューサーは「40年もこの業界で仕事をしてきたが、ミーティングの場で誰かが他人に対してあんな態度を取るのは初めて見た」と言い、配給のソニー・ピクチャーズの担当者も「あの時、ライアンがジャスティンに対してあんなふうに話すのを止めなかったことを後悔してやまない」と言ったという。
また、ライヴリーは自宅から15分の場所で行われる衣装合わせに来ることを嫌がり、衣装デザイナーとスタッフは、ライヴリーとレイノルズの家にすべてのものを持ち込むことを強いられ、予定外の時間とお金がかかったとも記述されている。
ライヴリーは編集にも口を出し、本来、監督組合の規定で10週間は監督が自分だけの編集の時間を持てることになっているにもかかわらず、そこに参加したいと言ってきた。それどころかそのうちバルドーニを邪魔者扱いし始め、バルドーニが雇ったエディターを勝手にクビにし、レイノルズが親しくするエディターをバルドーニが知らないうちに雇用。その結果、ライヴリーのバージョンとバルドーニのバージョンができてしまった。
ここまでにお金も努力も費やしたバルドーニとヒースの製作会社も、配給のソニーも、自分の思い通りにならなければ宣伝活動に参加しないというライヴリーを腫れ物のように扱わざるを得ず、ふたつのバージョンをテスト上映し、得点が高かったほうを公開しようということに。結果はバルドーニのバージョンのほうがずっと良かったのだが、最終的にライヴリーのバージョンを公開せざるを得なかったという。そのバージョンを、バルドーニは、プレミアまで見せてもらっていない。
ライヴリーが編集作業をしている間、バルドーニが彼のエディターに「君たちは覗き見できた?」と聞き、エディターらが「見てはいけないと言われました」と答え、さらにバルドーニが「監督とエディターは女優がやった編集を見てはいけないってことか。ははは。品位を持って行動することにしよう」というやりとりのテキストメッセージも、訴状の中に記載されている。別のやりとりで、バルドーニは、ライヴリーに乗っ取られてしまった胸の内を察するエディターたちに向け、「僕たちは美しいベイビーを作った。思ったそのままのベイビーにはならなかったかもしれないが、美しいことに違いはない。そう願っている。僕らがやったことを誇りに思っているよ」と、ポジティブな態度を見せている。
ライヴリーは、ポスターを含めたマーケティング素材にバルドーニが一切出ないようにも指示してきた。プレミアでも一緒の場にいることがないように命じ、バルドーニと彼の家族、友人は、自分の会社が主催してお金も出したプレミアパーティには行けず、急遽、別のパーティを組むことになっている。このプレミアでの不自然さが疑惑を呼び、不仲説が報道されることになるのだ。
ライヴリーもバルドーニらを正式に訴訟
今回の被告は「ニューヨーク・タイムス」ながら、この訴訟で主に述べられているのは、ライヴリーや、バルドーニの元パブリシストでアベルの携帯のメッセージをライヴリー側に提供したと思われるステファニー・ジョーンズなど、一連の出来事の中心人物の行動。バルドーニの弁護士は、この後まだ別の訴訟があることを示唆しており、これはおそらくその第一段階にすぎない。“主役”であるライヴリーが訴訟される日も、近いうちにやってくることだろう。バルドーニらに対する訴訟を先に起こしているジョーンズも、きっと免れない。
一方、ライヴリーも、同じ大晦日にバルドーニと彼の広報チームを正式に訴訟した。一連の揉めごとは、大きくなる一方。誰にとってもキャリアと人生がかかっているこの戦いは、もはや引くに引けないところまで来た。始まったばかりの2025年は、彼らにとって厳しい年になりそうである。