豊島竜王の名人挑戦&羽生九段の残留争いの行方は?ー第79期A級順位戦中間展望ー
28日の対局をもって、第79期名人戦・順位戦A級の年内の対局を全て終えた。
挑戦争いは、斎藤慎太郎八段(27)がトップを走り、豊島将之竜王(30)が追う展開に。残留争いは、羽生善治九段(50)が巻き込まれるハイレベルの戦いとなっている。
ここまでの戦い、そして今後の展望を解説する。
挑戦争い
新A級ながら堂々トップを走る斎藤八段は、将棋の内容もよく、充実ぶりがうかがえる。
28日に行われた三浦弘行九段(46)との一戦も、相手の攻めを余裕をもって凌いで勝つ強い内容だった。
斎藤八段の残り3戦の相手は、全員調子が上がっていない。もちろんA級に甘い相手はいないものの、2敗勢との対戦を終えているのは好条件といえよう。
2敗で追う豊島竜王は、5回戦の斎藤八段戦、6回戦の羽生九段戦と、紙一重の終盤戦を制して星を伸ばしてきた。
7回戦の三浦九段、8回戦の佐藤康光九段(51)と、ここ最近の対戦成績で大きく勝ち越している相手が続く。2戦とも先手番で戦えるのも心強い。
2020年は緊急事態宣言明けからタイトル戦が続いた豊島竜王だが、2021年はしばらくタイトル戦に登場しない。それだけこのA級順位戦に照準を絞って臨めることになる。
斎藤八段が一つでも星を落とすと豊島竜王とのプレーオフにもつれ込む可能性も高そうだ。
2敗のもう一人広瀬章人八段(33)は、年末の棋王戦挑戦者決定二番勝負での敗退など、やや調子を落としている印象だ。
その挑戦者決定二番勝負で苦杯をなめさせられた糸谷哲郎八段(32)との7回戦が正念場だ。なんとか食らいついて最終戦の豊島竜王との直接対決に望みをつなげたい。
残留争い
A級在位通算19期を誇る三浦九段が苦境に立たされている。
1勝しかあげていないうえに、前期成績に基づく順位も悪い。
残り3戦、最低でも2勝をあげないと降級が決まってしまう。
ただ、これまでもギリギリの状況で力を発揮してきた三浦九段だ。巻き返しも十分に考えられる。
8・9回戦では競争相手との直接対決が続くため、自力で浮上するチャンスは残されている。
羽生九段も未だ2勝で残留争いに巻き込まれている。
2020年はタイトル挑戦も果たすなど、決して調子が悪いとはいえないのだが、これもA級のレベルを高さを表しているといえよう。
羽生九段は5回戦の佐藤(康)九段との対戦では終盤の逆転で勝利をあげたものの、6回戦の豊島竜王との対戦では二転三転する終盤戦で敗れた。
安定した内容ではないところに一抹の不安がある。
7回戦は同じ2勝の稲葉陽八段(32)との対戦となる。勝てば順位もいいため残留はほぼ確定的だが、負けると一気に危なくなる。正念場ともいえる一戦だ。
稲葉八段も2勝で苦しい位置だが、羽生九段との直接対決で浮上するチャンスは残っている。最終戦ではライバルの糸谷八段との対戦が組まれている。ここで負けて降級が決まるという展開はなんとしても避けたいだろう。
順位の関係もあり、3勝3敗の4名のうち新A級で順位が悪い菅井竜也八段(28)は油断出来ない位置だ。
前期は順位10位の木村一基九段(47)が4勝5敗で降級するなど、順位が響くケースも多い。菅井八段は少なくとも一つは星を積み上げる必要があるだろう。
ラスト2戦は2月に
先日アップした、
藤井聡太二冠の昇級の行方は?ー第79期順位戦B級1組~C級2組中間展望ー
この記事でA級以外の各クラスの状況を取り上げた。
B級1組では深浦康市九段(48)ら実力者が残留争いで厳しい立場に立たされるなど、40代後半の棋士の苦戦が目立っている。
三浦九段もちょうどその年代である。
若い人が活躍するのは世の常であるが、それにしても今期順位戦は若手の活躍と中堅以上の苦戦が目につく。
新A級での名人挑戦は難易度の高いことではあるが、タイトル獲得経験もある斎藤八段なら現実味もある。
羽生九段が降級する姿が想像できないのは筆者だけではなく、ファンの総意だろう。
しかし将棋界全体の流れをみるとその可能性を完全には否定できない。
8回戦(2月3日)と最終9回戦(2月26日)は一斉対局で行われる。
挑戦争いも残留争いも、9回戦までもつれる可能性が高そうだ。
最後までご注目いただきたい。