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【将棋】激闘!白玲戦・女流順位戦:福間女流五冠が挑戦へ一歩リード、昇級をかけた世代間バトル

遠山雄亮将棋プロ棋士 六段
記事中の画像作成:筆者

 第4期に入ったヒューリック杯白玲戦・女流順位戦はいよいよ佳境を迎え、全クラスで残り2戦となっています。

 この記事では、A級の挑戦争いと残留争い、B~D級の昇級争いについて解説していきます。

 各クラスの全成績については、日本将棋連盟HPの公式ページよりご確認ください。

A級 次戦は直接対決!

挑戦の可能性が残るのは表の4名。8回戦で福間か伊藤が勝つと、挑戦権争いは上位2名に絞られる
挑戦の可能性が残るのは表の4名。8回戦で福間か伊藤が勝つと、挑戦権争いは上位2名に絞られる

 前白玲の福間女流五冠が全勝でトップを走っています。ここまで危なげない戦いぶりで、実力をいかんなく発揮しています。
 しかし、ここから加藤(桃)女流四段や伊藤女流四段との直接対決が続くため、まだ安心出来る状況ではありません。

 前期B級から昇級してきた石本女流二段が挑戦権争いに加わっている点も注目されます。福間女流五冠との直接対決に敗れ、厳しい状況にありますが、1敗の伊藤女流四段に勝って望みをつなげたいところです。

残り1枠を加藤女流二段と塚田女流二段で争う
残り1枠を加藤女流二段と塚田女流二段で争う

 残留争いでは、渡部女流三段の降級が決まり、残りの1枠を加藤(圭)女流二段と塚田女流二段が争います。次戦は二人の直接対決です。塚田女流二段は、直接対決に勝った上で最終戦でも勝利することが絶対条件です。
 二人の直接対決があるため、他のメンバーは残留が決まっています。

B級 決着か混戦か

3敗は野原女流初段のみ
3敗は野原女流初段のみ

 前期C級から昇級してきた和田女流二段が1敗で首位を快走しています。2024年に入ってから7割を超える勝率で、充実ぶりが感じられます。

 前期惜しくも昇級を逃した鈴木女流三段も、今期の昇級レースを引っ張っています。2024年に入ってから11連勝するなど、こちらも充実しています。
 和田女流二段と鈴木女流三段は、次戦に勝つと昇級が決まります。また、鈴木女流三段が勝った場合、香川女流四段も勝つと昇級が決まります。
 上位陣が崩れれば、最終戦で上位4名の直接対決があるため混戦となるでしょう。決着するのか、混戦模様になるのか、注目です。

 残留争いでは、中村真梨花女流四段の降級が決まり、残り2枠の争いです。中村女流四段と同じく前期A級から降級した中井広恵女流六段も残留争いに巻き込まれており、実力伯仲ぶりがうかがえます。

C級 ベテランか若手か

1敗は2名、2敗は表の7名
1敗は2名、2敗は表の7名

 ベテランの域に入っている3名が昇級争いを引っ張っています。千葉女流四段と岩根女流三段は前期B級から降級しましたが、C級では力があるところを見せています。

 残り2戦で、ベテランと若手の直接対決が多く組まれています。
 千葉女流四段は、山口女流三段と加藤女流初段の2敗勢との連戦です。どちらかに勝てば昇級が決まるものの、油断できない状況です。
 2番手の本田女流三段も、頼本女流初段と内山女流初段の2敗勢との連戦です。前期成績に基づく順位の関係で、本田女流三段は連勝が求められるため、2番手ながら厳しい状況にあるといえます。

 レジェンド女流棋士の清水女流七段も2敗で、虎視眈々と昇級を狙っています。次戦は同じく2敗の小高女流初段とのサバイバルマッチです。

 先日、第17期マイナビ女子オープンで挑戦権を獲得し、一躍脚光を浴びた大島綾華女流二段ですが、このC級では未だ1勝と降級の大ピンチです。ここにも女流棋界の実力拮抗ぶりがうかがえます。

D級 新人に注目!

2敗は表の2名の他に4名いる
2敗は表の2名の他に4名いる

 現在5勝1敗の6名が自力(※)で、昇級の権利を持っています(昇級枠は5つですが、直接対決の関係で6名が自力です)。
 ここでは、今期初参加の3名の新人女流棋士にスポットを当てます。

 久保女流2級は、久保利明九段の実娘として知られています。ここまで1敗できていますが、残り2戦は茨の道です。次戦は、第8回YAMADA女流チャレンジ杯で優勝した若手強豪の磯谷祐維女流初段との対戦です。難敵相手に星を伸ばすことができるでしょうか。

 今井女流初段は奨励会での実績もあるため、大型新人として注目を集めています。今期は初戦でいきなり黒星を喫しましたが、そこから5連勝と上り調子です。残り2戦は各棋戦で好成績をあげている若手との対戦で、こちらも茨の道が待っています。

 砂原女流2級は、初戦で実績十分の矢内理絵子女流五段に勝利して勢いに乗り、ここまで1敗できています。次戦は2年目の榊菜吟女流2級、そして最終戦には現在1敗の久保女流2級との直接対決が待っています。若手対決を制して昇級を勝ち取ることができるでしょうか。

(※)自力とは、残りの対局に勝てば周りの勝敗に関係なく昇級が決まることを意味します

今後のスケジュール

 順位戦も女流順位戦も、ラストに向けて緊張感が高まるのが大きな特徴です。プレッシャーをはねのけて残り2戦を制した人が栄光を勝ち取るでしょう。
 各クラスの行方を大きく左右する次戦のスケジュールは以下の通りです。

  • 6月3日(月)D級一斉対局
  • 6月6日(木)C級一斉対局
  • 6月14日(金)A級&B級一斉対局

 本日はD級の一斉対局が行われています。
 すべての一斉対局が終わった後に、最終戦に向けての展望記事を執筆予定です。そちらもぜひご一読ください。

将棋プロ棋士 六段

1979年東京都生まれ。将棋のプロ棋士。棋士会副会長。2005年、四段(プロ入り)。2018年、六段。2021年竜王戦で2組に昇級するなど、現役のプロ棋士として活躍。普及にも熱心で、ABEMAでのわかりやすい解説も好評だ。2022年9月に初段を目指す級位者向けの上達書「イチから学ぶ将棋のロジック」を上梓。他にも「ゼロからはじめる 大人のための将棋入門」「将棋・ひと目の歩の手筋」「将棋・ひと目の詰み」など著書多数。文春オンラインでも「将棋棋士・遠山雄亮の眼」連載中。2019年3月まで『モバイル編集長』として、将棋連盟のアプリ・AI・Web・ITの運営にも携わっていた。

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