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宮脇咲良、浅田真央、イニエスタ…「悔しい」発言で韓国で誤解される有名人たち

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
IZ*ONEの宮脇咲良(左)とキム・ミンジュ。写真提供/SPORTS KOREA

10日29日、AKB48メンバーらも所属する日韓合同ガールズグループ「IZ*ONE」(アイズワン)がいよいよデビューする。

トラブル乗り越え、ついにデビュー!!

「IZ*ONE」は、今年6月から韓国のケーブルテレビ局Mnetで放送されたオーディション番組『PRODUCE48』からの合格者12人で結成されたグループだ。

『PRODUCE48』の放送中は、AKB48メンバーが韓国ネット民から暴言を浴びるトラブルなどもあったが、9週連続で同時間帯の視聴率1位を記録するなど大反響を呼んだ。

日韓両国の候補者96人とのサバイバルを勝ち抜いたメンバーたちがいよいよデビューするだけに、「IZ*ONE」は韓国はもちろん日本でも関心を集めている。

ただ、その「IZ*ONE」を生んだ『PRODUCE48』では、日韓合同プロジェクトならではのトラブルも起こっていたことをご存じだろうか。

中心メンバーである宮脇咲良の日本語のコメントが韓国で誤訳され、思わぬ誤解を生んでしまったのだ。

韓国で活躍する日本の芸能人たちの「ヤバい」は?

そもそも日本語と韓国語は、翻訳しづらい言葉が多い。

わかりやすい例は、日本語の「ヤバい」だろう。

韓国語には「ヤバい」に対応する言葉が存在しないため、文脈から意図を判断して、「テバク(最高)」や「クェンジャンハダ(すごい)」などと訳すしかない。

例えば、韓国には藤井美菜、RUIなど、現地で活躍する日本の芸能人たちも多い。

彼女たちをはじめ日本の芸能人たちのインタビューが韓国メディアで紹介される場合なども、そのまま「ヤバイ」と日本語で綴られ、その後に「“ヤバイ”とは、“最高”や“おかしくなっちゃう”という意味」などと説明が付け加えられることもあるのだ。

(参考記事:「美しすぎる!」とネットで話題に。韓国で活躍する日本芸能界の美女たち

そのほかにも翻訳が難しかったり、日本語と韓国語でニュアンスが異なる言葉は多いが、そんななかで宮脇咲良が『PRODUCE48』で語ったコメントも、誤まって翻訳されてしまった。

宮脇咲良の「悔しい」が誤解を招く

宮脇咲良は番組開始当初、多くの日本人候補者が最低のFランクの評価を受けたことに対して「悔しい」とコメントしたが、そのコメントが多くの韓国メディアで「プナダ」と訳され報じられていた。

「プナダ」とは、「自分は悪いことをしていないのに、誰かのせいで嫌な目にあって悔しい」というときに使う言葉だ。何か被害に遭ったときに、特定の相手や状況に対して憤る感情を表す。

つまり、宮脇咲良が口にした「悔しい」は、「日本人を負かした韓国人や韓国の番組に腹が立つ」に近いニュアンスで韓国で伝えられていたわけだ。

『PRODUCE48』ウオッチャーでもある旧知の韓国人記者仲間によると、当時は宮脇咲良のコメントが「プナダ」と翻訳されて報じられると、一部では批判的な声も上がったという。

結果的に宮脇咲良は最終順位で日本人トップの2位に入り、最終メンバー入りを果たしたが、当時、韓国メディアの誤訳が宮脇のイメージダウンを招いたのは間違いないだろう。

イニエスタ、宮脇咲良も誤訳の被害に

もっとも、同様の例はこれまでもあった。

例えば、元フィギュアスケート選手の浅田真央だ。浅田は現役時代、キム・ヨナのライバルとして韓国でも関心を集めていた。当時は何かとキム・ヨナと比較され、「トリプル・アクセルへの執着」「弱いメンタル」などのネガティブな話題が取り上げられることも多かった。

そんななか、当時韓国メディアでたびたび取り上げられていたのが、浅田の「悔しい」というコメントだった。

バンクーバー五輪でキム・ヨナに敗れて銀メダルを獲得した際など、浅田は「悔しい」と口にすることが多かったが、そのコメントは多くの韓国メディアで「プナダ」と訳され報じられていた。韓国では、「自分を負かしたキム・ヨナに腹が立つ」というニュアンスで受け取られたわけだ。

日本の多くのアスリートがそうであるように、浅田も試合結果そのものに対して残念に思う気持ちや、自分自身を不甲斐なく感じる思いを込めて「悔しい」と語ったのだろうが、韓国では「プナダ」と訳されて報じられ、韓国ファンの反感を買ってしまうのは残念でならない。

また、最近でいえば、今年Jリーグのヴィッセル神戸に移籍してきたアンドレス・イニエスタも“誤訳被害”に遭った一人だ。

イニエスタの日本での動向には移籍直後から韓国も関心を寄せているが、旧知の韓国サッカー記者によれば、神戸が試合に敗れた後にイニエスタが日本メディアに語った「悔しい」というコメントが「プナダ」と訳されて伝えられ、誤解を招いたことがあるのだという。

それにしても、韓国でこのような誤訳が絶えないのはなぜなのか。宮脇の騒動もリアルタイムで追っていたという韓国記者はこう語る。

「ネットニュースが主流となり、膨大な量の記事を書かなければならないなか、韓国記者たちが安易に翻訳サイトに頼ってしまっていることが原因ではないでしょうか。

実際に、韓国でもっとも使われているポータルサイト『NAVER』の翻訳機に“悔しい”と入力すると“プナダ”と翻訳されますが、記者たちもそれを鵜呑みにして、そのまま記事にしてしまっているんです」

いずれにしても、韓国で日本の有名人のコメントが誤訳され、誤解を生んできたのは事実。イメージを傷つけられた宮脇咲良や浅田真央らにとっては、そんな誤訳にこそ「プナダ」と言いたいところだろう。

もっとも、今年2月の平昌五輪では、韓国でも人気女優のパク・ボヨンにそっくりとして関心を集めた女子カーリング日本代表の藤澤五月が語った「悔しい」が「アシプタ」(残念だ)と本来のニュアンスに近い言葉に翻訳されるなど、改善の兆しがないわけではない。

筆者も韓国記者仲間たちに呼び掛け、翻訳にも協力しているが、日韓合同ガールズグループもデビューしたなか、今後は日本の著名人が誤訳によってイメージを傷つけられることがなくなることを願うばかりだ。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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