「日本よりも仕掛ける姿勢を感じる」韓国移籍の元川崎F・MF小塚和季が語るJリーグとKリーグの違い
今季7月に川崎フロンターレから韓国1部の水原三星ブルーウィングスへ完全移籍したMF小塚和季。彼のプレーを見ようと15日、蔚山現代戦の取材に向かった。
相手はリーグ首位で、水原三星は最下位の12位。下馬評ではもちろん蔚山が優勢と見られていた。ホームゲームの水原三星にとってはもう失うものはなく、がむしゃらに勝ち点3を取りにいくしかない状況だった。
小塚は加入後、ここまで2試合に先発出場しており、Kリーグデビューとなった大田戦(9日)は2-2、続く浦項戦(12日)でも1-1で引き分け。そして迎えた首位・蔚山戦でもスタメンに名を連ねた。
チームでの信頼は厚いと聞いていたが、蔚山との試合を見て納得だった。中盤でのボールさばきや緩急をつけたリズムの造りか、逆サイドのスペースへのロングフィード、相手も積極的にカットしてカウンターチャンスを演出したりと、その働きぶりは加入したばかりの選手には見えなかった。
試合はフル出場を果たして3-1でまさかの勝利。アディショナルタイムでの失点が悔やまれるが、どちらが首位で最下位のチームか分からないほど、水原三星の選手の気迫とパフォーマンスは明らかに蔚山を上回っていた。
試合後、ミックスゾーンで小塚に話を聞くことができた。
「相手は首位ですし、ボールをつないでくるのは分かったので、いかに自分たちが守備ラインをうまく保ち、無失点でいけるかがカギになると思っていました。うまく守れましたし、決定的なところで決めることができたのでこういう試合になったと思います」
特にチーム内で心掛けているのはバックパスを減らして、中盤の起点になること。「チームではバックパスが多いというのは聞いていたのですが、自分としては基本的にできるだけ前にボールをつけていきたい。自分のところで時間を作って、前に行くためのポイントになれればと思っています」。
「JリーグとKリーグはそもそものサッカーが違う」
小塚のチーム加入後、水原三星のチーム士気やパフォーマンスは確実に上がっているが、ここまですぐにフィットしている選手も珍しい。
「僕がこうしてプレーできているのも他の選手たちが助けてくれているからです。自分のことを理解しようとしてくれているので、すごくサッカーがやりやすい印象があります。周りのおかげですよ。それに1試合に賭ける思いがどんどん強くなっているので、すごくいいチームだと思います」
こうした謙虚な姿勢やプレーの質の高さ、そして結果が出ることで監督やチームメイトから信頼を得られているのだと感じた。
それでも日本のJリーグでプレーしたあと、韓国Kリーグに適応するのはそう簡単なことではないが、その違いについて聞くと、こんな答えが返ってきた。
「最初の試合(大田戦)がJリーグとKリーグの違いがすごく出た試合でした。かなり間延びしていた時間がありましたし、そもそもサッカーが違うなという感じはあります。その違いを言葉で表現するのは難しいんですよね。(日本よりも)技術が劣るとかは感じませんし、なんなら日本よりもどんどん仕掛けていく姿勢は感じました。日本では詰まるとすぐにバックパスしたり、目の前の相手に仕掛けないシーンは案外と多い。Kリーグの選手は目の前に選手がいてもどんどん仕掛ける。意識的な部分でサッカー自体が違うのかなと感じます」
一方で、こんなことも感じていた。
「ボールに対するプレッシャーは、まだ少し緩い部分が多分あると感じました。それこそ自分もかなり余裕を持ってボールを持てるシーンがありますから、そこはもっと高めていくところだと思います」
「日本人同士でKリーグ盛り上げていけたら」
ちなみに相手の蔚山現代には元日本代表MF江坂任が所属しているが、この試合で途中出場を果たし、何度もマッチアップするシーンが見られた。
「日本ではあまりマッチアップしたことがなくて、Kリーグでこうして戦うことになるのはすごく不思議な感じですけれど、日本人選手同士でもっとKリーグを盛り上げていけたらなと思っています」
まだ韓国に来たばかりだが、クラブハウスの寮での生活も楽しんでいる。「食事はおいしいです。韓国料理は好きだったので、本場はやっぱりおいしいなと思いました。私生活も含めて、もっと生活面も楽しんでいきたいです」。
さらに「日本語が話せる選手が多いのはすごく大きい」と言葉の問題も特に気にせずにいられているのもストレスが少ない証拠だ。チーム内には元Jリーガーで在日コリアンの安柄俊や韓浩康がいるし、コーチにはFC東京でプレーしたオ・ジャンウンもいて、日本語が話せる選手やスタッフがいるのは心強い。
水原三星は10試合ぶりの勝利を手にしたが、まだ最下位の12位。リーグ優勝4度を誇る名門クラブでもあるが、まずは1部残留が目標。小塚は残留争いに向けても意欲的で「まだまだ順位は下ですが、すべて勝てるようにやっていきたい」と前を向いた。