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春はもうそこ ほぼ全国的に雨が予想されている1月23日(土)は土用の未の日

饒村曜気象予報士
咲き始めた梅の花(1月21日に杉並区にて著者撮影)

令和3年(2021年)の冬

 令和2から3年(2020から2021年)の冬は、前年の暖冬から一変し、寒冬というより厳冬になっています。

 日本付近のジェット気流が大きく蛇行し、この蛇行にのって北極付近の強い寒気が、周期的に日本付近へ南下しているからで、これまで4回強い寒気が南下しています。

 1回目は12月14日頃から南下したもので、日本海側を中心に記録的な大雪となり、新潟・群馬県境の関越自動車道では、16日夜からの交通障害で2000台以上の車が立ち往生しています。

 2回目は年末年始の強い寒気の南下で、西日本にも寒気がおりてきましたので、北日本の日本海側や北陸だけでなく、山陰地方まで大雪となりました。

 3回目は、1月7日から8日で、東北の日本海側から北陸地方、西日本の日本海側のみならず、普段は雪の少ない九州でも雪が降りました。

 特に、北陸地方では短時間に強い雪が降り、初めて「顕著な大雪に関する気象情報」が発表されました。

 4回目の強い寒気の南下は、大学入試の制度が変わって初めての大学入学共通テスト(第一日程)が行われた1月16日頃から南下してきたもので、北海道稚内市では、雪による悪天候のため、16日に予定されていた大学入学共通テストが中止(1月30日に再試験)となっています。

 大学入学共通テストの前身である「センター試験」、さらにその前身である「共通一次試験」を通して、初めて1日まるごと再試験となっています。

 「共通一次試験」が始まったのは、昭和54年(1979年)ですから、42年間で初めてのできごとでした。

 これまでで一番寒かったのは3回目の寒気南下で、1月8日は、冬日(最低気温が0度未満)、真冬日(最高気温が0度未満)とも、今冬最多を観測しています(図1)。

図1 冬日と真冬日の観測地点数の推移
図1 冬日と真冬日の観測地点数の推移

寒気の底は大寒の前

 一般的には、大寒から立春(2月3日頃、今年は124年ぶりに2月2日)の前日までの間、一年中で最も寒い時期に入ります。

 小寒(1月6日頃、今年は1月5日)から大寒をはさんで立春までの約30日間を「寒」といい、耐寒のためのいろいろな行事、例えば寒稽古が行われます。

 また、酒や味噌など、寒気を利用した食べ物を仕込むのに最もよい時期とされ、「寒仕込み」という言葉もあります。

 しかし、令和3年(2021年)は、1月20日の大寒を境に強い寒気の南下も一段落し、日本付近は大きな移動性高気圧に覆われています。

 そして、この移動性高気圧の通過後、東シナ海に停滞前線が出現して日本付近に伸び、さらには沖縄近海で低気圧が発達する見込みです(図2)。

図2 予想天気図(1月23日9時の予想)
図2 予想天気図(1月23日9時の予想)

 このため、前線や低気圧によってほぼ全国的に雨が降りやすくなり、暖気が北上してきますので、しばらくは強い寒気が南下することはなさそうです。

 つまり、令和3年(2021年)の冬は、大寒までが寒く、大寒後は暖かい日が続きそうです(図3)。

図3 東京の最高気温と最低気温(1月22日から28日は気象庁、1月29日から2月6日はウェザーマップの予報)
図3 東京の最高気温と最低気温(1月22日から28日は気象庁、1月29日から2月6日はウェザーマップの予報)

 2月前半までの最高気温は、平年並みか平年より高い日が続く予報、最低気温は平年より高い日が続く予報です。

 最高気温の平年値、最低気温の平年値も徐々に高くなってきますので、梅の開花など、春の訪れが近づいていることが感じられるようになると思います(タイトル写真参照)。

 東京の16日先までの天気予報を見ると、降水の有無の信頼度が5段階で一番低いEや二番目に低いDが多いのですが、1月28日までは黒雲マーク(雨の可能性がある曇り)や雪ダルマに傘マーク(雨か雪)の日が多くなっています(図4)。

図4 東京の16日先までの天気予報
図4 東京の16日先までの天気予報

 西高東低の冬型の気圧配置が強まり、強い寒気が南下して晴れるという予報ではありません。

そして、1月29日以降は、お日様マーク(晴れ)の日が続く予報です。

 黒雲マーク(雨の可能性がある曇り)はなく、白雲マーク(雨の可能性が少ない曇り)のみです。

 札幌では、2月に入っても最高気温が0度未満という真冬日の予報があるなど、北国の春はもう少し先の見込です(図5)。

図5 札幌と那覇の16日先までの天気予報
図5 札幌と那覇の16日先までの天気予報

 しかし、那覇など沖縄では連日20度以上の日が続き、今週末に雨が降るものの、来週からしばらくは晴れの日が続く予報です。

冬の土用

 日本では季節の移り変わりをいろいろな呼び方で表現しています。

 このうち、立春、立夏、立秋、立冬の前の約18日間を土用といい、季節の移行期間と考えてきました。

 冬、(冬)土用、春、(春)土用、夏、(夏)土用、秋、(秋)土用と一年が巡ります。

 そして、「(夏)土用の丑の日にウナギを食べる」というように、土用には特定の日に特定の食べ物を食べる習慣がありました。

 季節の変わり目は、体調管理に特に気を付けることが大切で、旬の食べ物や体にやさしい食べ物をとるという、昔から伝わる日本人の知恵と思います。

(冬)土用は、未の日に「ひ」のつくものや赤いものを食べる。

(春)土用は、戌の日に「い」のつくものや白いものを食べる。

(夏)土用は、丑の日に「う」のつくものや黒いものを食べる。

(秋)土用は、辰の日に「た」のつくものや青いものを食べる。

 令和3年(2021年)の(冬)土用は、1月17日から2月2日までで、このうち、未の日は1月23日になります。

 西高東低の冬型の気圧配置もゆるみ、ほぼ全国的に雨が予想されている1月23日(土)の土用の日には、体調管理のため、ヒラメ、ヒラマサ、トマトなど、「ひ」のつくものや赤いものを食べてみませんか(図6)。

図6 各地の天気予報(1月23日の予報)
図6 各地の天気予報(1月23日の予報)

タイトル写真の出典:著者撮影。

図1の出典:ウェザーマップ資料をもとに著者作成。

図2の出典:気象庁ホームページ。

図3の出典:気象庁とウェザーマップ資料をもとに著者作成。

図4、図5、図6の出典:ウェザーマップ提供。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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