ノルウェー国営局でストライキ、ニュースの時間がパンダ特集番組に
日本では、NHK職員が給料アップを求めてストライキをし、受信料を支払う視聴者にニュースや番組コンテンツが届かないということがあり得るだろうか。
ノルウェー国営放送局NRKの職員およそ1700人が、15日13時からストライキを始めた。
ノルウェー・ジャーナリスト連盟は、NRK職員を代表して、NRK側と給与の交渉にあたっている。
連盟によると、NRK職員は、他のメディアハウスで働く職員に比べて、年11万ノルウェークローネ(約150万円)収入が低い。それを不平等だとして抗議している。
人気国営局のニュース番組がない毎日が始まる
「NRK職員はストライキ中のため、ローカルニュースをお伝えすることができません」。
その字幕と共に、いつもの夕方のニュース番組には、全く別の番組が放送された。
毎日のニュースが、まとめて確認できる19時の人気ニュース番組「ダーグスレヴィーエン」では、代わりにパンダの特集番組が流れる。
のほほんとしたパンダの姿が延々と流れ、筆者は思わず笑ってしまった。
NRK側は視聴者に対して謝罪している。
ネット記事、テレビやラジオ放送はどうなる?
ストライキ中、テレビではいつものニュース番組が、全て放送されない予定。その時間帯には、過去のアーカイブ番組が放送される。
ラジオのコンテンツは、労働組合に加盟していない職員らによって構成される。短いラジオニュース放送は、NTB通信社からの素材を使用。
nrk.noの公式HPは、通信社や他社のニュース素材で構成される。
一部のNRKのSNSのアカウントは、一時的に停止される。
ナショナルデー生中継、どうなる?
このストライキ、実はタイミング的には最悪だ。
17日、ノルウェーでは、国の発展と憲法記念日を祝う祭り、ナショナルデーが控えている。
職員がすでに業務から離れていることから、ナショナルデーの生放送には影響がでることが確実。
延々と放送されるNRKの生中継を楽しみにしている人は多い。
野党左派「中央党」のボルク国会議員は、「外出できない多くの高齢者が、ナショナルデーの生中継番組を楽しみにしている。ストライキに理解はできるが、NRK職員と労働組合は、ナショナルデー放送ができるように配慮するべきだ」と批判(VG)。
与党右派の「進歩党」のビョルンスタ国会議員は、「NRKは、視聴者に受信料を返金するべきだ」と批判している(VG)。
NRKニュースがなくても、日常生活は送れるが?
ノルウェーでは、テレビでみるニュース番組といえば、NRKとTV2の2局がメイン。日本のようにたくさんのテレビ局はない。
NRK公式HPでのネット記事の更新は非常にスローになっているが、他のメディアハウスではいつも通りにニュースが更新されている。
国民にニュースが全く届かなくなっているわけではない。
だが、人気NRKのニュース番組が見れないとなると、いつもの楽しみが少し減っている人もいるかもしれない。
筆者はコーディネートやリサーチの依頼でNRKと頻繁に連絡を取るため、このストライキで仕事に支障は多少出ている(ストライキ中の人が多いため、返事がこない)。
いつまでニュースがない日が続くか、わからない
NRKのストライキは、2006年以来。
その時には職員が職場に戻ってくるまでには、8日かかった。
1990年のストライキでは、職員が職場に戻るまでに、25日かかった。
Photo&Text: Asaki Abumi