猫-ヒト間でコロナウイルスは伝染する? 飼い主が知っておきたい基礎知識
中国・武漢で、新型コロナウイルス感染症が発生し、この報道が連日続いています。感染経路は、まだ、不明で、多くが武漢の海鮮市場で働いていたので、市場と何らかの関わりがあることが分かっています(同市場はすでに閉鎖されています)。
この報道は、人の話ですが、動物にもコロナウイルスがあります。そこで、今回は、猫のコロナウイルスとFIP(猫伝染性腹膜炎)について、解説します。
なぜ、愛猫家、愛犬家はコロナウイルスを勉強しないといけないか
いまや猫や犬は、室内飼いなので、人と濃厚な接触をしています。そのため、コロナウイルスについて、知っておくことは重要です。
ヒトコロナウイルスは、
・ヒトにだけかかる風邪のウイルス
・動物から感染する重症な肺炎ウイルス
のふたつがあり、ある種類のコロナウイルスは、動物からヒトに感染するからです。過去に動物からヒトが感染したコロナウイルスがありました。以下です。
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)
コウモリのコロナウイルスがヒトに感染したと考えられています(ハクビシンも感染源として考られていましたが、2020.01.21現在はコウモリになっています)。
中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)
ヒトコブラクダが種の壁を超えてヒトに感染したと考えられます。
コロナウイルスは、種をあまり超えないといわれていますが、歴史を見ると、コウモリからヒト、ヒトコブラクダからヒトということもあることを頭に置いておきましょう。
動物のコロナウイルス
コロナウイルスは犬や猫や家畜や野生動物に感染します(イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ニワトリ、ウマ、アルパカ、ラクダなどのペットや家畜に加え、シロイルカ、キリン、フェレット、スンクス、コウモリ、スズメなど)。
ペットの命に関わるウイルスとして、猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)があります。いまのところ、これは猫だけで、ヒトには感染しません。
猫伝染性腹膜炎(FIP)について
(原因)
猫コロナウイルスが変異して猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)になります。
コロナウイルスは多くの猫がすでに感染しているものと考えられています(血液検査で、FIPの抗体価を調べられますが、発症しないとわかりにくい。一方、腹水や胸水の検査だとFIPの有無が明確にわかります)。
(感染経路)
・排泄物(主に糞便)
・猫同士の舐め合い。
(なぜ、猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)に変異するか)
・ストレス
・多頭飼い
・免疫力の低下
(好発年齢)
・生後1年以内
・老齢になるとまた発症率が上昇します。
(症状)
・腹水の貯留
腹水が溜まります。胸水の場合もあります。水が溜まるタイプは「ウェットタイプ」呼ばれ、液の貯留を認めないものは「ドライタイプ」と呼ばれます。
・高熱
・黄疸
・目の炎症
・慢性下痢
・嘔吐
・腎不全
・肝不全
・呼吸器症状
など様々な症状が出ます。
(治療)
・対処療法
・ステロイド
(新薬がアメリカで出たようですが、まだ、日本は認可されていない。効果がよくわかっていない)
猫コロナウイルスから猫伝染性腹膜炎ウイルスに変異して、症状が出れば、助かる確率はかなり低い。
飼い主のできること
・密飼育を避ける(ストレスの緩和)
・下痢パネルという検査で、コロナウイルスの有無を調べる。
・室内飼いをする(コロナウイルス の感染を防ぐ)。
・排泄物を速やかに片付ける。
・トイレなどは、次亜塩素酸ナトリウムやアルコールなどで毎日、消毒する。
まとめ
猫にもコロナウイルスがありますが、人にかかることは、いま(2020.02.21)のところないです。猫にストレスをかけないなどして、猫コロナウイルスから猫伝染性腹膜炎ウイルスに変異させないことです。そして、衛生的に飼育することで、猫伝染性腹膜炎(FIP)を防ぐことができます。
猫と一緒に暮らすことで、至福の時間を送ることができます。そのためにも科学的知識をバージョンアップして、ウイルスのことも知りましょう。猫も飼い主であるあなたも健康に楽しく暮らしていきましょう。