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「人としてどう生きていくのか」日本凱旋の本田圭佑が広島戦の前日会見で語った被災地と平和への熱い想い

金明昱スポーツライター
11日、ACLのサンフレッチェ広島戦の前日会見に登場した本田圭佑(筆者撮影)

「広島との対戦が不思議な感じ」

 サンフレッチェ広島とのACL第2節の対戦のため、日本凱旋を果たしたMF本田圭佑。11日の前日会見の姿を見せた本田は、率直に現在の心境を吐露していた。

 本田が日本でJリーグクラブと対戦するのは、名古屋グランパス所属時代の2007年以来。そんなこともあり、日本の地を久しぶりに訪れることで、様々な思いを抱えていたのは確かだった。

 広島戦を控えて感想を問われた本田は「変な感じですよね」と語り、言葉をつないだ。

「日本代表として日本でプレーすることはあったわけですから。日本人の僕がオーストラリアのクラブで、日本のクラブを相手にするということは、すごく不思議な感じはしています。すごく楽しみでありますし、明日はいい試合がしたいです」

 対戦するサンフレッチェ広島の印象については、「チームとしてすごく組織的にプレーするという印象があります。誰かに頼った戦術ではなく、誰がプレーしても一定以上の成果を上げられるような戦術でチームを作っている印象を受けています」と話す。

 また、メルボルンの良さや強さ、特徴についても聞かれた。すると本田はこう言葉を返した。

「中々、こういう機会がないなかで、オーストラリアのリーグはJリーグよりも歴史が浅くてJリーグに追いつけ追い越せでがんばっているリーグです。数少ないオーストラリアのサッカーを見せる機会があるわけですが…」

Jリーグと豪州リーグの違い

 その上で本田はかつて在籍したJリーグとの違いについて語り始めた。

「Jリーグのように多くのブラジル人選手が築いてきたような形が(オーストラリアには)ないんですけれど、とはいえ、オーストラリアはラグビーの歴史があります。フィジカル的にはものすごく強い。それに独特なスピーディーなサッカーを展開するチームが多くい。そこに僕なりの経験をミックスさせながら挑む試合になると思うので、(明日は)内容にもこだわりたい。勝ち負けにもこだわりたいなと思います」

 メルボルンは第1節で韓国の大邱FCに1-3で逆転負けを喫している。ここはアウェイながらも勝利を手に入れたい気持ちは強い。

 そして話は東日本大震災から8年目となる今日の話になった。このタイミングで日本で試合することに、本田は特別な思いがあった。

「サッカーファンだけじゃなくて、普段からサッカーを見ない人、さらに8年前の傷が癒えていない人。スポーツという側面からですけれども、少しでもいい影響を与えられればサッカー選手冥利につきるなと思います」

原爆ドームに足を運び感じたこと

 そして8年という歳月にも思いを馳せた。

「早いですよね。もう8年かと率直に思います。同時に今、広島にいて、原爆ドームにも足を運んだんですけれど、もう70年以上も経つんですよね。試合をしに日本に帰ってきたんですけれども、タイミング的にはサッカー以外も考えさせられる機会があって……」

 そのあと、少し考える間があったと思う。

 本田は改めてサッカー選手であることだけでなく、広島の地に足を踏み入れることで、自分の人生観を振り返るきっかけを得たようだった。

「(広島に来たことで)いい意味で、人として、サッカー選手として、どう生きていくのか考えさせられる訪問になっています。ACLに感謝しています」

 本田は次なる挑戦についても口にした。

「今は新たな挑戦をしています。これはこれまでW杯だけを目指してきたサッカー選手。新たな挑戦をメルボルン・ビクトリーで日々のトレーニングから目指していますし、2020年の五輪もそうです。まだ、手探りな部分がありますけれども、手ごたえを感じて、成長を感じながら挑戦しています」

 そして最後に、明日、故郷の日本でプレーする楽しみについてこう語るのだった。

「明日はいろんな思いを込めて戦いたい。たまにしか帰ってこない日本なので。気持ちを少し上乗せしてプレーしたいと思います」

 東日本大震災から8年目の今日。そして広島を訪れ改めて感じたこと。そしてメルボルン・ビクトリーの一員としてJクラブと試合すること――。

 本田は明日、さまざまな思いをピッチで表現し、ぶつけてくれることだろう。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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