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今冬一番の寒気の南下と北陸の大雪

饒村曜気象予報士
吹雪による大雪で家が埋まるイラスト(提供:イメージマート)

強い寒気の南下

 令和6年(2024年)1月23日の気象衛星画像をみると、日本海北部には寒気を伴った低気圧の渦があり、日本海には、強い寒気の吹き出しを示す筋状の雲がびっしりと密集しています(図1)。

図1 寒気の吹き出しに伴う日本海の筋状の雲と、日本海寒帯気団収束帯(図中のA~B~C)(令和6年(2024年)1月23日12時)
図1 寒気の吹き出しに伴う日本海の筋状の雲と、日本海寒帯気団収束帯(図中のA~B~C)(令和6年(2024年)1月23日12時)

 大陸の沿岸から筋状の雲が発生するまでの距離(離岸距離)が短く、この寒気は強いということが推定できます。

 また、日本海西部には空気が集まって積乱雲が発達している日本海寒帯気団収束帯ができ、東端が北陸地方にかかっていることから、北陸地方では大雪の可能性があることを示しています。

 1月24日~25日は、日本海北部の低気圧が北海道を通過し、日本の東で発達する見込みです(図2)。

図2 予想天気図(左は1月24日9時の予想、右は1月25日9時の予想)
図2 予想天気図(左は1月24日9時の予想、右は1月25日9時の予想)

 このため、西高東低の気圧配置が強まって今冬最強の寒波が南下する見込みです。

 北陸地方では大雪となるおそれがあり、発達した雪雲が太平洋側まで流れ込む所がある見込みです(図3)。

図3 48時間予想降雪量分布図(1月24日6時から26日6時までの48時間予想)
図3 48時間予想降雪量分布図(1月24日6時から26日6時までの48時間予想)

 48時間予想降雪量は、北陸から東北南部日本海側の山沿いでは100センチを超え、鳥取県以北の日本海側の地方では40センチを超える所もある見込みです。

 大雪や路面凍結による交通障害に警戒してください。

 また、北日本から西日本の日本海側では落雷や竜巻などの激しい突風に注意してください。

 西~東日本の太平洋側では晴れる所が多いですが、九州や四国では雪の降る所がありそうです。

 冬型の気圧配置が強まると、日本海側の地方は雪、太平洋側の地方は晴れるというのは、一般的な話です。

 南下する寒気が強いと積乱雲が発達し、脊梁山脈(本州を背骨のように連なっている一連の山脈)の中で標高の低い所をすり抜けたり、山脈を乗り越えたりして太平洋側に雪を降らせますので、東海道新幹線など交通機関への影響にも注意が必要です。

 強い冬型の気圧配置で雪が降る太平洋側の地方は、標高の低い中国山地や、山脈が途切れている所を通って雪雲が入ってくる関ヶ原付近などというように決まっており、正確な予報が可能ですので最新の気象情報を入手し、注意・警戒をしてください。

真冬日と冬日の推移

 強い寒気の目安として、上空約5500メートルの気温が使われています。この気温が氷点下30度なら強い寒気の目安、氷点下36度なら大雪の目安とされています。

 現在、南下してきている寒気は、日本上空約5500メートルで氷点下30度以下の範囲が伊豆諸島北部まで南下するという予想です(図4)。

図4 上空約5500メートルの気温分布予想(1月24日朝の予報)
図4 上空約5500メートルの気温分布予想(1月24日朝の予報)

 また、氷点下36度以下という寒気は、近畿北部から関東南部まで南下してくると予想されています。

 南下してくる寒気の中心は氷点下40度以下で、この冬一番の強い寒気です。

 ただ、今冬の特徴として、寒気の南下は長続きしないということがあります。

 今回の強い寒気の南下も1月25日までと、長続きしません。

 令和5年(2023年)12月22日(冬至)の頃に西日本を中心に南下してきた寒波(冬至寒波)では、福岡では最高気温が12月21日に3.7度、22日に4.3度と、平年の最低気温をも下回る厳しい寒さでした。

 12月22日に全国で最高気温が0度を下回った真冬日を観測したのは264地点(気温を観測している全国914地点の約29パーセント)、最低気温が0度を下回った冬日は774地点(約85パーセント)もありました(図5)。

図5 真冬日、冬日、夏日の観測地点数の推移(2023年11月1日~2024年1月23日、1月24日以降は予報)
図5 真冬日、冬日、夏日の観測地点数の推移(2023年11月1日~2024年1月23日、1月24日以降は予報)

 1月中旬にも寒波が南下してきましたが、冬至寒波に比べると、冬日や真冬日のピークが小さく、冬至寒波には及ばなかったといえるでしょう。

 全国で1月24日の真冬日は211地点(約23パーセント)程度、冬日は736地点(約81パーセント)程度、予想されていますので、現時点では冬至寒波を超えるかどうか微妙といえそうです。

能登半島の16日先までの予報

 元日に最大震度7の能登半島地震が発生した能登半島は、元日以降、連日雨や雪の日が続いています。

 1月24日~26日も雪だるまマーク(雪)で、最高気温は2~4度の予報です(図6)。

図6 石川県・輪島の16日先までの天気予報
図6 石川県・輪島の16日先までの天気予報

 能登半島地震で損傷を受けた家屋では、積雪の重みによる倒壊に注意が必要です。

 降水の有無の信頼度は、1月26日までが、5段階で一番良いAという予報で、来週は一番悪いEや二番目に悪いDが多くなっていますが、週末以降は、最高気温が10度近くまであがり、お日様マーク(晴れ)や傘マーク(雨)が増えてくる予報となっています。

 能登半島地震の被災地では、いましばらく寒さや雪に対する注意を継続する必要があります。

図1の出典:ウェザーマップ提供資料に筆者加筆。

図2の出典:気象庁ホームページ。

図3、図4、図6の出典:ウェザーマップ提供。

図5の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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