なぜペットボトルの賞味期限表示から日付を抜くと「働き方改革」につながるのか
ライバル同士の大手食品メーカー5社が新しい物流会社を設立
味の素、ハウス食品グループ本社、カゴメ、日清フーズ、日清オイリオグループの大手食品メーカー5社が、2019年4月に物流会社を設立すると発表した。食品業界で課題となっているドライバーなどの人手不足や、それに伴う人件費上昇の解消を目指している。
ライバル関係の大手食品メーカー5社が商品共同配送へ(NHK NEWS WEB 2018年4月27日4時26分)
製・配・販の連携によるサプライチェーン全体の効率化
同様の取り組みは、食品メーカーだけでなく、食品卸会社や小売を含めて始まっている。
三菱食品株式会社は、曜日によって、トラックへの積載量が異なるところに注目した。特定の曜日に発注や納品が集中することで、4トントラックに積める量を上回ってしまい、増便しなければならなくなる。そこで、一社ごとではなく、複数のメーカーの共同物流グループ単位で物量を分析し、曜日による凸凹を平準化し、以前は増便しなければならなかったのを平準化し、増便ゼロを達成した。この取り組みは、第5回食品産業もったいない大賞の農林水産省食料産業局長賞を受賞した。
賞味期限の年月表示化も物流の効率化を生む
食品メーカーやスーパーマーケットの間では、ここ数年、賞味期限の年月日表示から年月表示への動きが少しずつ増えている。日付が入っている賞味期限から日付表示を抜かすということだ。
今でこそ様々な分野の食品に広がってきているが、この動きは、清涼飲料水業界で早かった。2013年5月の製造分から、2リットルサイズのミネラルウォーターで賞味期限日付を抜く(省略する)ようになった。
賞味期間が3ヶ月以上あれば賞味期限の日付は書かなくていい
賞味期限は、現行の法律では、賞味期間が3ヶ月以上あれば、日付を省略することができる。とはいえ、食品メーカーは、生産管理や在庫管理、あるいは危機管理のために、この製品を、いつ、どこで、どの製造ラインで、何時に作ったかという詳細情報を把握しなければならない。すなわちトレーサビリティ(追跡可能性)を担保しなければならない。たとえ賞味期間が3ヶ月以上あっても、賞味期限を年月日表示にしている食品メーカーがまだまだ多い。一方、年月表示にして、ほかの部分で詳細情報を管理しているメーカーもある。たとえば、アルファベットの記号などで、製造工場や製造の日付、時間帯、製造ラインなどがわかるようにする方法である。
なぜペットボトルの賞味期限表示から日付を抜くと働き方改革につながるのか
食品業界では「日付後退品」と呼ばれるものがある。前日に納品した商品の賞味期限より、当日納品するものは、1日たりとも古くてはいけない。同じかもしくは新しくなければいけない。古いと「日付後退品」ということで、納品が拒否される。となると、売り先を失い、納品するためにトラックが新たに動くことになる。ドライバーも車輌もガソリンも余分に必要になる。
賞味期間が3ヶ月以上あるものは、年月表示にすることで、「日付後退品」の発生が少なくなる。そうなれば、全国でトラックが、たった「1日」の違いを無くすために頻繁に動く必要もなくなる。ドライバーの労働力や、ガソリン・車輌の浪費も少なくなる。二酸化炭素の排出も少なくなり、環境への負荷も軽減する。サプライチェーンの効率化、ひいては「働き方改革」にもつながる。
世界の生産量の3分の1の食品を捨てている
世界の生産量のうち、重量ベースで3分の1を捨てている。その背景には、事業者の商慣習や飲食店での残り、家庭での買い過ぎ・作り過ぎなど様々なものがある。どうせ捨てるのなら、最初から作らなければ、働く人はもっとラクだったはずだ。もちろん、そうはうまくいかないから、いま、このような状況になっているわけだが。。
食品ロス削減は、働き方改革そのものだと考える。
参考資料: