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「総選挙敗北」で反省の弁を述べた日に「竹島」と「元徴用工」問題が再燃! 踏んだり蹴ったりの尹大統領

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
韓国の尹錫悦大統領(大統領室HPから)

 韓国総選挙で政権与党は定数300議席のうち過半数を大きく下回る108議席しか取れず、192議席を獲得した野党陣営に大敗を喫した。敗因については尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の不人気にあるというのが大方の見方である。

 与党内部からも責任を問われている尹大統領は今日、国民に向け自戒を込めたメッセージを発信し、心機一転、経済の立て直しを含め民政に力を入れる決意を表明し、国民の理解を求めていた。

 しかし、野党の反応や世論調査の結果、仮に「反省が足りない」と国民が受け止めるようなことになれば尹大統領は一層苦境に立たされることになるであろう。それと言うのも、尹大統領をレームダックに追い込もうとする最大野党の「共に民主党」をはじめ野党陣営がさらに攻勢を掛けるからである。

 政権の運命を左右しかねないこのような重大時に尹大統領にとっては実にタイミングが悪いことに日本から「好ましくないニュース」が飛び込んできた。日本から「竹島」(韓国名:独島)に関するニュースが発信されたのである。

 上川陽子外相が今朝の閣議で竹島は日本の固有の領土と表記された「2024年外交青書」を報告したとの「共同通信」発のニュースのことだ。

 韓国のメディアは直ぐに反応し、地上波3大ネットワークの「KBS」「MBC」「SBS」だけでなく、「東亜日報」「ソウル新聞」「国民日報」などの日刊紙(電子版)が速報で流し、日韓関係を重視している「毎日経済」や「ヘラルド経済」までもが「日本の外交青書『独島は日本の領土・徴用判決は受け入れられない』」の見出しを掲げ、一面トップで報じていた。

 こればかりはどうにもならない。毎年この時期に日本政府は国際情勢や日本の外交活動に関する外交青書を出すのを慣例化し、外交青書の韓国部分では「竹島は歴史的にも国際法的にも日本の固有の領土である」と記述することが定番となっている。今年に限ったことではない。

 今回はこれに加えて、外交青書には元徴用工問題で韓国大法院(最高裁)が日本企業に賠償支払いを求めた判決について「絶対に受け入れられない」との日本の立場も明記されているようだ。

 韓国のメディアは「日本が独島の日本領土主張を繰り返している」(ヘラルド経済)ことへの反発と、元徴用工問題については日本が責任を分担せず、韓国政府が昨年3月に発表した「第3者弁済解決策」を通じて解決するよう一方的に求めていることにどうやら拒絶反応を示しているようだ。

 韓国政府は「第3弁済解決策」として行政安全部傘下に「日帝強制動員被害者支援財団」を設置し、これを受け皿にして日韓請求権協定に基づく日本からの経済協力金で潤ったポスコ(浦項製鉄)からの寄付金で日本企業に代わって裁判で勝訴した元徴用工ら原告人に補償金を支払っている。

 昨年まで最高裁で勝訴した原告15人の多くが受け取っており、順調に進んでいるようにもみえるが、元徴用工らの訴訟は数件ではない。

 元徴用工らの訴訟は2~3件にとどまらず、20数件に上っており、原告団だけでも800~1000人近くいる。これまでは原告15人に対してポスコが拠出した40億ウォンでカバーできたが、これからは少なくとも8000億ウォンの財源を確保しなければならない。すでに昨年12月には保守派の尹錫悦政権の下で新たに最高裁で日本企業の賠償責任が5年ぶりに確定していた。

 財源を確保するには国会で特別法を制定する必要があるが、それもこれも与党「国民の力」が今回の選挙で過半数を占めてこそ可能で、韓国が一方的に肩代わりする「第3者弁済解決策」に反対する野党が国会で多数を握っている状況下では困難を極める。

 尹政権の「第3者弁済解決策」については昨年の世論調査では韓国国民の6割近くが反対していた。それでも事なきを終えたのは、裁判で敗訴した日本企業も韓国側が設立した財団に寄付することになるとの韓国政府の説明を受け入れたからであるが、現在まで日本企業からの寄付がないことから国民の間では不満がくすぶっていた。そうした矢先のこの「日本発」のニュースである。

 今回の総選挙では日韓関係は争点にならなかったことから政権与党の敗北は日韓関係に大きな影響はないとの見方が支配的だが、圧勝した「共に民主党」は今回の選挙は「新・日韓戦」とのスローガンを掲げ、尹政権の対日弱腰外交を批判し、「親日派」議員の落選運動を展開していた。その結果、尹政権下で日韓関係修復に動いた朴振(パク・チン)前外相と知日派の鄭鎭碩候補(チョン・ジンソク)韓日議連会長が枕を並べて落選したことを考えると、今後の日韓関係は前途多難と言わざるを得ない。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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