オートバイのあれこれ『アメリカを目指したカワサキ・ダブワン』
全国1,000万人のバイク好きたちへ送るこのコーナー。
今朝は『アメリカを目指したカワサキ・ダブワン』をテーマにお話ししようと思います。
皆さんは「ダブワン」を知っているでしょうか。
絶版バイクが好きな人であれば、よくご存知かもしれません。
「ダブワン」とは、カワサキが1966年(昭和41年)にリリースした『W1』というオートバイのこと。
W1は2ストロークの『250 A1サムライ』とともに、カワサキがアメリカ市場へ進出するための切り込み隊長として開発されました。
前年(65年)に作った『メグロK2』をベースに、エンジンの排気量を496ccから624ccまで拡大。
“狙った”624ccではなく、K2のエンジンを限界までボアアップした末の624ccでした。
エンジンを大きくした結果、W1は最高出力47ps/最大トルク5.4kg-m/トップスピード180km/hというスペックを獲得します。
メグロK2は36ps/4.2kg-m/165km/hでしたから、カワサキはわずか1年で大幅にエンジンを進化させたと言えるでしょう。
当時一番人気の英国車にも遜色ないスペックを作り上げたカワサキはついに、アメリカ市場への本格参戦を決意。
外観に関してもカラーリングをアメリカ人好みのキャンディ塗装にするなど工夫を凝らし、満を持してアメリカへW1を送り込んだのでした。
しかし…、W1はアメリカで良い評価は得られませんでした。
理由は、エンジンの振動。
アメリカ人は長距離&長時間クルージングするため快適性をバイクに求めるわけですが、W1はエンジンの振動があまりにも大きく、お世辞にも快適な乗り心地とは言えなかったのです。
走行中にウインカーなどのパーツが緩んで外れてしまうなんてことも多々あり、W1は高性能ではあったけれども品質が追いついていなかったのでしょう。
この後、W1はいちおうW2SSに進化しますが、WシリーズはこのW2SSを最後にアメリカから撤退することになりました。
ただその一方、日本では人気を得ることに成功し、W1S、W1SA、そしてW3へと約10年にわたって進化を続け、生産終了から半世紀が経った現在も一部の絶版車ファンから根強い支持を集めています。
《参考》
川崎壱番 - カワサキ名車列伝