第9波の主流と予想されるオミクロン株「XBB系統」 現時点で分かっていること
2023年5月8日から新型コロナは5類感染症に移行しますが、新型コロナウイルスはそれとは関係なく進化を続けていきます。
日本国内でもオミクロン株の亜系統であるXBB系統の占める割合が増えてきました。
次の流行の主流となる可能性が高いXBB系統について現時点で分かっていることを整理しました。
日本でもついにXBB系統が主流に
日本国内の変異株の割合は、2022年10月以降BA.5の割合が緩徐に減り、BN.1やBF.7といった様々な変異株が少しずつ割合を増やしてきていました。
しかし、2023年2月頃からXBB系統の割合が急激に上昇し、4月13日に公表された東京都の変異株の割合によると、3月下旬には都内ではXBB系統が50%を超えていることが分かりました。
アメリカではXBB系統はすでに9割以上を締めており、日本でもおそらくこのままさらに高い割合になっていくものと推定されます。
XBB系統の特徴は?
現在日本国内で広がっているXBB系統には、XBB、XBB.1.5、XBB.1.9.1があります。
Xで始まる変異株は「組換え体」を表しており、XBBはBJ.1とBM.1.1.1という2つのオミクロン株の組換え体です。
2022年後半からXBBがシンガポールなどの国で広がり、2023年になってからはXBBから派生したXBB.1.5がアメリカで主流になっています。そして、さらに欧米ではXBB.1.9.1の検出が増加しています。
XBB系統は、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質にR346T、N460K、F486Sなどの特徴的な変異を持っており、従来のオミクロン株よりも免疫から逃れる性質が強くなっていると考えられています。XBB.1.5はさらにS486Pという変異が加わることでウイルスが細胞に侵入する入口であるACE2受容体に結合しやすくなっておりXBBよりも相対的に1.2倍実効再生産数が高くなっていると東京大学の佐藤研から報告されています。またXBB.1.9.1はイギリスの保健安全保障庁の解析ではXBB.1.5よりもさらに感染者が増えやすいことが観察されているとのことです。
2022年後半からXBBが広がっていたシンガポールで行われた、過去の感染と従来のmRNAワクチン(1価ワクチン)の接種よるハイブリッド免疫がどれくらいBA.4/5とXBBの感染を防ぐことができるかについての研究では、過去のオミクロン株BA.1やBA.2による感染とワクチン接種によるハイブリッド免疫が、BA.4/5による感染を防ぐ効果が高かったのに対し、XBBによる感染を防ぐ効果は大幅に落ちていました。
このことからは、過去のオミクロン株感染者やワクチン接種者もXBB系統には感染してしまうことが、これまでよりも多くなることが懸念されます。
現時点ではこのXBB系統が広がっている地域において、爆発的に感染者が増えているような状況は観察されておらず、過度に心配する状況ではないだろうと考えられますが、日本は海外と比較するとオミクロン株に感染した人の割合が4割程度と高くないことから、他の国よりも大規模な流行に繋がる可能性はあります。
幸いなことに、ノースカロライナ州で行われた2価ワクチン(オミクロン株対応ワクチン)の有効性を検討した研究では、XBBやXBB.1.5が拡大した後も2価ワクチンによる感染予防効果は保たれており、XBBやXBB.1.5にもある程度有効であると考えられます。
特に重症化リスクの高い方は、5月から2回目の2価ワクチンの接種が始まりますので、次の流行に備えて接種をご検討ください。
5類感染症となる5月8日以降に変異株のサーベイランスを縮小、もしくは終了する自治体が出てくると、つぶさに変異株の動向を追うことが難しくなるかもしれません。
5類移行後も、現在主流の変異株と大きく特徴の異なる新たな変異株が出現した際には迅速に性状を把握し対策を行うために、速やかに変異株を検知できる体制を維持すべきかと思います。