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プレミアムフライデーのテコ入れには、消費喚起策への原点回帰を 経団連企業の奮起が必要だ

常見陽平千葉商科大学国際教養学部准教授/働き方評論家/社会格闘家
プレ金は毎月、ネットニュースのネタ提供をしてくれて感謝です。(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

今月もプレミアムフライデーだった。毎月、話題を提供してくれている。今月もTwitterのトレンドに入っていた。「月末、半期末なんて休めるわけないだろ」と。しかも、日テレ系で『天空に城ラピュタ』が放送される日だ。仕事を早く切り上げて消費活動を行うなんていう活動をするわけがない。

冗談はさておき、なぜ、この月末なのだろう。経団連の榊原会長は9月11日の記者会見で、プレミアムフライデーの総括、見直しについて定例記者会見にてコメントした。そのコメントから確認してみよう。

開始から半年が経過したので、一度、総括する必要がある。東京をはじめとする首都圏や静岡など一部の地域では継続的にプロモーションが行われているが、全国レベルでは、ほとんど浸透していない地域もあり、首都圏でも一時の盛り上がりが見られないという課題もある。給料日後の方が消費拡大への効果が大きいと考え、月末金曜日にしたが、月末は決算や営業の追い込みといった繁忙期に重なるという声はある。今後、見直すとすれば、月末というタイミングもその対象になるだろう。

出典:経団連HP

給料日の後だというのが根拠だと確認できる。ただ、榊原会長もコメントしているように、月末は言うまでもなく忙しいのである。月初に移るというが、今度は経理などが忙しい。いや、他の職種も会議などが多く忙しいのだ。

邪推ではあるが、最初からこのようなことは想定していたのではないか。上手くいかないことの口実を用意していたかのように見える。

そもそも、プレミアムフライデーの効果測定は難しい。消費が増えたとしても、それがプレミアムフライデーによる要因かどうかは測定しきれないからだ。週末の消費が前倒しになる、金額が高い消費行動からそうではないものに移るなどの可能性もあるためだ。

私はプレミアムフライデーを当初から一貫して批判してきた。もともと、経産省マターであり、消費喚起策であるはずなのにも関わらず、途中から働き方改革の策のようにすり替えられてしまった。いずれにせよ、中途半端である。この春、『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社)を発表したが、そこで述べたように、仕事の絶対量、任せ方、請け方、クオリティなどが定時に帰れない理由であり、日本の雇用システム、労働市場とも連動したものになっており、根が深いのだ。ここにメスを入れない限り、成果は生み出しにくい。プレミアムフライデーの「プレミアム」とは、働き方改革が進んでいて、給料もよい経団連企業とその従業員を指しているのではないかとさえ思えてしまう。

もともと、筋が悪いものではあるが、経団連会長の他、同時期には経産相も見直しを表明している。経団連会長が述べたような、総括が必要なだけではく、ここは「消費喚起」という原点回帰が必要ではないか。

いまや、経団連企業ですら、プレミアムフライデーを口にすることすら恥ずかしいかのように見えてしまう。労働者を早く帰宅させる仕掛けももちろん必要だが、ここは消費したくなる仕掛けの案出しを加盟企業、特にB2Cビジネスの企業に呼びかけるべきではないか。個人消費の低迷に歯止めをかける仕掛けが必要だ。

それでも上手くいかないのなら、なぜ上手くいかなかったのかという教訓を振り返り、まとめるというのも取り組みの成果ではある。

今のところの大きな成果は、皮肉にもネット民に毎月、ネタを提供してくれることぐらいだ。消費喚起への施策を期待する。

ヒカルの復活祭をプレ金に行うなどしたら、面白いのにな。

千葉商科大学国際教養学部准教授/働き方評論家/社会格闘家

1974年生まれ。身長175センチ、体重85キロ。札幌市出身。一橋大学商学部卒。同大学大学院社会学研究科修士課程修了。 リクルート、バンダイ、コンサルティング会社、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師。2020年4月より准教授。長時間の残業、休日出勤、接待、宴会芸、異動、出向、転勤、過労・メンヘルなど真性「社畜」経験の持ち主。「働き方」をテーマに執筆、研究に没頭中。著書に『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社)『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞出版社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)など。

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