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【論文解説】犬は何の動画が好き?犬の視力検査を目指した調査

いわさきはるかサイエンスライター
PhotoAC

動物は人間のように視力検査を行うことができず、現状犬でも視力に関する検査は「目が見えるかどうか」を判定する視覚検査しか行われていません。動物の視力検査を行うに当たっては、まずその動物が確実に見てくれる対象物を知る必要があります。

そこで、ウィスコンシン大学の研究グループは犬がどのような映像を好むか調査を行い、犬の年齢や犬種などと照らし合わせて考察しました。

犬は一体、どのような映像を好むのでしょうか?そもそも好きな映像というのは決まっているのでしょうか?犬のものの見方が垣間見える論文をサイエンスライターの筆者がわかりやすく解説します。

参考:Screen interaction behavior in companion dogs: Results from a dog owner survey

犬が好きなのは「犬の映像」とアニメ

Pixabay
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調査は犬を飼っている人に対するWebアンケートという形式で行われ、1246件の回答が得られました。そのうち何かしらの映像に興味を持った犬は1077匹だったと言います。

犬が見た動画は、動物、スポーツ、アニメなど多岐に渡り、動物の動画には犬、ジャッカル、鳥、猫、リスなどがありましたが、1077匹のうち95%の犬は自分と同じ犬の映像に興味を示しました。他の動物を見た割合は60%台ですので「犬の映像」は犬にとって特別なものであるようです。

一方で、犬とは全く関係ない「アニメ」に興味を示したという犬の割合も76%と高い数値でした。ア二メーションの中の速い動きや色、コントラストは、犬の視覚にとって検出しやすいものであるようです。過去の研究では犬が人間の影の動きを見て反応するという報告もあります。たとえ実際のものと形が異なっても、動きのパターンやコントラストによって人間や動物が動いているように感じているのかもしれません。

犬も人間と同じで年と共に目が見えづらくなる?

Pixabay
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調査の対象となった犬の年齢、性別、犬種などはばらばらでしたが、映像に興味を示した犬は若い犬が多く、12歳を超えた犬はほとんどいませんでした。冒頭にも書いた通り犬は細かい視力の測定が行えず、年齢が視力に及ぼす影響については知られていませんでしたが、人間と同じように年をとると視力が衰えている可能性があります。

また、犬種別に見ると、映像に興味を示した犬は牧羊犬や猟犬などが多かったそうです。牧羊犬は「動き回る羊のようすを見ること」、猟犬は「獲物を目で追うこと」が求められる犬種であり、視覚的な行動パターンを持つと言われています。ただし、これらの犬種は人への協調性が高い犬種でもあるため「人が画面を気にしている」といった状況に影響された可能性も否めません。今回の調査はこのような飼い主と犬との相互作用や、飼い主の主観によるアンケート回答への影響を考慮する必要があります。

犬の好きな映像を調べることは犬の視力検査法確立への第一歩

先述の通り今回のアンケートは飼い主が回答していて客観性に乏しく、飼い犬が特に映像に興味を示さなかった飼い主が回答しなかった可能性も否めません。研究グループは映像に興味を示さない犬はもっと多いのではないかと言及しています。とはいえ、アンケート結果の普段の行動を見ると、遊びや日常生活で視覚優位な犬が映像に興味を示した傾向が示されています。犬の視力に個体差があり、その個体差を「映像に興味を示すかどうか」で測れることは、今後犬の視力検査を確立する上で大きな成果と言えるでしょう。

研究グループは今後は無作為に選出した犬たちに対して第三者が評価する調査を検討しているとのこと。人間とコミュニケーションをとることに長けた犬たちなら、視力検査の実用化もそう遠くなさそうですね。

サイエンスライター

保護猫2匹と暮らす理系ライター。猫や犬などペットとして身近な動物の研究をわかりやすく発信します。動物に関する研究は日々進んでいます。最新研究を知っておくと、きっとペットとの生活がより豊かなものになるはず。読めば人も動物もWin-Winになるような記事を書いていきたいと思います。

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