ドラフト候補を探せ!原石ゴロゴロの兵庫ブルーサンダーズ、連覇とNPBを目指して発進!
北海道ベースボールリーグに続いて、本日開幕する関西独立リーグ。
昨年の優勝チームである兵庫ブルーサンダーズは、三木総合防災公園野球場にて、堺シュライクスを迎え撃つ。
大きくメンバーが入れ替わったブルーサンダーズだが、今年の戦力に自信を覗かせる橋本大祐監督。監督1年目ながら早くも“橋本イズム”を浸透させ、チームをひとつにまとめている。
(詳細は⇒兵庫ブルーサンダーズの橋本大祐監督)
■投手
では橋本監督の解説とともに戦力を見ていこう。まずは投手だ。
「先発ローテーションは3人で考えている。藤山(大地)と清水(健介)と高卒2年目でブルサン1年目の小笠原(智一)、あと落合(秀市)の調子が上がってくれば先発に」。
昨年8勝(6敗)の藤山投手を軸に左の清水投手、クラブチームでの経験がある小笠原投手と安定感あるローテに、昨年もドラフト候補だった期待の大型新人・落合投手が加われば怖いものなしだ。
そして橋本監督が誇るのがリリーバーだ。
「独立リーグって、けっこう先発ピッチャーがよくて、だんだん投手のレベルが落ちて後半グダグダになるっていう試合が多いけど、ウチは後ろにいいピッチャーを置いている。昨年もそうだった」
たしかに独立リーグでは、経済的にそう多くの選手は抱えられない。自ずといい投手から先発に回し勝ちである。しかしブルーサンダーズではなんと、さらにいい投手が3人、ブルペンに控えているという。
「左1枚と右が2枚。左の來間(孔志朗)は左で140キロ近く放るし、先発でも十分に使える。今年の大卒で、入ってきたときは大学時代より球が遅くなったかなと思っていたら、この自粛期間中に調子を上げてきて、今、すごくいい球を放っている。
右は2人とも速球派なんで、これはおもしろい。ショートイニングのほうが力を発揮できるんじゃないかな。2軍から昇格した小牧(顕士郎)と高卒ルーキーの(山科)颯太郎。
颯太郎はゆくゆくは先発もさせていこうと思うけど、今は短いイニングで思いっきり力を出せるように。計算するよりも、とにかくバーッと力でいくような感じのほうが本人にはいいかなと思って」。
クローザーは特に決めないという。この3人の誰でも務まるだろうと見込んでいるのだ。状況次第で柔軟に起用する。
「よく言えばJFK」。そう言って橋本監督は笑う。本家JFKのような鉄壁が期待される。
また、ゲーム展開によっては左の西村(太陽)投手などイキのいい投手も出番を待っているように、潤沢なピッチングスタッフが揃っている。
■守備陣形
続いて野手に転じよう。守備陣形はこうだ。
扇の要にどっしりと座るのは小山選手。昨年は指名漏れの悔しさを味わい、その雪辱を果たすべく今年に懸けている。
「昨年よりも数段、状態はいい。もともとバッティングはいいし、昨年心配だった肩の調子も今はいい。今年はチームを引っ張っていけるような存在になっているので、本当に楽しみ」。
橋本監督も全幅の信頼を寄せている。
二遊間には最後まで悩んだという。柏木(寿志)選手か新谷(恵右)選手か。ともに、どちらも守れるという。
「どちらかというと新谷は確実にプレーできる選手で、柏木は野性的な感じ。サードの守備範囲が狭いことを考えたら、そこをカバーできるのは柏木かな」。
先日の練習試合でも、サードがトンネルしたボールを横っ飛びで好捕した。肩の強さもあり、結局、新谷選手がセカンド、ショートは柏木選手に落ち着いた。
センターの濱田選手は「足があるので守備範囲が広く、勘もいい。内野経験があるので、本人も『一歩目が早い』と自信を持っている。両翼に守備位置を指示できる。一番、野球をよく知っているので助かる」と、外野陣の司令塔を任せられる。
これで捕手、二遊間、中堅とセンターラインがしっかり固まった。
「レフトにはルーキーの(関)アンディ。守備にはちょっと不安がある。パワーのある子だけど、まだそこまで器用なことができないんで。本当は藤山を守らせたほうが堅いけど…」。
ここで驚きの名前が飛び出した。先発ローテの柱である藤山投手だ。ということは“二刀流”もあるのか。
「今年は投げない日はDHで出るんで。さすがに守備もとなったら、負担が大きすぎるから」。
投げるだけでなく打つ。さらには守らせたいくらい、その能力を高く評価しているのだ。
藤山投手の打撃については後ほど触れよう。
「ライトは梶木(翔馬)。高校のときはピッチャーで140キロ近く投げていたんで肩は強い。守備範囲は広くはないけど、そのへんは濱田がカバーするんで。とにかく肩が強い」。
昨年インパルスに所属していたときは、チーム事情から投手でありながら外野も守っていた梶木投手。打撃がよく、投手より野手のほうが向いているということで転向を勧めたという。
今は投手への未練を捨てて外野に専念している。
■打線
次は、再考の余地はありつつも、ほぼ固まってきたオーダーだ。
1番・梶木翔馬
「出塁率が高くて、思いきりがいい。初球からバーンと振っていくタイプなんで相手ピッチャー的には嫌かなと。ボール球を振らないし、打率がいい」。
よーいドンで打線を勢いづけてくれそうだ。
2番・濱田勇志
「1番が淡泊に打ったとしても粘れるし、いやらしい。足も速い。チームで一番速い。役割的に1番が出なかったら1番の役割ができるし、出たら2番の役割もできる。ランナーがいての小細工ができる」。
守備のくだりでも触れたが、「野球を一番よく知っている」と橋本監督は繰り返す。
3番・柏木寿志
「高卒1年目だけど意識が非常に高いし、野球観もいい。楽しみな選手。1番か3番かなと考えていたけど、木村(豪)コーチに打順を任せたら彼も3番でと。けっこう勝負強いんでね」。
4番・小山一樹
「今年は全部、小山に背負わせようと思ってるんで。チャンスで打つのもそうだし、スカウトが来ているときに打つとか、本当に勝負強い」。
もっとも負担の大きいキャッチャーに4番を張らせるとは。小山選手に懸ける期待の大きさが窺い知れる。
5番・関アンディ
「高校まではスイッチで左に専念すると言ってたけど、でもなんか悩んでいる。右で打ったりね。先日も左ピッチャーなのに左で打ったり。でも試合になったら打つ。パワーもあるし。
ただ、打つこと以外に興味がない、おそらく。守備や走塁が全然できない。でもNPBにいきたかったら打つだけじゃダメよとは言ってるんで…」。
監督の思いに応えられるか。
6番・蔡鉦宇
「バッティングはすごくいいけど、守備があまりよろしくない。今、サードを守っているけど、DHに回してショートの控えの西(優輝)をサードにしようか…」。
ここで先発ローテの柱である藤山投手の名前を挙げる。
「先発しない日は藤山を『6番・DH』でと考えている」。
なんと“二刀流”が実現するのだ。先述したが、勝つためには藤山投手をレフトの守備にも就かせたい。しかしあまりにも本人の負担が大きくなりすぎるので、DHなのだ。そうまでしても使いたい打撃力だ。
「飛距離は一番出る。172cmと小さいけど。小力があって、カーンとライトに打ったら普通にキッピースタジアムの後ろの屋根に当たる(笑)。
距離にして?115mから120mは飛んでいるかな。あのボロボロの重たいボールであそこまで飛ばすんで、プロのいいボールなら、もうちょっと飛ぶかも(笑)」。
7番・仲瀬貴啓(キャプテン)
「選球眼がいいので、四球が多い。ツボにハマれば長打もある」。
8番・新谷恵右
「広角に打てるアベレージヒッター」。
9番・(未確定)
「まだ流動的」。
■橋本野球の鍵は「足」
では、この打線を使って、“橋本野球”はどういう攻撃スタイルを見せていくのだろうか。その鍵は「足」だという。昨年はあまりしなかった盗塁も多く仕掛けるようだ。
「今年はチームが若いんで、ガンガン走っていこかなとは思っている。行ける選手には『行っていいよ』って言ってるんで。こっちが『ストップ!この場面は行かないで』というとき以外は。もちろん(4番の)小山にも走らせる」。
つまり全員がグリーンライトの権利を与えられている。足の速い、遅いは関係ない。どんどんと相手の隙を突いていく。
「先日の柏木なんか、キャッチャーがショートバウンドを1mもないくらいの前に落としたら、もう走っていた(笑)」。
そう言って、目を細める。そんな隙を逃さず二塁を陥れることができるというのは、常に準備ができているからであろうし、状況判断や冷静に周りを見る力があるのだろう。
「全員がまだそこまで意識できていないんで、みんながそういう意識になれればいいなと。走塁はある程度、センスもあるけど、バッティング練習のときにいかに試合を想定してランナーの練習ができるか。その意識づけはしている」。
「何年かブルサンを見てきた中で、能力的に今年が一番強い」と橋本監督も手応えを深めている2020年のブルーサンダーズ。
チームの連覇と、ひとりでも多くNPBのドラフト指名を受けること。そのどちらも手に入れるべく、青い戦士たちは突き進む。
(表記のない写真は球団提供)