ノート(37) 検事が供述調書の中に「作文」を挿入する際の隠れた意図
~解脱編(9)
勾留12日目
写真撮影は可能なのか
前日の取調べで改ざん状況を再現した際、立会の検察事務官がデジカメを使い、写真を撮影していた。記録に残し、証拠として使うためだった。
その時は特に違和感を覚えなかったが、一夜明けてよく考えてみると、検察側が拘置所の検事調べ室にデジカメを持ち込み、撮影することなど許されるのか、という疑念が湧いてきた。
他方で拘置所は、施設の規律や秩序を維持するといった理由を挙げ、弁護人が接見時に被疑者の身体などを撮影することはおろか、接見室にデジカメを持ち込むことすらも禁じているからだ。
接見室内の会話は外まで丸聞こえなので、勝手に写真撮影などを行っていた場合、刑務官が接見室に立ち入り、接見の中止や画像データの削除を求めたり、接見そのものを制限するといった措置をとっている。
この結果、例えば被疑者が逮捕時や拘置所内で暴行を受けたといった訴えをしていても、弁護人は自ら直ちにその負傷部位などを撮影し、証拠として残しておくことができないわけだ。
現在では最高裁もこうした結果を是としており、迂遠でも弁護人は改めて裁判官に検証などの証拠保全手続を請求すべし、という立場だ。
もちろん、取調べと接見とを同列に扱うことなどできない。しかし、他方で裁判官の検証令状がなく、緊急性すらないのに、検察であればデジカメの持ち込みや写真撮影を自由に認めるということだと、拘置所が捜査当局に肩入れしていると見られかねず、中立性や公平性を欠くと言わざるを得ないだろう。
接見の録音録画は?
むしろ、取調べを録音録画するのが当たり前という時代になれば、弁護人からも接見時の被疑者の言動などを録音録画し、証拠として残しておきたい、といった要望が出るかもしれない。
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