ノート(38) 拘置所における面会のルール、勾留後初となる家族との面会
~解脱編(10)
勾留13日目
面会のルール
ここで少し、内側から見た大阪拘置所における面会の実情などについて触れておきたい。
頻繁に来所できない遠方の家族がやって来るとか、重要な用件の処理について密に話し合う必要があるといった特別な場合には、面会前に願い出て許可を得ることで、例外的に時間の延長も認められていた。例えば、離婚協議や会社整理、民事訴訟など、人生を左右するような問題を話し合う場合だ。
ただ、一部の者だけを特別扱いすると、結果的に他の者にしわ寄せが行き、不満も噴出する。そのため、原則として面会は平日1回だけ、面会時間は10分間だけ、面会者は同時に3名まで、というのが基本的なルールだった。
こうした制限は、被疑者・被告人や受刑者らが約2千名ほど収容され、やって来る面会希望者も多数に上るにもかかわらず、面会に立ち会う担当職員が8名しか配置されていない、という拘置所側の事情に起因していた。
しかも、面会室は15室だけで、通常の面会で使用できる部屋は12室しかなく、立会職員の関係で常時稼働しているのは最大でも8室程度だった。この結果、拘置所が処理し切れる面会件数も、1日平均で200件程度にとどまらざるを得なかった。
面会の回数や時間を増やすためには担当職員や面会室を増やす必要があったが、人員配置や予算配分などの関係から困難だ、というのが拘置所側の見解だ。
10分間と聞くと、意外に短いと思う方も多いだろう。しかし、実のところ、拘置所など刑事施設におけるルールを定めた法律や法務省の規則では、30分を原則としつつも、「5分を下回らない範囲内で、30分を下回る時間に制限することができる」と規定されている。
その意味で、5分未満だと違法だが、10分間であれば違法ではない、というのが拘置所側の理屈だ。
面会の意義
確かに、職員の多忙ぶりも理解できる。しかし、身柄を拘束され、社会から隔絶されている者にとって、面会は家族や友人らと直接会い、その安否を眼や耳で確認できる極めて貴重な機会だ。面会の実現は、社会復帰に向けた架け橋を強固にすることにもつながる。
それこそ、家族や友人らから見捨てられ、誰一人面会に来ないという者も現にいるが、自暴自棄になるし、社会に出ても受け入れ先がないということで、再び犯罪に手を染めるといった悪循環に陥ってしまいがちだ。
時間と費用をかけ、わざわざ拘置所まで足を運んできた面会者にとっても、わずか10分ほどで面会が打ち切られる現状は、あまりにも人を馬鹿にした話だろう。「5分を下らない範囲内で」という法令の規定自体に問題があると言わざるを得ない。
1日1回縛りが生む問題
もっとも、10分間という時間制限よりも、1日1回までという回数制限の方が影響が大きい。例えば、午前中にどうでもいい関係者と面会してしまうと、午後に身内が遠方から深刻な話をするためにやってきたとしても、受付で門前払いとなってしまうからだ。
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