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不運な気象の組み合わせ「強風と2月の史上最高気温」が山火事の背景に 栃木県

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
足利市の山火事発生日の天気図 (21日、気象庁出典)

21日(日)、栃木県足利市両崖山(りょうがいさん)山頂で山火事が発生しました。両崖山は、平安時代に足利氏が城を築いた場所であるとともに、人気のハイキングスポットでもあるようです。

山火事発生から5日目となった25日(木)も火が燃え広がって、火は両崖山に繋がる天狗山まで広がっています。

これまでのところ、建物の被害やケガ人などは報告されていません。しかし火は住宅地のすぐそばまで迫っており、177世帯に避難勧告が出されています。

焼失面積は24日(水)17時半時点で約77ヘクタール、これは東京ドームおよそ16個分に相当します。22日(月)時点では約10ヘクタールだったので、2日間で約8倍に広がったことになるのです。

背景に記録的高温と強風

山火事が広がった原因は、記録的な高温と強風にありました。足利市に隣接する佐野市のアメダスのデータは次の通りでした。

21日 最高気温23.1度 (2月の観測史上最高気温)

22日 最高気温22.5度 (2月の観測史上4番目の高温)

23日 最大瞬間風速17.4メートル

24日 最大瞬間風速16.3メートル

火元はハイカーの休憩場所付近とみられ、ここから始まった火災が、2月としては記録的な高温と強風という「不運な気象の組み合わせ」により延焼したと考えられます。

自衛隊などのヘリコプターが空からの消火活動を行っているものの、残念ながら鎮火の見通しは立っていないようです。それどころか、火はさらに広がる可能性があります。栃木県南部では26日(金)に降水確率がやや高まるものの、当分まとまった雨は予想されていないからです。

日本の山火事事情

山火事と言えば、とかくアメリカやオーストラリアなど世界のニュースが注目されがちですが、日本の山火事事情はどのようなものでしょうか。林野庁の統計を紹介します。(2015年から2019年までの5年間のデータ)

【発生数】

山火事の年間平均発生数は約1,200件で、焼失面積は約700ヘクタール、損害額は約3.6億円です。想像より多い印象を受けます。

【年変化】

近年は昔に比べて森林火災の数が大きく減少しています。昭和22年以降でもっとも多かったのは、8,000件以上発生した昭和49年です。この年の1月21日、東京は乾燥注意報の最長連続記録である65日目に達しました。

【原因】

多くが人間の不注意です。1位がたき火(30%)、次に火入れ(18%)、放火(8%)、たばこ(5%)が続きます。

【発生時期】

山火事の73%が、冬から春(1月~5月)に集中して発生しています。もっとも山火事が多い月が3月、続いて4月、5月となります。2月は4番目に多い月です。

林野庁のホームページを参考に筆者作成
林野庁のホームページを参考に筆者作成

山火事を発生させないために

山火事を起こさないために、林野庁は下のような注意点を載せています。山に入るときは「マッチ1本火事の元」と思い出して、火の取り扱いに注意なさってください。くれぐれも火遊びはなさらぬよう。

  • 枯れ草等のある火災が起こりやすい場所では、たき火をしないこと
  • たき火等火気の使用中はその場を離れず使用後は完全に消火すること
  • 強風時及び乾燥時には、たき火、火入れをしないこと
  • 火入れを行う際、許可を必ず受けること
  • たばこは、指定された場所で喫煙し、吸いがらは必ず消すとともに、投げ捨てないこと
  • 火遊びはしないこと

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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