6年ぶりの四日市、田面の気迫と山本の好投が報われず逆転負け《4/10 阪神ファーム》
先週末は中日との3連戦に臨んだ阪神タイガースのファーム。8日と9日はナゴヤ球場で、そして10日は三重県四日市市で行われました。四日市市営霞ヶ浦第一野球場では2010年4月10日に同じくウエスタンの中日戦があり、阪神ファームは6年ぶりだったんですね。また懐かしい話ですが、この時はスタンリッジ投手が来日初先発。狩野選手がホームランを打っています。結果は4対3で中日の勝ちでした。
6年前は土曜日にもかかわらず7184人の超満員で、それには及ばなかったものの、きのうも4588人というお客様が詰めかけ両チームに声援を送られました。開門前にもう1500人以上の方が並んでいらっしゃったとか。先発が青柳投手と小笠原投手のルーキー同士でメンバー発表の際から盛り上がり、特に昨夏の甲子園を制した小笠原投手はドラフト1位とあって、まさに大歓声!もちろん掛布監督、小笠原監督への声援も大きかったですよ。
また始球式に捕手役で参加された東海地区大学野球連盟の市岡三年理事長は、小豆畑選手が大学時代にお世話になった方で、試合前に対面され「小豆畑くんが覚えていてくれて嬉しかった。久しぶりに話して、この姿をずっと長く見せられるよう頑張りますと言ってくれたことが一番印象に残っている」とおっしゃいます。きのう打席は回らなかったものの、マスクをかぶったのはご覧になりました。今度は1軍の小豆畑選手を観にナゴヤドームへ来ていただけたら最高ですね。こんな再開が大きな励みになるでしょう。
大虎と連動?逆転負けの小虎
さて試合は、先取点を与えるも2回に3本の二塁打で逆転!いったん追いつかれたあと7回に勝ち越しながら、8回に石崎投手が代打の野本選手に2点二塁打を浴びて逆転負けしています。実は同じ頃、甲子園球場の1軍・広島戦でも似たような展開になっていたみたいで。藤川投手が追いつかれ勝ち越しのタイムリー二塁打を浴びた数分後に、石崎投手も二塁打されました。きのうはプロ初スタメンの北條選手が初タイムリーを放つなど、甲子園もいいムードだったのに残念ですね。もちろん四日市も。
《ウエスタン公式戦》4月10日
中日-阪神 6回戦 (四日市)
阪神 030 000 100 = 4
中日 100 020 02X = 5
◆バッテリー
【阪神】青柳-田面-山本-●石崎(4敗1S) / 原口-小豆畑(7回~)
【中日】小笠原(5回0/3)-金子(1回1/3)-岡田(1回)-○武藤(3勝)(2/3回)-S祖父江(1敗5S)(1回) / 武山-木下(9回表)
◆二塁打 陽川、原口、板山、野本
◆打撃 (打-安-点/振-球/盗塁/失策) 打率
1]二:上本 (3-0-0 / 1-1 / 0 / 0) .227
〃二一:西田 (1-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .133
2]左:緒方 (4-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .286
〃捕:小豆畑 (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .000
3]一:ペレス (3-0-0 / 2-1 / 0 / 0) .338
〃二:坂 (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .159
4]三:陽川 (4-1-0 / 1-0 / 0 / 0) .324
5]指:新井 (3-0-0 / 0-1 / 0 / 0) .306
6]捕:原口 (3-2-1 / 0-0 / 0 / 0) .316
〃走中:柴田 (1-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .220
7]遊:森越 (1-0-0 / 0-2 / 0 / 1) .194
8]右左:板山 (4-2-2 / 1-0 / 0 / 0) .242
9]中右:俊介 (3-1-1 / 1-1 / 0 / 0) .333
◆投手 (安-振-球/失-自/防御率) 最速キロ
青柳 4.2回 83球 (2-2-6 / 3-2 / 3.45) 143
田面 1.1回 16球 (2-0-0 / 0-0 / 4.76) 143
山本 1回 16球 (0-3-0 / 0-0 / 0.00) 136
石崎 1回 27球 (1-0-2 / 2-2 / 5.59) 148
試合経過
1回は小笠原の変化球に上本とペレスが空振り三振を喫するなど、三者凡退だった打線。その裏の青柳はショートのエラーで出した溝脇に盗塁を決められ、亀澤への四球と犠打で1死二、三塁になり、4番・エルナンデスの二ゴロの間に1点を失います。しかし2回、先頭の陽川が右中間二塁打を放ち、1死後に原口の右中間二塁打で同点!森越の四球で1死一、二塁となり板山が右中間へのタイムリー二塁打!これで2人を還しました。
右中間二塁打3本で逆転した阪神ですが、3回は三者凡退、4回から6回までは3イニング連続で1四球のみでノーヒット。一方の青柳も、3回はわずか7球で三者凡退に仕留めます。4回は先頭に死球と盗塁、エルナンデスと5番・近藤は打ち取って2死三塁とするも、ここから連続四球(最後は敬遠気味)で満塁…。このピンチは、続く武山を初球の真っすぐで三ゴロに。3者残塁です!
ところが、5回も1死から連続四球を与えて3番・渡辺に右前タイムリーを浴び、なおも1死一、三塁でエルナンデスの遊ゴロの間に同点。ここで青柳は降板し、代わった田面が近藤を遊ゴロに斬って取りました。6回は先頭の松井佑に内野安打(サードベースに当たったか?高く上がったボールを陽川が捕りランニングスロー。惜しくもセーフ)、続く古本の打球が真っすぐ田面の顔を目がけて飛んでいき、グラブを出したけど間に合わなかったようで、その場にうずくまります。
選手や久保投手コーチ、福本トレーナー、審判が集まって様子を確認。かなり強烈な打球だったので心配されたのですが、投球を見て問題なしと判断され試合再開です。次の武山が試みたバントの打球を田面が捕り、すばやく三塁へ送ってアウト!1死一、二塁となって続く石川は併殺打。絶対に点を与えないという気概を感じる1イニングでした。
その田面の思いが7回の攻撃につながります。先頭の原口がフルカウントの末に中前打を放ち、代走・柴田が森越の犠打で二塁へ。ここで投手は岡田に代わり、板山が左前打して1死一、三塁。俊介の二ゴロで柴田が勝ち越しのホームを踏んでいます。その裏に登板した山本は、溝脇、亀澤、渡辺の左打者をすべてスライダーで連続三振!8回の攻撃は2死から新井が四球、柴田は中前打でチャンスを作るも追加点なし。
4対3で迎えた8回裏は石崎がマウンドへ上がりました。先頭のエルナンデスに四球を与え、犠打と暴投で三塁へ。松井佑を捕邪飛に打ち取り2死としながら、古本にはストレートの四球。続く代打・野本に右中間フェンス直撃のタイムリー二塁打を浴びて2人を還します。9回は祖父江の前に三者凡退だった打線。痛い逆転負けを喫して再び借金1、4位に転落です。
監督、コーチが語る田面の根性
まず、顔面直撃か!?という打球を受けた田面投手の件です。当たったのは右あごから首にかけてで、マウンドへ行ったトレーナーの方が、すぐに意識などを確認。本人いわく「打球がチェンジアップみたいに来た」とか。強いスピンがかかっていたそうですね。でも問題はなく、イニング最後まで投げて交代後にアイシング。帰り際に会ったら、右あごに絆創膏が1枚貼ってあっただけでした。
久保投手コーチはこんなふうに話しています。「グラブには当たっていたみたいよ。気迫、気持ちだね。こんなところで折れてたまるか、絶対にマウンドを降りないという気持ち。なにくそ!と思って向かっていかないと。技術もそうだけど、彼のもうひとつの打開策は根性。生き残ろうと、何かを奪い取ろうとする必死さが伝わってきました」
また掛布監督は「台湾ウインターリーグの頃から2月のキャンプ、シーズンに入っても、守屋と同じように継続して自分のやることをやっている1人。100番台の背番号をつけながら、支配下の声がかかる内容を出している。我々も嬉しいよ。きょうも、ああいう中でイニングの最後まで投げきるのはね。気持ちが強くなって明るくなったように見えるよ。自分で結果を出して、日々いい準備をしている。楽しそうに投げてるよね」と変わらぬ評価です。
「変わったと思います」と田面
当の田面投手は「当たったところも頭じゃなくて、落ち着いて投げられたので。あれは、打球が打ったのとは違う感じで来て捕りづらかったけど、捕れたボールだったかもしれません。そのあとバント処理とゲッツーも取れて、ゼロで終われてよかった」と振り返りました。掛布監督も久保コーチも『根性を出した』と。「あそこで降りたらランナーを残してなので次のピッチャーにも申し訳ないし、投げきらないと、と思っていました。2本ヒットになったけど、しっかりゼロで抑えられてよかった」
台湾のウインターリーグ、そして安芸キャンプから公式戦と自信がついた?「その通りですね。投げていても、去年やおととしとは違う。打者にしっかり投げられる。変わったと思います。台湾の時から安芸キャンプ初戦で投げると言われていて、年が明けてもそこに合わせて来られたのもある。入りがよかったんだと思う」。今は先発の順番がなかなか回ってこず、中継ぎでの登板になっているものの「任せられたところで、しっかり気持ちを持ってやります!」と言い切る田面投手です。
最後にもう一度、あの“顔面捕球”の話になり「自分が一番ビックリしました。大丈夫ですよ」と笑っていました。ご安心ください。
左キラーぶりを発揮した山本
次は山本投手。1点勝ち越した直後の7回に登板しています。まず溝脇選手は見逃し、空振りで追い込み3球目で空振り三振。亀澤選手と渡辺選手はまったく同じで、見逃し2球のあとボール2球とファウル、カウント2-2の6球目で空振り三振でしたね。決め球は全部スライダーだったそうです。1番からズラリと並んだ左打者を3者連続三振!お見事。
「ケガで出遅れて、アピールしていかないといけない立場なので、きょうはよかったです。ここ4試合、左バッターに打たれていないので、そこがいいところですね」。これまで公式戦4試合と交流試合で投げていて、ヒットは3月17日の中日戦で三ツ俣選手に許した左前打と、4月3日の社会人・カナフレックス戦で藤井宏政選手に浴びた右中間二塁打の2本。その2試合は自分で内容に不満だったようですが、以降は手応えも口にしていました。
6日の広島戦(鳴尾浜)は野間選手、庄司選手、プライディ選手の左打者をすべて三振で片づけ、8日の中日戦(ナゴヤ)も野本選手、古本選手を打ち取って三者凡退。10日も先に書いた通り。それに3人とも2球で追い込んでいます。ストライク先行は「真っすぐ、スライダー、カーブ、すべての球種がコースにしっかり使えていました。そのへんも今のいいところです」とのこと。
久保コーチも「フォームが安定して、しっかり腕が振れ出した。コントロールがよくなってきています。ケガの功名とも言えるかな」と、ここからの山本投手に期待しています。
青柳を援護した原口、左から2本の板山
青柳投手は「ヒット2本で3点ですからね…。結局はフォアボールです」と、さすがに言葉少なくバスへ向かいました。3月8日の近畿大学戦以来、約1か月ぶりに青柳投手をリードした原口選手は「ランナーが出て、課題の牽制もあって。ランナーとバッターへの投げ分けが、気持ちの中でできなかったんだと思います。そっちに気を取られて…。でもボール自体は悪くないですよ。粘り強さもあるんだけど」と話しました。
ちなみに、2回は同点のタイムリー二塁打、7回も中前打を放ち二度とも一時は勝ち越しとなるホームを踏んだ自身のバッティングについては「2ストライクから内容よくヒットを打てたので、それがよかった。続けていきます!」と、それでもなお顔を引き締める原口選手です。
同じく2回に板山選手は勝ち越しの2点タイムリー二塁打、7回も勝ち越し点につながる左前打のマルチ。「二塁打はフォアボールのあとで、積極的にいきました。狙っていました。レフト前は追い込まれていたけど、スライダーを待ってた。とにかくチャンスだったので食らいついていこうと」。確かに、二塁打は前の森越選手が四球で出た直後の初球を打ったもの。左前打はストライク、ファウルのあとの3球目でした。
2回は小笠原投手、7回は代わったばかりの岡田投手と、左投手からの2本ですね。「左を打つことで、いいアピールになりました。バットだけじゃなく、守備でも徹底してやれています。カバーとか。そういうのが、ここ一番で出ると思うので継続します」。そして、2回の二塁打のあと三盗に失敗したことを聞かれ「あそこは100%でいかないとダメですね。中途半端でした」と反省の板山選手。たくさんのことを学び、吸収する日々が続きます。