新型コロナウイルスの感染拡大がアップルの業績に及ぼす影響
米調査会社のIDCによると、中国の今年1〜3月期のスマートフォンの出荷台数は、1年前に比べ30%以上減少する見通しだという。
予測不可能な「ブラックスワン現象」
新型コロナウイルスの感染拡大が1月下旬の春節(旧正月)のショッピングシーズンに影響を及ぼしたが、その影響は今も続いているようだ。
今年の上半期、世界最大のスマートフォン市場である中国は、極めてまれで予測不可能な「ブラックスワン現象」を経験する恐れがあるとIDCは指摘している。
また、シンガポールに本部を置く調査会社カナリスは、今年1〜3月期の中国におけるスマートフォン出荷台数は昨年10〜12月期に比べ40〜50%落ち込むとみている。
アップルが世界の直営店を一時閉鎖
中国では新型コロナウイルスの感染拡大への対応で、春節に合わせた連休が延長された。世界保健機関(WHO)は「国際的に懸念される公衆衛生の緊急事態」を宣言。これらを受け、米アップルは中国本土の全直営店(Apple Store)の一時閉鎖を決めた。
アップルは当初、2月10日の営業再開を予定していたものの、その後延長を決定。1カ月後の3月13日までに、中国本土に42ある直営店の営業を再開した。しかし、その多くは今も時間を短縮して営業している。
一方で、アップルは米国時間3月13日、中国本土、台湾、香港などの中華圏を除く、世界約460の直営店を同27日まで閉鎖すると明らかにした(発表資料)。スマートフォン「iPhone」をはじめとする同社製品の業績への影響は避けられない状況だ。
売上高予想未達の見通し
アップルは2月17日、先の決算発表で示していた2020年1〜3月期の売上高予想を達成できない見通しだと明らかにした。
その理由は2つあるという。
1つは、iPhoneの全世界向け供給が今後一時的に制限されるというもの。アップルによると、同社製品の中国工場は、最初に感染が広がった湖北省にはなく、すべての工場は操業を再開している。しかし生産能力の回復が当初の予想よりも遅い。これが売上高に一時的な影響を及ぼすという。
もう1つは、中国市場におけるアップル製品に対する需要の低下。前述したように、中国国内の店舗は一時閉鎖を余儀なくされた。これにより、来店客が著しく減少したという。
- 図1 アップルの中国事業売上高推移(インフォグラフィックス出典:ドイツ・スタティスタ)
中国工業情報省(工情省)傘下のシンクタンク、中国情報通信研究院(CAICT)の統計によると、今年1月の中国スマートフォン販売台数は、前年同月比36.5%減の2040万台と、大きく落ち込んだ。新型コロナウイルスの感染拡大で消費者需要が圧迫されたという。
CAICTは、2月の同国におけるiPhoneの出荷台数が前年同月比61%減の49万4000台にとどまったとも報告している。
- (このコラムは「JBpress」2020年2月13日号・26日号に掲載された記事をもとに、その後の最新情報を加えて再編集したものです)
- (参考・関連記事)「新型コロナウイルスの感染拡大が「iPhone」の生産体制に及ぼす影響 (小久保重信) -Yahoo!ニュース個人」