ミサイル空気吸入孔をエンジンごと投棄するコンセプト
スクラムジェット極超音速巡航ミサイル「ツィルコン(Циркон)」を開発したロシア企業NPOマシノストロエニアが2015年に提出した特許にこのようなものがありました。
特許のタイトルは「極超音速巡航ミサイルで水上および地上の目標を攻撃する方法およびそのための装置」です。最終突入段階で空気抵抗となる空気吸入孔をエンジン燃焼室ごと投棄し、空気抵抗で突入速度が減少するのをなるべく低減する構造です。最終突入段階は高高度から急降下するので、空気抵抗が少ない方が高い速度を維持できます。
- фиг. 1(図1)、巡航ミサイル全体図(ブースターは一部省略)
- фиг. 2(図2)、スクラムジェットエンジンの構造
- фиг. 3(図3)、スクラムジェットエンジン投棄後
- фиг. 4(図4)、本体とエンジンの接合部の説明図
ただしこの構造がツィルコンに実際に採用されているとは限りません。そのようなことは何も明言されていないので、将来の新しいスクラムジェット極超音速巡航ミサイルに採用するつもりの特許案なのかもしれません。
実はこのNPOマシノストロエニアの特許案と同じように空気吸入孔をエンジン燃焼室ごと投棄するコンセプトは定番の方法で、特許を探すと様々な種類のミサイルに採用する案が沢山の会社から提出されていることが分かります。例えば日本の三菱電機のダクテッドロケット式空対空ミサイル特許(公開番号 特開2000-097599号)の「誘導飛しょう体」が同じコンセプトです。
ただしこのミサイル空気吸入孔をエンジンごと投棄するコンセプトは、大勢が思い付いて特許が出願されている割には、実際の採用例がまだ見当たりません。
この特許案はツィルコンに実際に採用されているのでしょうか? 秘密の多い新型ミサイルはまだ謎のベールに包まれたままです。